学級経営・生徒指導

徹底した事実の確認を

生徒指導上の事案が起こる。

例えば、ある女子生徒Aが「BちゃんとCちゃんにいじめられている」などと訴えてきたような場合である。

もちろん教師はAに事情を聴く。なるほどAから話を聴いていると、B・Cのやり方には行き過ぎがみられるようだ。そこで教師は、B・Cを呼び出して指導する。Aが二人の言葉に傷ついていること、他人を傷つけるような言動はいけないということ、これからはそういう言動を慎まなければならないこと、こうした内容について指導する。B・CはAにだって責任があると訴えるが、教師は切り返す。「どういう理由があるにせよ、いじめはいけない。」と。「現に、Aは深く傷ついているのだ。」と。

結果、教師はB・Cの信頼を失う。いや、それだけではない。B・CはAに対する恨みをも抱く。そしてAもそれに気づく。「先生はやばい指導の仕方をしたな。」と。それが教師に対するAの信頼をも失わせる。Aは「先生を頼ると、状況が悪くなる。」ということを、経験を通じて学んだのである。それが、今後の生徒指導に大きな悪影響を与える。

教師だけがそのことに気づかない。中には、「うまく解決できたな。」などと、お気楽なことを考えている者さえいる。その裏には、「悪いことは悪いとしっかりと指導しなければならない。それが規範意識を育てるということだ。」という、短絡的な思想がある。いや、〈思想もどき〉というべきか。

多くの生徒指導がこのようになってしまうのには、実は理由がある。それも単純な理由だ。それは教師が指導にあたって、〈起こった事実〉を確認しないからである。

生徒指導上の事案には、必ず〈起こった事実〉がある。B・CがAを攻撃し始めたのはいつからか。どんな言葉をAに浴びせたのか。いつ、どこで、どんな状況で、何回程度浴びせたのか。それを見ていた第三者はいるのか。B・Cがそのような態度に出るようになったきっかけは何なのか。それ以前のA・B・Cの関係はどうだったのか。AとB・Cの関係がこじれる至る過程において、AはB・Cにどのような態度をとったのか。このようなことを確認しなくてはならない。

どんなに面倒でも、教師はこれらの経緯を逐一確認しなければならない。これを怠ると、教師は生徒達の信頼を失ってしまう。教師がうまく対応できなかったという噂が学級中、学年中にあっという間に広がっていく。教師と生徒との関係が少しずつ少しずつ、しかしそれ以上ない確かさをもってくずれていく。そういう学級・学年のなんと多いことか。

では、どのように〈起こった事実〉を確認するのか。

1まず【図1】をご覧いただきたい。生徒Aと生徒Bがトラブルを起こしたとする。それを訴えてきたのが生徒Aである場合、教師は無意識のうちに生徒Aの側に立ちがちである。〈起こった事実〉をAの立場からのみ聴いて、それを前提に生徒指導をしがちである。つまり、無意識のうちにAの味方をしながら、生徒指導にあたりがちなのである。まずはこれを避けねばならない。

これを避ける方法は簡単である。生徒Bからも同じように〈起こった事実〉を確認すれば良いのだ。すると、Aとはまったく正反対の〈起こった事実〉が出てくる。ここで、教師はAの言い分とBの言い分とをフィフティ・フィフティの信用度と捉えなければならない。

すると、この事情を知る者、つまり、A・Bのトラブルに直接的・間接的にかかわよったすべての人間に事情聴取しなくてはならなくになる。

2CやDはA・Bとはまた違った角度で〈起こった事実〉を認識しているかもしれない。中には、終始ひねくれた目で見る者(E)、最初は何が起こったのかを理解していなかったのに事情聴取の中で理解してくる者(F)、A・Bどちらにも気を遣う日和見的態度の者(G)、最初から最後まで事を理解できておらず話のコロコロ変わる者(H)など、様々な角度の事情が明らかになる。

しかし、このくらいの人数に対して事情聴取を重ねれば、教師の側にもおぼろげながら〈起こった事実〉の全貌が見えてくる。これをそれぞれの生徒に突きつけていく。生徒も忘れていた細かな事実を思い出す。

様々な人間が様々に「事実」を解釈していることを知った生徒達は、自らのものの見方を「メタ認知」せざるを得なくなる。つまり、こんな単純なトラブル(=起こった事実)でさえ、自分の見方は絶対ではないのだということを、同級生・仲間内の証言から実感していくことになる。教師から教えられるのではなく、自ら発見するようになる。規範意識は、こうした営みの繰り返しの中で身についていくのである。

