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主材

〈主材〉とは、書き手が〈主想〉に基づいて表現するにあたって、さまざまな素材のなかから選択した題材のことです。例えば、川釣りの魅力について語りたいと思ったときには、ただ「川釣りはおもしろい」と言うのではなく、ヤマメの魅力について語ったり川魚がえさに食いついたときの感触について語ったりします。この場合、「川釣りはおもしろい」というのが〈主想〉、「ヤマメの魅力」や「川魚がえさに食いついたときの感触」が〈主材〉ということになります。ですから、〈主想〉と〈主材〉とは必ずしも一致しません。むしろ〈主想〉と〈主材〉とが一致した文章はどうしても内容が抽象的になり、読者を惹き付けない傾向さえあります。

〈主材〉は更に二つに分けて捉えるほうが有効です。〈素材〉と〈題材〉の二つです。

A 素材 … 〈主想〉を読み手に伝える上で、具体例として書き手が選んだ事物・事象(=もの・こと)
B 題材 … 〈主想〉を読み手にわかりやすく(或いは楽しく)伝えるために、「素材の取り上げ方」「焦点の当て方」「記述・叙述上の力点の置き方」等の観点で加工した素材。

こう考えますと、〈主想〉を表現するために〈主材〉を選ばせるにしても、①どんな素材があり得るかを収集するという段階と、②収集した素材から中心的な具体例や論拠となる素材を選択する段階、更に③選択された素材をわかりやすく楽しく表現するために加工する段階、という三段階があることが理解されるはずです。

素材を加工して題材かするためには、だれに〈主想〉を伝えようとしているのか(相手意識)、その相手になんのためにその〈主想〉を伝えようとしているのか(目的意識)、③その相手にその目的で伝えるにあたってどんな制約があるか(条件意識)などに配慮する必要があります。

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