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「まかせる」と「押しつける」

年齢を重ねると、もう一つ覚えなくてはならないことがある。

それは仕事を下の者に「まかせる」ということだ。

経験が多ければ多いほど、仕事のコツを覚えていく。一つ一つの仕事について自分なりの理想像もできてくる。自分本位に考えるなら自分でやりたい仕事もたくさん出てくる。しかし、ベテランがその仕事をすべてやってしまったのでは若者は育たない。ベテランにとっては、若者に仕事をまかせることも若者に仕事を教えることも仕事のうちなのだ。

若者が与えられた仕事に取り組んでいるのを見ているとジリジリしてくる。うまくできないのがじれったくてたまらなくなる。しかもあまりにも遅い。自分がやればとっくにできてるのに……と感じる。ついつい手を出してしまいたくなる。仕事のできる自分本位な人ほど、待てずに手を出してしまう。しかし、それでは若者は育たない。

若者にはいい若者もいればダメな若者もいる。ダメな若者はわからないのに周りに訊くことをしない。ダメな若者は自分一人でやろうとしてヘルプを出さない。どちらの若者も遂に時間切れとなって、いよいよどうしようもできないという段になって助けを求めてくる。こんなとき、〈十割主義〉で仕事をしているとその若者に怒りがわいてしまう。「なぜ、もっと早く言わない!」というわけだ。しかし、〈六割主義〉で仕事をしていれば余裕がある。今日言われて明日までと言われても、なんとかその日だけ〈十割〉を発揮すればなんとかなる。

そう。「まかせる」ということは、いざというときにはその仕事を「かぶる」ということなのだ。「まかせる」と「かぶる」は表裏一体。「かぶる覚悟」のない「まかせる」は、「まかせる」とは言わない。「押しつける」と言う。「押しつける」のではなく「まかせる」ためには、やはり〈十割主義〉では「かぶる覚悟」をもてないのだ。そのためにも年齢が上がると〈六割主義〉がいい。

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