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全体指導の原理

「生徒指導」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。生徒たちの服装・頭髪の乱れを注意することでしょうか。それとも、万引きや喫煙、飲酒などの指導でしょうか。いじめや喧嘩の指導を思い浮かべる方も多いでしょう。落書きや器物破損といった公共物の扱いに対する指導も必要です。また、最近は携帯電話をはじめとする、パーソナル・メディアが引き起こす複雑な事件・事故を思い浮かべる方もいるかもしれません。

実はこれらは、どれも突出した生徒個人に対応するタイプの生徒指導なのです。もちろん、事件・事故によっては集団化している場合も多々ありますが、いずれにせよ、これらの生徒指導は当該生徒・関係生徒を別室に呼び、教師が事情を確認したり説諭したり、場合によっては保護者と連絡を取り合いながら個別に指導する、そうしたタイプの生徒指導です。

しかし、生徒指導の基本、基本というより根本は、何といってもこうした個別の生徒指導をしなくても良いような学級集団、学年集団をつくることなのではないでしょうか。つまり、生徒指導の根幹は〈予防〉なのです。

もちろん、一年もの長い間、学級や学年に個別指導事案が一つも起こらないなどということは考えにくいことです。しかし、そうした事案が起こるにしても、教師が日常的に服装・頭髪・いじめ・触法行為等に関して訴えかけている場合とそうでない場合とでは、個別指導事案の頻度が変わってくることはもちろん、仮にそれが起こった場合でも解決への道筋がよりスムーズになるものです。その意味で、教師は事が起こったときは当然ですが、何事も起こらない平時においても、機会を見つけて学級・学年全体に対して「落ち着いた生活」「けじめのある生活」の必要性を語って聞かせなければなりません。私はこれを「全体指導の原理」と呼んでいます。

かつて私はこんな経験をしたことがあります。学年で集団万引きが発覚したのです。事情聴取を進めてみると、各学級に五~八人程度の万引き実行生徒がいることがわかりました。学年の先生方は大慌てです。しかしこのとき、私の学級には対象生徒が一人もいませんでした。その年、私は毎日の帰りの学活で、「それじゃあ今日も、万引き、喫煙、飲酒、援助交際はせずに清く正しく帰宅しましょう」と冗談めかして言っていたのです。おそらく私の学級に万引き実行犯が出なかったのはこのせいだと思われます。全体指導による〈予防〉に力があるという証拠です。

※久保田早紀の「夜の底は柔らかな幻」を聴きながら……。

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久保田早紀/1984

久保田早紀名義のアルバムとしては最高傑作だと思う。 ファーストの「夢がたり」の印象が強く過ぎて、幻想的でエスニックなイメージばかりが先行する感のある久保田早紀だが、アイドルホップ路線が鳴かず飛ばず、ファドを前面に出したアルバム構成が失敗、本人が自信を喪失し自己を失った末にカトリックと出逢い、このアルバムあたりからは宗教色が垣間見える。しかし、そうした宗教的な思いと、デビュー当時のエスニックイメージと、更にはその後伴侶となる久米大作のアレンジとが見事にハーモニーを奏でる、完成度の高いアルバムに仕上がっている。もう30年近く聴き続けているというのに、まったく飽きが来ない。いま聴いても、決して古くない。

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研究と実践とを融合する

名人教師と評される教師、何冊も本を書いている教師、研究授業が参観者であふれかえる教師、そしてあなたの周りにいる尊敬すべき先輩教師。みんな若いときから努力を続けてきたのです。子どもたちの成長を願う教師ならば、自らが成長し続けることを怠ってはなりません。

第1条 自らを発信の場に置く

学級通信・研修通信・校内研究集録・地元研究会の研究集録……教師には発信の場がたくさんある。発信しようとする教師は情報を集める。勘違いされがちだが、決して情報を持っているから発信できるのではないのだ。まずは自らを発信の場に置くこと。これこそが成長する教師の絶対条件である。

第2条 校内研究に積極的に取り組む

どんなに面倒だと思っても、どんなに自分の興味とかけ離れていても、自分の実践の場に最も近い実践研究の場は校内研究である。これを怠ってはならない。その時々に懸命に実践したことが、将来、必ず花開く。

