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〈世界観〉を広げる問い

「あの子と人間関係を結ぶためのなにか良い方法はないか」

この問いは言うまでもなく、教師である自分と「あの子」との人間関係が結ばれていないことを前提としている。日常的に反発されているのかもしれないし、表立って反発しないまでも無視を決め込み、ほとんどかかわってこないのかもしれない。そんな状況において、そもそも「なにか良い方法はないか」などと〈どのように〉を考えること自体がナンセンスである。考えるべきは自分のその子がなぜそうした関係になってしまっているのかという要因だろう。やはり、まず考えるべきは〈なぜ〉なのだ。

「子どもたちが夢中になって行事に取り組む、なにか手立てはないか」

この問いは、行事に対して子どもたちが夢中になって取り組むべきであるというテーゼが予め前提されている。ではなぜ、その行事に子どもたちは夢中にならなければならないのだろう。この教師にはこの〈問い〉がない。おそらく考えたこともないのだ。この行事はなぜあるのか。特別活動の目的を達成するためならば他のさまざまな行事もあり得るだろうに、この学校はなぜその行事を選択しているのか。おそらくこの教師はこうしたことも考えたことがない。

厳しく言うなら、この教師にはこの行事が見えていないのだ。その行事の意義を考えていないのだ。その意義もわかっていない教師が、子どもたちに一所懸命に行事に取り組ませようと考える手立てにどれほどの価値があるだろう。そんな手立てがどれほど機能し得るだろう。この教師は、行事指導に取り組むにあたって当然考えておくべきことをそうと意識せぬままにサボタージュしているのではないか。私にはそう見えてしまう。

〈なぜ〉とさえ考えれば人間関係の質に目が向くのである。〈なぜ〉とさえ考えれば行事の意義にも位置づけにも考えが及ぶのである。それは、繰り返しになるが、〈なぜ〉という問いに潜在しているものを顕在化させる機能があるからだ。

〈どのように〉と問う前に〈なぜ〉を問うべきなのである。〈なぜ〉を問い、仮説を立ててこそ、初めて〈なにを〉〈どのように〉と考える資格を得られるのである。〈なぜ〉を問わぬままにいきなり〈どのように〉を問うことは、深い霧のなか、進路には断崖があるかもしれぬのに、ただ取り敢えず進もうとする態度に等しいのだ。前に進みたいのなら、一歩を踏み出したいのなら、まずは視界を鮮明にすることに心血を注ぐべきではないのか。  〈どのように〉と考えがちなところをちょっと立ち止まる。〈なぜ〉かと自分に問いかけてみる。その癖をつけるだけで視野は大きく広がるのだ。

〈HOW〉から〈WHY〉への転換──それはあなたの〈世界観〉を広げるのである。

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