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〈織物モデル〉の効用

読者のみなさんは〈織物モデル〉を御存知だろうか。私も懇意にさせていただいている北海道の横藤雅人先生が提唱された学級経営の理想像を提示したモデルである(『必ずクラスがまとまる教師の成功術~学級を安定させる縦糸・横糸の関係づくり』野中信行・横藤雅人著・学陽書房・二○一一年年三月)。おそらく横藤先生は河合隼雄の新聞連載「縦糸・横糸」(新潮文庫)から着想したのだろうと私は想像している。

〈織物モデル〉は学級経営の心構えをもつうえで、学級担任にとって指標となるような大変に有意義なモデルである。私の教師人生において、これほどまでに学級経営の本質をシンプルかつ的確にとらえたモデルに出逢ったことはない。その意義はおおまかに言えば二つある。一つは、学級担任が学級づくりをするうえで確かな方向性をもつことができること、いま一つは、学級担任が自分の学級づくりがうまくいっているかどうかの点検の観点となることだ。しかもこの二点において、〈織物モデル〉を指標とすればまず間違いない、それほどまでにこのモデルの完成度は高い、私はそう確信している。このモデルが長く教育界で議論されてきた二つの方向性、二つの主義主張をバランスよく配置しているからである。いわば〈織物モデル〉は戦後七十年の議論を踏まえ、それをシンプルかつ的確に構造化することに成功した、そう言えると思う。

織物は強靱な縦糸と美しく彩られた横糸とでできている。縦糸がなければ織物はほつれてしまう。しかし、横糸の彩りが様々なコントラストを構成することによってこそ織物の美しさは成り立つ。いわば織物は、縦糸と横糸とが相互補完することによって、織物の強さと美しさとが互いにマッチングして成り立っているわけだ。

〈織物モデル〉はこの縦糸と横糸を、それぞれ〈教師-子ども関係〉〈子ども-子ども関係〉に比喩的に置き換えることによって、学級経営の理想像を提示したものである。一部に縦糸・横糸ともに〈教師-子ども関係〉の比喩として捉える向きもあるが、そういう意味ではない。少なくとも私はそう捉えている。

つまり、〈織物モデル〉は、教師と生徒とがどのような関係を結ぶべきなのか、生徒同士にどのような関係を結ばせるべきなのか、更には二つを総合して〈教師-子ども関係〉と〈子ども-子ども関係〉とがどのような関係性をなすべきなのか、この三点を一つのモデルとして提示している。しかも、しつこいようだが、シンプルかつ的確にだ。私が驚嘆するとともに高く評価するというのもこの点においてなのである。

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