第3条 地元の研究会に積極的に取り組む

同じ論理で地元の研究会(市教研など)も大切にしたほうがいい。地元の先達と知り合うことのできる場である。

第4条 民間の教育研究会に顔を出す

時間とお金に余裕があれば、テーマに興味を惹かれた民間の教育研究会に参加することをお勧めする。玉石混淆ではあるが、全国的な「超一流」に出逢える場は民間研究会を措いて他にはない。

第5条 学習指導要領は暗記するくらい読む

私たちの教育活動は教育基本法や学校教育法によって規定され、生徒に伝えるべき指導事項は学習指導要領によって規定されている。私たちはこれを深く理解したうえで日常実践に取り組まねばならない。

第6条 大学研究者の研究にも目を通す

私たちはついつい日常実践に埋没してしまい、今日の授業、明日の行事のことばかり考えて過ごしてしまう。自分でも気づかぬうちに視野が狭くなってしまうのだ。研究者の研究に目を通すことは、この実践埋没を避けられるという効果がある。たまには「これからの教育」について、「壮大な未来像」について思いを馳せることも必要である。

第7条 研究・実践の目的をぶれさせない

研究にしても実践にしても、それが生徒たちのためになっているかという視点で常に見つめ続けることが必要である。目的はあくまで生徒たちに力をつけることであり、生徒たちの人格陶冶に寄与することなのである。これを見失ってはいけない。

第8条  自分の実践を整理する

定期的に自分の実践を整理することを怠ってはならない。実践はやりっ放し、垂れ流しでは身につかない。成果と課題とを自分の頭で整理して次へとつなげていく、その繰り返しが教師に成長を促すのである。

第9条 若いうちは金を惜しまない

若いうちは金を惜しんではならない。どうせ結婚して子どもができれば、自由に使える金などほとんどなくなってしまうのである。若いうちにどれだけ学ぶ機会をもったか、そしてそれを蓄積したか、それが教師人生を決める。そして学びには金がかかるのである。

第10条  ライフワークとなる趣味をもつ

仕事一辺倒の人間になってはならない。「自分の趣味は○○です」とはっきりいえるくらいの趣味をもつことが大切である。次第にその趣味が仕事にも役立つようになっていく。サッカーのフォーメーションから学級組織の構造を考えたり、ジャズのアドリブ論から学級経営のゆとり理論ができたりということが世の中には少なくない。

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隙間時間を利用する

皆さんは空き時間や放課後をどのように過ごしているでしょうか。空き時間が足りない、放課後は会議ばかり……そう嘆いていませんか。それが多忙観を生み、精神的な余裕を奪っていきます。隙間時間を活用すれば、仕事が効率的になるばかりでなく、心の余裕も生まれます。

第1条 隙間時間を把握する

皆さんは一日にどれだけの隙間時間があるかを意識したことがあるでしょうか。出勤直後、朝学活後、10分休み、会議が始まるまで待ち時間などなど、一日うちに隙間時間はかなり多くあります。まずはこれを一覧表にして把握してみましょう。一日2時間近く生まれるはずです。隙間時間の利用とは、こうした時間を活用することです。

第2条 出勤後の動きを固定する

出勤簿の押し忘れや出席簿の未記入といつたことをしていませんか? 効率的な仕事をするベテランの先生はみな、出勤後は「出勤簿を押し、珈琲を入れ、それを飲みながら一日の動きを月行事予定で確認、更に出席簿に欠席・遅刻連絡のあったものを記入する」という一連の動きを習慣化しているのです。

第3条 To-Doリストをつくる

「To-Doリスト」をつくっていますか? 人間はコンピュータではありませんから、仕事はしっかりとメモをとっておかなくてはなりません。逆にメモをとれば、忘れても確認すればいい、という安心感につながります。

第4条 To-Doリストは常時携帯する

「To-Doリスト」を付箋に書いてPCに貼るという先生を多く見ますが、この方法は感心しません。これでは職員室でしか仕事ができなくなってしまいます。「To-Doリスト」は手帳がにして、常時携帯でき、どこにでも持ち運べる状態にしておくのがコツです。

第5条 会議でTo-Doリストに記入する

学年会・校務部会・職員会議では、担任がしなければならないことがたくさん提案されています。その会議中に、「○月○日には○○をしなければならない」というメモを、手帳のその日のところに書いてしまうのが良いでしょう。会議は効率的な仕事をするための情報の宝庫なのです。

