映画・テレビ

なぜ人を殺してはいけないのか/鮎川教授最後の授業

なぜ人を殺してはいけないのか…。2回連続の「相棒」のテーマだった。輿水泰弘の脚本である。1回目は斬新なアイディアで設定もおもしろく、緊迫感があってとても良かった。だから2回目も期待して観た。でも、まったくダメだった。解決が強引すぎるのだ。納得できないのだ。だから入り込めないのだ。このことは正月特番にも感じた。

1時間の単発ならば一つのアイディアでおもしろくつくれる。でも、2時間になると魅せ続けるにはもうひと段階が必要なのだろう。そんなことを感じた。
2時間ものを最後まで魅せるものにする古沢良太とか太田愛とかといった脚本家は脚本を後ろからつくり、2時間を成立させられない脚本家は脚本を前からつくっているのではないか。そんなことをふと感じた。前者は解決のアイディアからつくり、後者は設定のアイディアからつくっているのではないか、と言い換えるとわかりやすいかもしれない。

今回の「なぜ人を殺して…」だって正月特番だって、設定は斬新だった。でも、それを展開していくだけの説得力がないのだ。さまざまな布石を打ち、小さなどんでん返しをたくさん配してはいるが、物語を展開させる軸に視聴者を惹き付けるだけの説得力がない。そんなことを感じた。

僕は古沢良太の脚本が好きだ。正月特番の「バベルの塔」(2007年)も「聖戦」(2011年)も素晴らしかった。最後まで目を離せない物語の展開力があった。大塚寧々と南果歩の演技力も素晴らしかったが、やはり脚本が良いのだ。「相棒」はどの作品もカメラワークは常に素晴らしい。ゲスト俳優によって今回はダメだと思うこともほとんどない。水谷豊の演技は安定し、杉下右京のキャラクターも安定し過ぎている。だから脚本の善し悪しがものすごく観る者の印象に影響を与えてしまうのだろうと思う。

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外事警察

新潟のホテルで「外事警察」全6話を見た。数年前の公安を題材としたドラマである。公安がこんな活動をしているとは思わないが、ドラマとしてはよくできたドラマだった。渡部篤郎・石田ゆり子・余貴美子・遠藤憲一・片岡礼子と名優の揃った良いドラマだった。特に渡部篤郎と石田ゆり子は素晴しかった。

渡部篤郎の妻役に奥貫薫。出番は少ない役柄だったが、ものすごい存在感。ドラマを引き締める良い役柄。準主役の尾野真千子。若くて美しい女優だが、役作りに迷っている心象が映像にも出てしまっている感じがして見ていて苦しかった。全体的に旅先で夢中になるほどの完成度に思えた。良い時間だった。

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BiOHAZARD Ⅳ

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ポール・アンダーソン監督/ミラ・ジョヴォヴィッチ主演

くだらない映画だと見る前からわかっているのに、新作がTSUTAYAに並ぶとどうしても手が伸びてしまう。昨日もそうだった。ポール・アンダーソンのつくる原色を活かした映像の美しさはたいしたものだなと思う。彼はどうしてストーリーをつくることにこんなにもこだわりがないだろう(笑)。まあ、娯楽映画なのだから、それはそれでいいのだけれど。ミラ・ジョヴォヴィッチはいつものように魅力的な表情ではなかった。

※八神純子の「Be My Best Friend」を聴きながら……。

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八神純子/1980

このアルバムはリアルタイムで聴いている。アナログ盤でもっていた。中学2年のときだと思う。映画「戦国自衛隊」を見た帰りに玉光堂で買った記憶がある。最近、中古で出ているのを見つけて800円で買った。八神純子の初のベスト盤。ベスト盤といっても、当時は新曲が4曲収録されていて、しかもその4曲がなかなかよくて、お得感のあるアルバムだった。ぼくの青春期は、一方に岩崎宏美と太田裕美がいて、もう一方に八神純子と渡辺真知子がいる。たぶん死ぬまで聴き続けるシンガーである。

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「告白」

期末テスト1日目。採点業務もそこそこに、午後から年休をとって話題の映画「告白」をみてきました。メンズデーとやらで1000円でみられました。

「告白」

噂に違わぬいい映画でした。なにせ構成が見事。映像美もすばらしい。さすが中島哲也。時代の才能です。

キャスティングも見事ですべてがはまっていました。子役たちもすばらしく、リアリティを高めていました。あのくらい象徴的に描ききると、逆にリアリティが高まるものです。

隠れたテーマは「時間」。フィルムの逆回転や高感度カメラを駆使して、見事な演出が施されていました。時間とともに情報がはいる。後付けの自己解釈がリアリティを産み、やがて自分の内部で確立していく。そんな現代人の本質が見事に描かれていました。

