現実的に有効な対応
私はこう見えて〈ウルトラマンおたく〉である。元〈ウルトラマンおたく〉と言ったほうがいいのかもしれない。新しいものはてんでわからないからだ。若い読者にはわからないかもしれないが、「ウルトラQ」から「ウルトラマンA」までの怪獣・宇宙人・超獣ならば、写真を見せられれば即座に名前を言える。まあ、元〈ウルトラマンおたく〉を名乗っても真の〈ウルトラマンおたく〉から非難は受けないだろう。
私はこう見えて〈仮面ライダーおたく〉でもある。元〈仮面ライターおたく〉と言ったほうがいいかもしれない。新しいものはからっきしわからないからだ。若い読者にはわからないかもしれないが、「初代1号ライダー」から「仮面ライダーストロンガー」までの怪人ならば、写真を見せられれば即座に名前を言える。元〈仮面ライダーおたく〉を名乗っても真の〈おたく〉から抗議は受けないと思う。
人間の生存を脅かす怪獣も、地球を征服しようと企む○○星人も、世界征服を企むショッカーも、悪の存在・悪の組織と認知され、駆除すべき、撲滅すべき対象と見なされる。そして事実、彼らは毎回殲滅される(ジャミラのようなごく一部の例外を除いて)。でも、私はこう考えてしまう。レッドキングやテレスドンをこの世から除いてしまったら、その地域の生態系は崩れないのだろうか。バルタン星人やメトロン星人を殺してしまったら、はるか宇宙の彼方。バルタン星やメトロン星にいる彼らの両親は悲しまないのか。
まあ、馬鹿げた論議はこのくらいにしておこう。
フィクションの世界なら悪と見なされたものをただ除けばいいかもしれない。しかし、現実世界では話はそれほど単純ではない。例えばゴキブリ。あれほど忌み嫌われる動物もいないわけだが、どれだけ世の主婦たちが全滅を望んだとしても、やはり世にある一つの「種」を、すべてを駆除してしまってはどこかにアンバランスが生じようというものである。オニグモだって大量発生されてはかなわんが、いなくなられても生態系が崩れてしまって困る。ここまでなら読者の皆さんもさほどの異論はあるまい。
では、原発ならどうだろう。原発では思想がからむと言うなら、公害ならどうだろう。犯罪はどうか。公害と犯罪、どちらもなくしてしまったほうがいいと言うのではないだろうか。まして戦争をや……。言うまでもあるまい。
しかし、ここで私が言いたいのは、非原発・犯罪撲滅・戦争反対と叫ぶことが、果たして現実的に有効な対応たり得るかということである。
原発依存から脱却しようとすれば、現段階までの核廃棄物処理に関するとてつもない技術開発が必要になる。加えて、現段階の原発依存度を視野に入れながら、代替エネルギーに移行できるまでの技術開発を具体的に予測せねばならない。更に言うなら、予算措置も開発までの年数を予測しながら具体的に講じねばならないだろう。まったく、気の遠くなるような努力が必要になる。犯罪の減少には犯罪者の心理を研究したり景気の動向に配慮したりといったことが不可欠である。戦争回避には、仮に二国間対立としても、両国の国益に配慮した対話が何より必要だろう。どれもこれも「ただ無くせ」という話ではない。
言うまでもないことだが、原発や犯罪や戦争を肯定したいのではない。私が言いたいのは、現実的に有効な対応を編み出すためには何が必要か、という思考の枠組みの話である。
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