第6条 生徒・保護者との約束事はその場で記入する

「To-Doリスト」常時携帯していれば、生徒・保護者に頼まれたことをその場でメモすることができます。約束を守るためにはこれが姿勢が大切です。

第7条 小さな仕事は10分休みにする

10分休みは廊下を巡視していたり、次の授業教室に入っていたりというのが一般的ですね。この時間、支出伺簿の記入とか作成したプリントの校正くらいなら難なく終わらせることができます。

第8条 電話は10分休みにする

保護者への電話はダメですが、業者への発注、職場体験の事業所への連絡といった電話なら簡単にすませることができます。私はこの手の電話は、生徒からちょっと隠れて、自分の携帯電話で連絡するようにしています。

第9条 生徒の提出物はその場で処理する

朝学活の生徒の提出物の確認を空き時間の仕事にしていませんか。名箋を教室に持って行って、受け取ったらその場で○印をつければ、この手の仕事が空き時間を浸食することはなくなります。休み時間に提出遅れの生徒が持ってきた場合も同様です。

第10条  ルーティン・ワークにはよけいなこだわりを捨てる

とにかくルーティン・ワークにはよけいなこだわりは捨て、拙速を旨とすることが大切なのです。

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職員室の人間関係10箇条

2学期も終わりに近づきました。大きな行事も終わり、あと残り3ヶ月。と同時に、生徒指導上の問題傾向をもつ生徒たちに手を焼くのもこの時期。そんな中、1学期にはなかった同僚への不信感も芽生えてきます。でも、もう一度、踏みとどまって考えてみませんか。

第1条 チームで組織的な動きをしよう

職員室は組織です。学年団も組織です。問題のある生徒がいるのも担任だけの責任ではありません。うまくいっていない仕事があるのも、担当者だけの責任ではありません。その組織にチーム力が欠けているのです。

第2条 仲よくなることよりも共に成果をあげることを考えよう

職員室や学年団は、仲がいいから良い仕事ができるのではありません。良い仕事をし、成果があがっていて、その成果をあげている組織に自分も貢献しているのだという思いが、組織を仲良くさせるのです。この考え方の順番を間違ってはいけません。「うちの学年は仲が悪いからね」というのは禁句です。仕事が充実していないから、今ひとつ一体感がないのです。この構造は学級と同じです。

第3条 すべての教師にその教師なりのキャラクターがあることを意識しよう

教師のキャラクターは概ね三つに分けて考えるとわかりやすいでしょう。即ち「父性型」「母性型」「友人型」です。いろんなキャラクターの教師が生徒たちに複雑に影響を与え合って、学年運営・学校運営は成り立っているのです。

第4条 すべての教師に得手不得手があることを意識しよう

生徒指導が得意な教師もいれば、事務仕事が得意な教師もいます。部活が好きな教師もいれば授業研究が好きな教師もいます。学校にはそのどれもが必要なのです。

第5条 すべての教師にその教師なりの教育観があることを意識しよう

教師も人間ですから、どうしても自分の好きなこと、得意なことを中心に教育観を抱きます。それを調整しながらチームで動く。これが理想の職員室・学年団なのです。

第6条 すべての教師にその教師なりの事情があることを意識しよう

家族に持病をもつ人がいる、介護を要する家族がいる、そんな同僚が必ずいます。若いうちはそういうことの大変さがわからないものです。これは教師としてではなく、人間として理解できるようになりましょう。

第7条 自己をメタ認知する努力をしよう

以上のような観点で考えたとき、自分は偉そうなことを言える教師なのか、と顧みてみましょう。きっと何かが見えてきます。

第8条 自分自身がアレルゲンになっていないかと考えよう

自分のネガティヴな発言が、職員室や学年団にマイナスになっていないか、冷静に考えてみることも必要です。

第9条 嫌いな人・苦手な人といっしょに小さな成果をあげてみよう

道徳の指導案を1枚、いっしょに作ってみる、学年行事の担当をいっしょにやってみる、そんな小さなことで構いません。ただ大切な子ことは、成果をあげようと頑張ってみることです。きっとその同僚の意外な良い面が見えてくるはずです。

第10条  職員室で馬鹿話をしていっしょに笑ってみよう

人はいっしょに笑った時間が長ければ長くなるほど、楽しい時間を共有すれば共有するほど、心が通じ合い、仲良くなれるものです。みなさんも学生時代の友人との関係を考えればわかるのではないでしょうか。

