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場の雰囲気を共有する

職場に三人の新卒さんがいるとします。いまは職場の呑み会の二次会でカラオケにやってきました。先輩教師が「よし!新卒、順番に一曲ずつ歌え~!」と言いました。

新卒Aはカラオケが嫌いです。歌が苦手だからと最後までかたくなに拒否しました。新卒Bはカラオケが大好きです。ビブラートを利かせて得意のバラードを歌いました。新卒Cはカラオケが得意ではありません。どちらかというと苦手です。それでも「僕、筋金入りの音痴なんですよ」と言って、超音痴な流行りのアイドルの歌を披露しました。それも踊りながら……。

さて、新卒A~Cのなかで今後最も先輩方にかわいがられるのはだれでしょうか。これがまず間違いなくCくんなのです。これは理屈ではありません。どんなにそれが理に適っていない、不条理だと言われても、世の中とはそういうふうにできているのだから仕方ありません。多くの人たちがCくんに好感を抱いてしまうことをだれも責められないのです。

これからの時代に求められる能力の筆頭として〈コミュニケーション能力〉が叫ばれるようになって久しくなりました。就職面接でも〈コミュニケーション能力〉の査定が最も大きな要素を占めると言われます。しかし、猫も杓子も〈コミュニケーション能力〉と叫ぶのに、その内実はよくわかりません。多くの若者たちはそれをビジネスライクに捉えます。要するに、プレゼンテーション力とかディベート力とか交渉力とかいったタイプの能力ですね。でもこれらの能力は確かにこれからの時代に必要とは言われていますが、日本人にとってはイメージ的にどうしても馴染まない能力群です。みんな口ではこれらの能力が必要だと言っていますが、実はそれはどこかに「口達者なだけの人」というイメージがつきまとい、本音ではあまり好まれていないのです。

日本人にとっての〈コミュニケーション能力〉は、実は他人に共感できるとか、他人を楽しませることができるとか、一緒にいると気楽でいられるとか、そういう人がもつ雰囲気のことです。要するに机を並べて一緒に仕事をしたいと思わせる雰囲気を漂わせているかどうか、実はそれこそがこの国で言う〈コミュニケーション能力〉の実態なのだと私は感じています。

前者の〈コミュニケーション能力〉であれば、もしかしたらBくんのほうが優れているかもしれません。Bくんのほうが仕事をそつなくこなす力ももっているかもしれません。しかし、後者の〈コミュニケーション能力〉については、圧倒的にCくんが優れているのです。「愛される力」「かわいがられる力」に大きな差異があるのです。Bくんは評価されるけど愛されない、Cくんは愛されるからこそ評価される、そういう差が生じているのです。ついでに言うと、Aくんはどんなに仕事ができても評価されることもなければ愛されることもありまらせん。いくら不合理だ、不条理だと叫んでもそういうものなのだから仕方ありません。

別の言葉で整理すると、Aくんの優先順位の一番は「自分を守ること」、Bくんの優先順位の一番は「自分をアピールすること」、Cくんの優先順位の一番は「場の雰囲気を共有すること」と言えるかもしれません。少なくとも先輩教師にはそう見えたはずです。人の評価というものはこうした何気ないことの積み重ねで形成されていくのです。

納得できない……そう思われる読者もいるかもしれません。でも、こう考えてみましょう。子どもたちのなかで、あなたがなんとなく親近感を抱く子はどんな子どもでしょうか。この子はかわいいなと思うのはどんな子でしょうか。おそらくは人なっこくて、どこかおっちょこちょいのところがあって、でも自分のミスを笑い飛ばしてしまう。また、同じような失敗を繰り返すことさえ少なくない。そんな子なのではないでしょうか。決して一度した失敗を二度と繰り返さないタイプの優等生的な子ではないはずです。そういう子は、かえって教師にちゃんと指導しなくちゃ、失敗はできないぞというプレッシャーを与えてしまうのではないでしょうか。職場の人間関係もそれと同じなのです。

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