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選材

〈主想〉を伝えるために集めた〈素材〉から選択して〈題材〉化する観点、即ち〈主想〉に合致した〈主材〉を選択する観点を〈選材〉と言います。多くの題材を網羅的に取り上げて説得力を増す場合と、題材を焦点化して取り上げることによって意外性を喚起する場合とがあります。

例えば、「川釣りの魅力」について語りたいと考えた場合、収集した素材からその地域で釣ることのできる川魚を八種類挙げながら、そのそれぞれについて短く魅力を語っていくことによつて説得力を高めるという方法があります。これが前者の方法です。後者はその地域で釣ることのできる「幻の魚」を取り上げ、それを追っている地域の人を紹介することによって「川釣りの魅力」を醸し出そうというような〈題材〉の選び方を考えるとわかりやすいでしょう。

また、抽象的な主張、例えば「環境問題」について主張するとしましょう。この場合、身近な環境問題を三~五つくらい挙げたうえで、それらが地球や人々に及ぼす影響を伝えていくというのが前者の在り方です。これに対して、一見、環境問題とは関係がないと思われる〈題材〉を一点選び、それができるまでの経緯やそれが与える影響などを深く掘り下げ、実はこれほどまでに地球環境に影響を与えているのだ、私たちも日常生活のなかで意識すべきなのではないかと投げ掛けるのが後者のタイプと言えます。

網羅的に取り上げるか焦点化して取り上げるかは、どちらが良い悪いという問題ではありません。前項〈主材〉でも述べたように、「相手」「目的」「条件」に鑑みて、どのような〈選材〉の仕方がより文章表現として効果的かをよく考えて行うというのが良い在り方なのです。

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