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自らをメタ認知する

自分の得意分野は何なのか─これが自覚されていないようでは、30代としては少々心許ない、というのが正直なところです。自分が何を得意としているのかがわからないということは、ただ漫然と10年間を過ごしてきたか、目の前の火の粉を振り払うことだけで10年間を過ごしたかのどちらかなわけですから。

少なくとも、自分が学級経営を中心とした特別活動系の教師なのか、授業づくりを中心とした学力形成系の教師なのか、という自覚くらいは持っていたいものです。この問いを突きつけられると、多くの教師はどちらも比べられないほどに重要だと応えるかもしれません。しかし、この二つを同じ比重で考えている教師などあり得ません。このことは、私の経験から断固として譲れない一線です。

例えば、あなたは学級経営を考えるとき、「学級づくり」を中心に考えるでしょうか、「授業づくり」を中心に考えるでしょうか。あなたが行事や当番活動、学級組織や休み時間の遊びなどの効果で考えるとしたら、あなたは「特別活動系」の教師です。あなたが「学級経営は授業で勝負!」といった考え方をするとすれば、あなたはもう間違いなく「学力形成系」の教師です。前者は子どもたちを盛り上げるネタ開発が大好きですし、後者は教材研究が大好きです。前者は学習発表会や運動会の準備期間に授業をつぶすことを厭いませんが、後者はどんなときにも授業はきっちりとしなければならないと考えます。要するに、前者は授業以上に大切なものがあると考え、後者は授業のなかでこそ学力以上のものも身に付いていくと考えます。こうした傾向の違いは、人生経験を元にしている場合が多いため、教職経験を積み重ねてもそうそう変わるものではありません。

まず第一に、特別活動系教師は学級づくりや行事指導、部活動の指導などを好む傾向があり、学力形成系教師は授業や実践研究、教育課程に関わることを好む傾向があります。おそらく自分が育ってきた過程において、前者はお祭り事が好きだったり、仲間と旅行することをを好んだり、部活動に一生懸命取り組みチームワークを学んだことが自分の人生の基盤だと感じていたり、そうした人が多いのだろうと思います。また、後者は自分自身で勉強して学力を身につけたり、自分で試行錯誤しながらいろいろなことを発見したり、仲間と議論することから何かを生み出したりといったことに喜びを得てきた人に多いのだろうと想像します。要するに、前者は勉強なんて二の次、人との関わり合いの中でこそ人間は成長するという人間観を抱く傾向をもち、後者はまずは勉強をして世界観を広げること、人間形成は自分でするものという人間観を抱く傾向をもっているわけです。

第二に、特別活動系教師は校務分掌において、生徒指導部や行事部、学級活動部や児童会・生徒会指導部、保健体育部などを好む傾向があり、学力形成系教師は教務部や研究部、文化部などを好む傾向があると言えます。後者が政治の動向や世論の動向に敏感で、文教政策にも精通していることが多いのに対し、前者はそうした政策的なことよりも、アスリートや文化知識人、歴史上の人物などの成功譚や成長譚を好む傾向もあります。ともにこうした傾向に基づいて仕事をしているものですから、特別活動系は学級経営や生徒指導、部活動こそが子どもたちを育てるのであって、校務分掌は雑務だと考える傾向があり、学力形成系は学校運営を司る校務分掌を学級運営や生徒指導以上に大切なものだと感じる傾向があります。

第三に、特別活動系教師は生徒指導を得意としていることが多く、事務仕事を不得意としている傾向があり、学力形成系教師は生徒指導を苦手としていることが少なくなく、事務仕事を得意としている傾向があります。後者が教職を知的な専門職と捉えているのに対し、前者は教職を子どもたちを導く聖職のイメージで捉える傾向がありますから、生徒指導や事務仕事に対するスタンスが異なるのも当然といえば当然です。

第四に、特別活動系教師は自らの個性、自らの経験と同質の体験を子どもたちにさせたいと願う傾向をもっており、学力形成系教師は教師である自分の個性を子どもたちに押しつけてはいけないと自制する傾向をもっています。生徒指導を得意とするか否かは、私には、自分の経験を活かしながら子どもたちに熱く語ることを潔しとするか否かに出発点があるように思えます。前者にとって後者は生徒指導のできない指導力不足教員に見えることも少なくありませんし、後者にとって前者の在り方は指導というよりも洗脳に見えてしまうことも少なくありません。

第五に、特別活動系教師は教育活動を経験主義的学力観・教育観で捉える傾向があり、学力形成系教師は教育活動を系統主義的学力観・教育観で捉える傾向があります。例えば、両者が「総合的な学習の時間」のカリキュラムを立てますと、前者はおもしろそうな単元、意義のありそうな単元を五つほど並列させるだけ、ということになりがちですが、後者は単元1から単元5まで難易度を上げていったり、最後にこれまでの単元を総合した単元を設定したりということにこだわりをもちます。顕著な例を挙げれば、両者の仕事振りにはこのような違いが出ます。

こうした傾向の違いは、周りの先生方を観察していれば、子どもたちへの接し方から職員会議での発言内容に至るまでさまざまなところで見られるものです。30代にもなれば、こうしたメタ認知能力をしっかりともち、その視点で同僚を評価するだけでなく、その視点を自分自身にも向けられるようになっていなければなりません。

私は前節において、得意分野においてはオーバーワークを厭わないほどに貢献しなければならないと言いましたが、この「得意分野」というのは、ステージ発表や合唱の指導を得意としているとか、事務仕事でミスをしたことがないとか、そういうレベルでは30代としては心許ないと言わなければなりません。自分が特別活動系教師ならぱすべての学校行事で力量を発揮する、自分が学力形成系教師ならば学校の教育課程づくりや学校研究を陰に陽に支え続ける、これくらいのレベルのことを言っています。

また、自分が特別活動系教師なのか学力形成系教師なのかを自覚していれば、不得意な分野や不得意な領域について自覚的に学ぶ姿勢も身に付きます。要するに、自分の不得意なことに謙虚になれるのです。

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