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自己アピール文/推薦書/個人調査書

進路指導において負担になるのが進路事務です。それも師走の忙しい時期に一気に押し寄せてくるわけですから、少々やっつけ仕事に陥ってしまうことも……。しかし、生徒たちのことを考えればできるだけ丁寧に緻密に行うことが必要です。今回はそのための観点です。

進路事務として学級担任が取り組まなければならないこととして、個人調査書・推薦書・欠席事由書等があります。また、具体的な入試に伴う指導事項として、推薦依頼書・自己アピール文・小論文・面接等が挙げられるでしょう。ここでは便宜的に、前者を「進路事務」、後者を「進路指導」と呼ぶことにしましょう。

一般に、学級担任は進路事務は進路事務として、進路指導は進路指導として、ともに独立した、一般的な取り組み方をしがちです。しかし、受験者を選抜する高校側からみれば、「進路事務」と「進路指導」とは一人の生徒の特徴を知るための資料として連動しているはずです。進路に伴う事務や指導においてまず大切なのは、この観点です。

例えば、ある生徒の推薦書に次のように書いたとしましょう。

「中学校3年間の学校生活では貴校に進学するために様々な分野のことに挑戦してきました。」

この言葉は確かに褒め言葉です。担任として推薦に値する生徒であるというアピールでもあります。しかし、これを高校の先生が見たらどう思うでしょうか。「様々な分野って何だろうか」と思うのではないでしょうか。そして生徒は、面接で「どんなことに挑戦したの?」と問われてしまうのです。

生徒は「○○に取り組んできました」と、一つか二つ、その例を答えます。しかし、「様様な分野」というわけですから、それは一つや二つではないはずです。少なくとも面接官はそう感じます。推薦書におけるこうした抽象的な書き方は、面接において面接官にマイナスイメージを抱かれやすい記述なのです。

推薦書や個人調査書の所見といったものは、できるだけ細かな項目を数多く挙げて、更にその具体的な意見・事例・エピソードなどを面接用に用意させておく、といった面接と連動させた考え方が必要なのです。

第1条 所見スペースは適度な字の大きさですべて埋める。

教務部として推薦書や調査書を点検していると、よくスカスカの所見を見ることがあります。スペースを埋めることは、社会人としてのマナーです。

第2条 一文一義を基本とし、重文や複文はできるだけ避ける。

一つの文は一つの意味で構成する。複雑な構成の文は二分に分ける。この二つを実行するだけで文章はずいぶんと読みやすく、わかりやすくなるものです。

第3条 志望の動機は、職業科の場合には将来の希望職業と、普通科の場合には高校の特色と関連させて書く。

最も大切なのは志望動機です。職業科にしても普通科にしても、なぜその高校なのかという意思表示をできるだけ具体的にすることが大切です。

第4条 可能な限り、数多くの項目について取り上げる。

第5条 所見に書いた内容はすべて面接で訊かれることを想定し、生徒と事前打ち合わせをして意見・事例・エピソード等を用意させる。

第4・5条については本文に書いたので詳述しないが、この二点こそが進路書類の所見を書く現実的な目的なのだと肝に銘じたい。

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学力向上の10箇条

うちの学級の生徒は勉強しない……そんなふうに嘆いていませんか。勉強しない傾向があったとしても、それを嘆いているだけでは何も進みません。学級担任として、まずはできるだけのことをやってみましょう。いろいろなことが見えてくるものです。

第1条 4月段階でレディネスをとる

まず何よりも大切なのは学級開きから数字の段階でレディネスを把握することである。小学校の漢字、九九、通分など、基礎的なことが身についていないために学力がつかないという生徒たちが一定程度いるのが最近の学校である。このレディネス把握を怠ると、その後の指導が教師にも生徒にもきつくなる。特に「特別な支援を要する生徒」については早めに把握しなければならない。

第2条 家庭学習帳を担任がチェックする

多くの生徒は自分なりのやり方で「勉強したつもり」になっている。家庭学習帳の提出を課し、どんなふうに家庭学習をおこなつているのかを担任として把握したい。

第3条 家庭での時間の使い方を意識させる

テレビやゲームに費やす時間はどのくらいか、睡眠時間はどのくらいか、こうしたことを把握したい。本誌本年6月号参照。

第4条 テスト計画表づくりのモデルを示す

テスト計画表は基本的には自分なりに工夫して作るのがよい。しかし、作り方がわからないという生徒も多い。具体的に記述している生徒のものをよい見本として配付し、書き方・作り方のモデルとするのがよい。

