呼吸
主にスピーチやプレゼンテーションが想定される「話すこと」において、言語技術として「呼吸」が挙げられると、読者の皆さんがまず最初に思い浮かべるのは腹式呼吸だろうと思います。
しかし、そうではありません。週に数回しかない国語の授業において子どもたち全員に腹式呼吸をマスターさせることは不可能です。私はかつて、十数年間、演劇部の顧問をしていました。生徒たちには毎日毎日三十分以上の発声練習を課していました。私はかなり厳しめの顧問でしたから、生徒たちは発声練習にまじめに取り組みました。それでも、女子生徒の七人に一人程度は、三年間やっても腹式呼吸をマスターすることができませんでした。三年間、ほとんど休むことなく毎日発声練習をしても女子生徒の七人に一人を取りこぼすのです。このことは腹式呼吸というものが国語の授業程度で身につくものではないということを意味しています。
私の言う「呼吸」はもっと単純です。それは「たっぷりと息を吸い込む」ということです。ある授業でのことです。私がある男子生徒を突然指名したことがありました。「~ってどういう意味なんだろうねえ。はい、敏夫くん!」といった感じです。敏夫くんは即座に「はい」とささやくような
声で返事をしました。息を吸わずに返事をしたのです。私はこれを見て合点がいきました。そうか。子どもたちの声が小さいのはちゃんと息を吸っていないからだ、と。皆さんも自分の学級の子どもたちを観察してみてください。きっと同じような例がたくさん見られるはずです。
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