おすすめ。

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女医の殺人

先日録画しておいた火曜サスペンス劇場の再放送を見た。タイトルは「女医の殺人」。池上季実子主演。舞台は昭和初期。博士論文を書く夫のために開業して金銭をつくり、7年にわたって夫につくした妻が、籍も入れてもらえず、あげくに離縁され、夫の結婚話がもちあがるとともに、まんじゅうにチフス菌をかけて夫の家族に喰わせる。夫の弟が死に、夫・妹・両親、そして夫家族の知人にまで被害が及ぶ。ストーリーだけを追えば単純なのだが、池上季実子の迫真の演技に感嘆した。

ネットで調べてみると、1991年4月の放映だという。1991年といえば、池上季実子32歳である。見事なものである。

更にネットで調べてみると、この物語には原作がない。脚本家の創作であるらしい。もとになった史実があるのかどうか、ぼくは知らない。しかし、夫の優柔不断、妻のいらだちと弱さ、夫の両親の庶民性、どれもこれも見事に描かれていた。脚本家はあの映画『泥の河』の重森孝子である。そういえば、今回の池上季実子は、『泥の河』の加賀まりこの描き方と重なる部分があるし、夫の両親の描き方は田村高廣・藤田弓子と重なる。

火曜サスペンス劇場にこんな作品もあったのだなあ……と改めて感心した。映画にする価値もあったと思う。特に、ラストの二審判決がおりるときの池上季実子の表情には女の性が見事に凝縮されていた。夫の堤大二郎と妹の喜多嶋舞はそれなりでしかなかったが、夫の両親は藤木悠・佐々木すみ江という名脇役が固め、すばらしい演技だった。

2時間ミステリーを馬鹿にするべからず。こんな名作もあるのだ(笑)。

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Wの悲劇

先日録画しておいた「Wの悲劇」を見た。

昔見た薬師丸ひろ子の「Wの悲劇」は、夏樹静子原作の「Wの悲劇」が劇中劇になっていたが、今回はちゃんと原作を描いている。

菅野美穂があまり好きではないぼくにとってはそれほど興味もなかったのだが、小日向文世が出演していたことと、TBSがそれなりに力を入れていそうなドラマだったので見ることにした。予想通り、小日向文世はいい味を出していた。この役者をぼくは「白線流し」の特番で初めて見たのだが、役柄は限られるが、非常に味のある役者である。

今回、驚いたのは真矢みきである。

ぼくは宝塚出身の女優をあまり好まない。品はあるのだが、演技が大袈裟すぎて、どうもぼくの感覚には馴染まないのである。

ところが、今回のラスト近く、事実を自供する真矢みきはずいぶんとはまっていた。それまで、池内淳子で引っ張ってきた感のあった主題がらみの「女の性(さが)」の描き方が、この場面で一気に真矢みきの演技によって包み込まれた感があった。演技が大袈裟……というか、台詞まわしはあくまでも大袈裟だったのだが、なんとも表情のつくり方が見事だった。大作りな顔立ちが生きる演技であり場面だったのだろう。

しかし、ドラマ全体としては、もう少し細かい描写が必要だったように思う。真矢みきの最後の表情がなかったとしたら、どうにも説得力に欠けるドラマになっていただろう。

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正統派

元旦の「相棒」を見ました。内容にはそれほど感心しませんでしたが、檀れいの品のある美しさにはやられました。久し振りの正当派美人女優だなあ…と感動しますね。先日、「感染列島」を見たときにも感じましたが、吉永小百合を超えるのは無理にしても、黒木瞳とかその程度の正統派美女なら軽く超えてしまいそうな、そんなオーラがありますね。初めて見たのは例の「金麦」のCMでしたが、一目見て「だれだぁこれ!」って思いましたから。

なんというんでしょうか、昭和30~40年代の映画全盛期でも、いわゆる80年代のエンターテインメントが志向された時期でも、もちろん現在は売れているわけですけれども、どんな時代でも売れる女優……そんな感じがします。かつては宝塚で成績が悪く、端役ばかりという時代もあったようですから、30代になってその魅力が開花したタイプの女優さんなんでしょうね。

スキャンダルなんかにまみれることなく、正統派のイメージでもう一皮むけて、国民的な女優になっていって欲しいなと思います。「細雪」の札幌公演を見に行かなかったことをいまさらながら後悔しています。

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相棒8/消えた乗客

ひどい脚本。これまでも徳永富彦作品には違和感を抱いてきたけれど、ここまで説得力も共感性の喚起もない本は初めて。

運転手・乗客が消えて放置された路線バス。この仕掛け自体は興味深いのだが、人間の描き方がなってない。羽田美智子の「女優」以来の出来の悪さ。

同性愛を描くなら、もう少し伏線がなければならないだろうし、参考にすべき先行する文学作品も多々あるだろうに。とにかくひどかった。

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