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効率性を重んじる

新採用から十年、学級づくりを中心にがむしゃらにやってきました。自分なりに自信もついてきました。自分一人でできる仕事、自分一人ではできない仕事があることも理解できてきました。ただがむしゃらに突き進めば良いわけではない、ときには立ち止まることが必要なときもある。そんなことを実感する経験もしたかもしれません。三十代は二十代と比べて学びの段階が一段上がっているように感じられるものです。

第一章でも述べましたが、三十代は学校経営への参画の準備段階です。職員室全体を動かすタイプの仕事も次々に任されますし、自分の所属する学年の運営には中心的な働きをしなくてはなりません。学年に二十代の若手教師やメンタル的に弱いタイプの教師がいる場合にはフォローの役回りもしなくてはなりません。お金の仕事、要するに予算・執行・決算をどのように会計文書としてまとめるのかを覚えなければならないのもこの時期です。企画力・実行力・フォロー力・会計力などなど、すべてを発揮しながら、それでいて学期夕経営や生徒指導などでは若手教師の手本とならなければならない。それでいてさまざまな場面で実働部隊の長として動かなければならない。生涯の教師人生で最も忙しいのは三十代かもしれません。しかし、仕事が最もおもしろいのも三十代でもあるのです。二十代の頃とは違って自分の裁量で動かせる仕事がどんどん増えていく時期ですから。こうした意味で、三十代の学びはその後の退職までの二十年を決めてしまうほどに重要な時期なのだと言えるでしょう。

このようなあふれるほどの仕事を抱えながら、その一つ一つを的確に処理し、適切に運営していくために覚えなければならないことがあります。それは〈効率性を重んじる〉という構えです。

確かに自分の裁量で全体を動かせる仕事はおもしろいものです。自分のアイディアを実現していく仕事ですからやり甲斐もあります。しかし、そういう仕事があると同時に学級担任だってもっているわけです。学級外の仕事に夢中になったり学級外の仕事に追い立てられたりして、自分の学級がうまくいかないのでは話になりません。そういう仕事をこなしながら、二十代の若手教師たちの手本としても機能することが求められているわけですから、二十代教師たちよりも力量の高いところを見せ続けなくてはならないのです。しかも学級編制では若い担任に配慮して自分の学級にやんちゃ系の子や難しい保護者をもつことにもなっているはずです。ちょっと手を抜いたりちょっと油断したりすると学級経営自体がままならなくなる、あなたのもつ学級はそうした、いわゆる「重たい学級」であるはずです。もしそうでないとしたら、学級編制会議がどれだけ平均的な学級をつくろうと話し合われていたとしても、それはあくまでうわべの話で、実はあなたは同僚の先生方があなたの力を信頼していない可能性があるとさえ言えるほどです。

こうした仕事の在り方が求められているときに、ただがむしゃらに時間や労力の許す限り頑張り続ける……という心持ちで仕事をしていたのでは、うっかりなにかを忘れてしまったとかちょっとしたミスが重なって深刻な事態に陥ってしまうとか、そうした危険性を伴います。それではいけません。〈効率性〉を重んじながら時間を確保して自分の担任する学級にもしっかりと時間と労力をかける。そういう姿勢が必要なのです。

〈効率性〉とは二つのことを意味します。

一つは、自分の裁量で職員室全体を動かすタイプの仕事、要するに企画系の仕事については、〈費用対効果〉を徹底して考えるということです。そのときの敵は「自己満足」です。自分のアイディアを実現するのはとてもやり甲斐のあることですから、思いついたアイディアはなんとか実現させたい、機能させたいと思うものです。しかし、そればかりを考えて職員室の先生方に過剰な負担をかけて疲弊させてしまってはいけません。張り切りすぎた先生の提案が職員会議で受け入れられないことがしばしば見られるのにはそういう構造があります。その企画はほんとうに先生方にそんなにも過剰な負担をかけてまで実行するだけの効果が子どもたちにあるのか、それを常に考えなくてはなりません。

もう一つは、あふれる仕事群をどういった優先順位で処理していくのかということを常に考え、そのときどきに判断しながら仕事に取り組んでいく癖をつけることです。より良い企画とは、より良い実務とは、より良い会計とは、よりよい学級づくりとは、より良い若手フォローとは……とすべてに全力で打ち込んでいたのでは時間がいくらあっても足りません。特に学級における子どものトラブルや若手教師のフォローなどはいつ必要なるかわからない、予測のつかないものです。忙しい時期にそうしたトラブルが起こると、仕事が滞ってしまうというのでは、社会人としては安定感がないと評価されます。

企画系の仕事で力を入れて創造力を発揮するのは年に一回程度、それも優先順位が高いと思われる一つに絞る、あとは基本的に前年度踏襲、これが安定的な仕事の仕方の平均値です。実務系の仕事、会計処理などのルーティンワークは淡々と粛々とこなす。そして自分の学級づくりにちゃんと時間と労力を注ぐ。これがあるべき姿なのです。

実はそれでもまだ足りません。これだけやってもまだ糸をピンッと張った状態になってはいけないのです。若手教師やメンタル的に弱い先生になにかあったときにすぐに動ける、そうした時間と心の余裕を常にもっている状態を確保しておくことさえ必要なのです。

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