第5条 テストで成績が下がった生徒とは個人面談を行い、具体的な反省を促す

定期テストの結果が出たら、成績の下がった者とはなんとか時間をつくって二者面談をしたい。その際、どのくらい学習したか、どんな学習をしたか、定着の手立て(繰り返し)をとったかなど、できるだけ具体的に分析し反省させたい。

第6条 前回のテストで成績が上がった生徒には必ず戒めの言葉をかける

前回のテストで成績の挙がった生徒はどこか安心している傾向がある。それを戒めるために、テスト3週間前を目処に戒めの言葉をかけるとよい。

第7条 朝自習・帰りの5分間プリントなど独自に取り組む

学級全体に基礎学力不足が見られる場合には、朝自習や帰り学活内の5分を使ってのプリント学習など、独自の取り組みをしたい。学年全体で取り組めればなおよい。

第8条 放課後の補習を行う

学力不足の生徒たちを集めて、専門教科でない教科について補修を行うとよい。学校の副教材をコピーして、何度も何度も取り組ませる。繰り返し取り組めば成果が上がることを体得させることが目的である。

第9条 勉強を教えるのではなく、勉強の仕方を教える

多くの生徒は定期テストに向けて、教科書を読む、ノートを見直すという勉強の仕方をしている。しかし、多くの場合、効果の上がる勉強法は問題に取り組むことである。ワークや問題集に繰り返し取り組むよう助言し続けるとよい。家庭学習習慣の身についていない生徒には、問題集をコピーして渡し、それを家庭学習帳にやらせて、毎日提出させるとよい。3ヶ月程度で効果が出てくる。

第10条  保護者との情報交換を密にする

基礎学力不足の生徒については、家庭での時間の使い方、勉強の仕方について、保護者との情報交換を密にすることが必要である。家庭生活を少しでも改善していけるよう、保護者にも意識してもらうことが必要である。

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合唱コンクール指導の10箇条

合唱コンクールの指導に苦手意識をもち、合唱コンクールの時期になると憂鬱になる……そんな教師は意外と多いものです。いろいろ工夫をしながら、1年1年経験を重ね、練習のバリエーションを増やしていく。若いうちから意識しておくべき、学級担任の視点です。

第1条 練習の仕方を考えて選曲する

合唱コンクールの勝負は、実は選曲によって大きく左右される。練習しやすい曲と練習しにくい曲があるのだ。私の場合、①ユニゾンから入る、②発声練習ができる山場を含む、③強弱がはっきりしている、④発達段階に応じた歌詞をもつ、⑤学級の実態に応じた難易度である、という5つの観点で選んでいる。

第2条 パートの音取りを徹底する

多くの教師が音取りが不完全なままにパート合わせをしている。音楽の不得意な生徒にとっては、この練習はほとんど機能していない。パーと練習には「やりすぎ」ということはない。それほど大切である。

第3条 2パート練習を徹底する

ある程度音が取れたら、2パートの合同練習を取り入れると良い。他のパートとハモるということを体感させることができる。いきなり全体練習をするよりも、この方法が最も効果的である。

第4条 個人ハーモニーを体験させる

音が取れたら、各パートから一人ずつ出て4人で合わせてみるという練習が効果的である。他のパートとどんなハーモニーをつくるのかということを体感することができる。

第5条 他パートを意識させる

全体であわせる場合にも、自分勝手に自分のパートを歌うのではなく、或いは自分のパートを合わせることに集中するのではなく、あくまでも他パートとハーモニーをつくるのだという意識をもたせたい。そのために、他パートに耳を傾けての練習を意識させる。

第6条 最強・再弱の練習を繰り返す

曲想をつける段階では、自分たちの学級の最大の声と最小の声で4小節程度ごとに歌わせ、どの弱さからどの強さまでが自分たちの歌える範囲なのかを意識させるとよい。これを繰り返しているうちに、更に声量が大きくなり、ピアノでは歌詞をはっきり語ることができるようになっていく。

第7条 入りの歌詞をはっきり発音させる

曲の最初の歌詞はもちろん、各フレーズの最初の歌詞がはっきり聞こえない合唱は聴き手に歌詞を聴くことを放棄させてしまう。これは合唱の価値の半分を捨てることを意味する。歌詞をはっきりと、特に「入りの歌詞」をはっきりとという指導は、何度でも繰り返す必要がある。

