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指導事項を明確化せよ!

1時間の形成学力を一つに絞ることを提案しました。多くの読者がなるほどなと思われたとことでしょう。しかし、多くの国語科授業は形成学力を一つに絞るどころか、そもそも形成学力を教師が自覚していないというのが一般的です。「ごんぎつね」では「ごんぎつね」の鑑賞だけをし、「ありの行列」では蟻の生態をまとめるというような授業がむしろ一般的です。

国語科は言語活動を通して言語能力を高める教科です。なのに多くの教師は、教材を読むという言語活動ばかりを考えて、その活動でどんな言語能力が培われるのかということに無自覚です。これでは、形成学力を一つに絞るどころの話ではありません。

算数・数学を例に考えてみましょう。算数・数学科は必ず新しい概念が出てきたら、その「定義」を教えます。三角形とは三つの辺で囲まれた図形であるとか、関数とは二つの変数 x ・ y の間に,ある対応関係があって,x の値が定まるとそれに対応してyの値が従属的に定まる時の対応関係であるとか、こうした定義を明確にして授業が進みます。また、それを受けて、必ず「定理」が教えられ、問題をとくための「公式」が教えられます。しかもそれは、小学校4年生では小学校3年生までの既習事項が前提となり、中学校2年生では中学校1年生までの既習事項が前提となり、つまり、既習事項を用いて新しい概念を学ぶということの連続です。

しかし、国語科は「ごんぎつね」の授業でただ「ごんぎつね」を読まされ、「ありの行列」でただ「ありの行列」を読まされるという授業が延々と続きます。小学校1年生で「おおきなかぶ」を読むときも、高校で「こころ」や「山月記」を読むときも、登場人物の行動を読み、心情を考えてまとめるという作業が繰り返されます。何の系統性もありません。「ごんぎつね」で習ったことが「大造じいさんとがん」の読みに生きることも、「故郷」で学習したことが「羅生門」の読みに生きることもありません。これは算数・数学で言えば、定義も定理も公式も教えられることなく、ただ問題に取り組めと言われているようなものです。

なぜ、国語の授業はこうした悪弊が延々と続いてきたのでしょうか。それは国語の授業が活動だけをしていても、子どもたちが発達段階に応じて本を読んだり漫画を読んだりしながら、日常生活のなかで言語能力を高めてくれているからです。国語の授業は、授業で学力をつけるよりも、子どもたちの日常的の成長を頼りに行われているというのが実は一般的なのではないでしょうか。

子どもたちの国語学力を高めたいと思えば、まずは教師の側が培いたい言語能力は何だ、今日の指導事項は何だと明確に意識できていなければなりません。指導事項を曖昧にしていては、実は授業などできないのです。

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