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時(描かれる時間軸)

〈設定読み〉における第二は〈時〉です。年月日、季節、期間(何日間の出来事かとか何ヶ月程度が経っているか)といったことを明らかにするだけでなく、主人公にとって時間が早く感じられているとかゆっくり感じられるとか、或いは時間が止まって感じられているなどといった心象時間までを含んだ概念です。

一般的に、小学校中学年までの文学的文章は、物語に起こった順序に沿って描かれています。しかし、学年が上がるにつれて回想シーンが登場したり、場面の変わり目が数年も経っていたりといった貴陽材が出てきます。子どもたちはこの〈時〉の流れが一定でない描かれ方に戸惑いを示します。教師や学力上位の子どもたちには違和感のない当然のことが、一部の子どもたちには読みの大きな障壁になっていることがあるので、授業においては〈時〉の確認を怠ってはなりません。

また、「ある日」「ある朝」といった任意の〈時〉を描いているように見えて、それが前の場面と後の場面の間のわずか数日にしか候補がないとか、月の満ち欠けやお祭り、戦時中の出来事などが描かれていて年月日を確定できるなどという場合も少なくないので、教師の側にも留意が必要です。

更には、登場人物の心象によって時間の感じ方が異なるのではないかという想像力を授業にもちこむことも有効です。「残雪」を捕らえるための良い仕掛けを思いついてがんの季節を待つ「大造じいさん」と、「残雪」を捕らえ後に逃がすことを決意して過ごす「大造じいさん」とでは、同じ時間でも長く感じたり短く感じたりすることがあり得るはずです。また、『お手紙』の「がまくん」と「かたつむりくん」のように同じ時間でも登場人物によって意味の違う時間を過ごすということも考えられます。

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