隙間利用
朝学活に行ったら、子どもが一人いない。欠席連絡は入っていない、どうしたんだろう。昨日はあんなに元気だったのに……。さて、保護者に電話をかけなければならないわけですが、あなたはいつ、どこで電話をかけますか? 授業に必要なものを教材業者に発注するために電話をかけなければならない。あなたはいつ、どこで電話をかけますか? ちょっとした保護者への連絡、部活動に伴う他校の先生への連絡、研究活動に伴う他校の先生への連絡、行事にからむ旅行業者への連絡、数限りない電話連絡をあなたはいつ、どこでしているでしょうか。
私は教室近辺の廊下、或いは教室のある階の特別教室で行います。朝学活中にちょっと廊下に出て、携帯電話で欠席連絡のなかった保護者に連絡してしまう。ものの一分もかかりません。朝学活のうちに「○○くんは風邪で欠席だそうだ」と日直に伝えることができます。複雑な事情があるとわかれば、「すみません。朝学活中なので五分後にまたかけ直します」と言って、チャイムが鳴るとと同時に教室と同じ階にある「教育相談室」に行って再度電話をすることになります。勤務校は朝学活終了から一校時までに十分ありますから、かなり余裕をもって話をすることができます。これが一度職員室に戻って電話をかけていたのでは、一校時に間に合うには話す時間ガニ分程度しかなくなってしまいます(勤務校は校舎が広く、職員室から教室まで約三分かかる)。電話連絡が二本必要な場合には一校時に間に合わなくなってしまいます。
基本的に業者への連絡や他校の先生との連絡も、私は教育相談室で授業の間の十分休みで済ませてしまいます。こうすれば電話連絡に空き時間や放課後を浸食されません。先方が不在の場合には伝言で済ませてしまいます。こんな感じですから私はほとんど職員室にいません。ときにセミナー講師のオファーなどの電話が学校にかかってくることがありますが、私が勤務時間中に電話に出るということがまずありません。勤務校は校内放送を非常時のものとし、職員を呼び出す校内放送をかけることを禁止していますから、私の机上に電話引き継ぎのメモが置かれたとしても、私がそれを見るのは何時間も経った後です。私を講師として招いてくれる管理職が「取り敢えずご挨拶を」という感じで、電話をかけてくることがありますが、多くの場合、それも私は無視します。折り返し電話をするということはまずありません。そういう意味では、私は公務以外の仕事に関してはかなりビジネスライクです。私が放課後をつぶして電話を折り返すのは、保護者に対してだけというのが現実です。こんな時代ですから、公務外の仕事に関してはメールで済ましてくれよ……というのが本音です。
例えば、北海道の冬には、暖房がききすぎて教室が暑いということがあります。子どもたちも暖房を切って欲しいと言います。逆に、春先や秋などにまだ暖房が入っていなくて子どもたちが寒がる場合もあります。こんなときにも、私は携帯電話で学校に電話し、教頭に「○年○組の暖房を切ってもらえますか」「○年○組に暖房を入れてもらえますか」と電話します。
例えば、授業中にある子が具合が悪くなり、保健室に行きたいと言い出すことがあります。聞くと自分一人で行けそうなので、私がついていくまでもないようです。こんなときにも、私は携帯電話で学校に電話して保健室に取り次いでもらいます。そして「いま○年○組の○○さんが保健室に向かいました。大丈夫とは思いますが、よろしくお願いします」と連絡します。
電話連絡だけではありません。職員会議前に同僚の先生とちょっとした打ち合わせをしておきたい(いわゆる「根回し」ですね)、提案文書をつくったので事前に目を通してもらうべき人たちに文書を配布して回る、学年の生活指導の先生と今日の昼休みの生徒指導の分担について確認したい、ある子に昨日約束したこれこれについて確認したい、最近の学校生活に少し不安を感じる子がいるのでちょっとだけ二人で話をしたい、こんな小さな、それでいて重要なやりとりを、すべて授業の合間の十分休みにこなしてしまいます。実は、簡単なワークシート程度なら、パソコンを開いて十分休みに教室でつくってしまうことさえあります。
現在、中学校の日課はほとんどが六時間授業です。帰り学活が終わり清掃が終わると、放課後は四十五間しかありません。しかも、十分休みは朝学活後・帰り学活前を含めて日に六回もあるのです。なんと六十分です。これを有効に活用しない手はないではありませんか。
多くの教師は十分休みが足すと六十分になるということを意識していません。また、一本の電話、一つの打ち合わせがだいたい何分程度かかっているのかということにも無自覚です。私の経験でいうと、それが連絡であろうと根回しであろうと文書の説明であろうと、一つの連絡にかかる時間はだいたい三分以内です。放課後や空き時間など時間のあるときにやると、どうしても雑談が紛れ込んでしまい、必要以上に時間がかかっているだけなのです。
私は中学校教師ですから、一日に一~二時間程度の空き時間があります。毎日、放課後の時間が四十五分間あります。この時間にはパソコンを開いて必要な提案文書をつくったり、授業のワークシートをつくったり、保護者と電話で相談したりします。しかし、そうした仕事もいつもいつもあるわけではありませんから、大きな声では言えませんが、私は勤務時間を余しているというのが実態です。そしてそれは、一日六十分、週に五時間にもわたる「隙間時間」にちゃんと仕事をしているからなのだと自負しています。
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