第8条 全体練習のバリエーションを増やす

いつも同じ歌い方をしていたのでは生徒たちも飽きてしまう。各パートが向かい合ったり、輪を作って歌ったり、テンポを合わせて歩きながら歌ったり、寝転がりながら歌ったりといったバリエーションを多くもちたい。

第9条 楽しい雰囲気をつくることがリーダーの使命であると意識させる

合唱練習では、音楽を得意とするリーダーたちが音楽を不得意とする生徒たちを責めるという練習形態になりがちである。この雰囲気に陥ると、合唱練習は絶対にうまくいかない。合唱部の練習ではないのである。ほとんどは素人なのである。楽しい雰囲気さえつくれれば、リーダーは成功……くらいの心持ちをリーダー生徒にもたせたい。

第10条  歌詞を深く解釈させる

毎年、歌詞の意味もわからずに歌う合唱をよく聴く。それは歌というものの根幹をはずしている。

※BILLY JOELの「THE STRANGER」を聴きながら……。

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BILLY JOEL/1977

ぼくが初めて買った洋楽アルバム。「THE STRANGER」とか「JUST THE WAY YOU ARE」あたりを聴くと涙があふれそうになる。結局、ぼくにとってビリー・ジョエルは英語圏で15番手くらいのアーティストになってしまっているけれど、ぼくらの世代にとってのスーパースターを一人だけ挙げろと言われれば、きっとだれもがビリー・ジョエルと答えるだろうと思う。。「THE STRANGER」のピアノと口笛。あれを初めて聴いたときの衝撃はきっと一生忘れられないのだろうと思う。こんな格好いい音楽がこの世にあるんだ……と感じた。

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ステージ発表づくりの10箇条

学校祭において教師にもっとも嫌われるのがステージ発表です。「めんどうだ」「どうつくっていいのかわからない」 若手・ベテランを問わず、毎年こういう声が聞こえてきます。今号では、ステージ発表をつくるうえでの留意点です。

第1条 ステージ発表を目立たない生徒・問題傾向生徒の活躍の場として捉える

よくありがちなのが主役級にリーダー生徒をあてるキャスティングである。教師はいいつもりでも、生徒から見ると「できる子によるできる子のためのステージ」と見られる。

第2条 生徒のやりたいことはできるだけ取り上げて実現する

最初にアンケートをとり、「ダンス」「マジック」「アクロバット」など、生徒がやりたがったものはすべてステージ発表に盛り込むという心積もりを教師がもつとよい。

第3条 生徒一人一人の特意技を最大限に利用する

ピアノやダンスといった生徒が校外で習っているもの、物まねやバック転といった生徒の特技などは、〈使えるネタ〉として考えるべきである。

第4条 音響・照明のチーフにこそリーダー生徒を据え、その他の生徒は全員キャ   ストとして出演させる

照れがあるのか、キャストよりもスタッフを希望する生徒が多くなることがよくある。音響・照明はかなり高度な要求をすることを伝えて、スタッフにこそリーダー生徒をあてて、その他は全員キャストとしてステージに立たせると宣言する。全員が登壇ということになれば、意外と生徒たちは納得するものである。

第5条 企画プロジェクトのブレイン・ストーミングにこそ時間をかける

どんな企画にするか、6~8名の企画係と教師で1週間程度、ブレイン・ストーミングを行う。その際、「あの子は○○ができる」という得意技の裏情報をたくさん集める。

第6条 企画会議の内容を意図的にリークして一般生徒のアイディアも取り入れる

企画会議の内容は毎日リークする。そうすれば一般生徒もその話を聞きつけて、「じゃあこうすれば?」と日常会話の中で企画を進言してくるものである。

第7条 個人発表の印象を与えかねない内容はコラボレイトさせる

個人発表は避けるというない気のある学校も多い。そこで個人の特技をコラボレイトする企画を立てるとよい。例えば、私の場合、バレエと新体操と日本舞踊を習っている生徒3人をコラボさせて、雅楽で踊らせるという演出をしたことがある。

第8条 音響・照明・幕を効果的に使って一切の「無駄な間」をつくらない

舞台ソデで演技をしている間や割幕を閉めている間に場面転換をすることで、極力暗転をなくすことを心がけたい。無駄な間は聴衆を飽きさせたるませると心得たい。

第9条 早い段階で全体像を共有化し、少しずつ細部を詰めていく練習日程を組む

最初に全員で全体像を確認しながら練習を進め、細部を詰めていくという練習方法を採りたい。そうしないと、最初ばかりが念入りに練習された「時間切れステージ」になりがちである。

第10条  全体リハーサルは3回以上行う

通しリハを3回はやらなければ、当日うまくいかないと心得るべし。特に場面転換や音響・照明のタイミングの練習を念入りにする必要がある。こうした「できて当然のこと」は実は演技以上に失敗が目立つものである。

※DAN FOGELBERGの「MOUNTAIN PASS」を聴きながら……。

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DAN FOGELBERG/1985

冬になると聴きたくなるアルバム。たぶん1985年以降、このアルバムを聴かなかった冬はない。それどころか10回以下しか聴かなかった冬もないと思う。今年もそろそろ冬が終わろうとしている。今日は冷える一日だった。車の中だけでなく、部屋でもこのアルバムが聴きたくなった。この冬、最後かもしれない。もう何度も紹介しているけれど、このアルバムはほんとうにお勧めです。

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学級担任の研修10箇条

研修にあなたはどんな印象を抱いていますか。自分を高めるのになくてはならないもの?必要なのはわかるけど面倒なもの?研修する教師としない教師との間には、10年後、埋めることのできない差が生まれます。この夏休みを機に、研修を充実させてみませんか?

第1条 発信の場をつくる
人は〈発信の場〉に立たされたとき、必ず情報を受信しようとするものです。研究授業があたれば、どんな人も本を読み研究会に参加するようになります。研修を充実させるのにまず必要なのは研究授業や研究発表といった〈発信の場〉をつくることです。年に一度、そういう機会があれば、研修は自分にとって日常的なものとなっていきます。

第2条 校内研修会に積極的に取り組む
校内研修会は自分がいまかかわっている生徒たちが素材として扱われています。まずはこの「地に足の着いた研修」に積極的に取り組んでみることです。

第3条 地元の研究会に積極的に取り組む
校内研修だけではどうしても視野が狭くなりがちです。地元の研修会に積極的に参加し、様々な先輩教師の様々な考え方を学ぶ機会を積極的につくりましょう。

第4条 民間研究を差別しない
特に授業研究に多く見られる傾向ですが、公的な研究団体の研究だけが研究だと思っている人が多いようです。民間研究に入れ込む必要はありませんが、どんな研究団体からも貪欲に学ぼうとする態度が必要です。

第5条 研究者に研究にも目を通す
教師の研修では、現場教師の実践研究だけで視野の狭い研究が行われている場合が多く見られます。もっといえば、同業者の実践からしか学ばないという悪弊に陥っている傾向があります。研究者の学術的な研究にも目を通し、視野を広げることをお勧めします。

第6条 学習指導要領は暗記するくらい読む
私たちの仕事はあくまでも学習指導要領に基づいて営まれています。何を措いても、これを読み込むことが必要です。先輩教師の中には学習指導要領に批判的な方もいるかもしれません。そういう方は学習指導要領を熟読されていない場合が多々見られます。肯定するにせよ批判するにせよ、まずは学習指導要領が何を求めているのか、それをしっかりと捉えることが必要です。

第7条 研修の目的を自覚する
何のために研修に取り組むのでしょうか。自分の力量を高めることはもちろんですが、それを自己目的化するとあまり良いことがありません。まずは目の前の生徒たちに力をつける、これを目的として取り組むことです。そうした取り組みが結果として自らの力利用を高めるのです。

第8条 定期的に自分の実践を整理する
年に一度、3月に自分の実践を整理することをお勧めします。実践埋没型教師にならないためにも、自分にとって何が成果であり何が課題なのか、そうしたことを自己分析するためにも、研修はやりっ放しではいけません。

第9条 若いうちは金を惜しまない
ちょっとでも興味をもった研究会には、旅費等で多少お金がかかっても参加すべきです。ちょっとでも興味をもった本は、多少高くても思い切って買うべきです。若いうちしか実は研修にお金をかけることなどできないのです。人や本との出会いのチャンスをつぶさないように心がけましょう。

第10条  ライフワークとなる趣味をもつ
実践に自分の趣味を活かす。この発想が教師としての個性をつくります。趣味と仕事の相関を発見したとき、仕事が更に充実します。

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