THE 教師力
『THE 教師力』堀裕嗣編/THE 教師力編集委員会著/明治図書
執筆者:青山新吾/赤坂真二/池田修/石川晋/糸井登/大谷和明
まえがき
「THE 教師力」と題して様々な論客にその概念を語ってもらおうという企画を思いついてから、既に10年近くが経った。様々な教育運動が一つの主張を広めることに腐心しているのを見るにつけ、また、そうした教育運動同士が対立し合い、次第に互いの交流を回避するようになるを見るにつけ、「それではいけない。教育界は常に多様性が担保されなければならない。」との思いを強くしたからである。しかし、そうした思いとは裏腹に「多様性」を担保した企画を編集者に提出すると、なかなか取り上げてもらえなかった。著者の明確な主張のないものは本にはしづらい、そう思われたのだろうと推測する。
今回、明治図書の及川誠さんがこの企画に賛同してくれたことにより、やっと長年の志を形にすることができた。それも、この2013年夏に刊行するにはこれ以上ないという執筆陣で形にすることができた。ある種のに感慨を抱いた次第である。
先般、同じく及川誠さんのお力を借りて、「エピソードで語る教師力の極意」という10冊シリーズを刊行した。教師が力量を高めていくうえでせ参照とすべきは、一つは先達の人生に鑑みながらその思考法・発想法を学ぶことであり、いま一つは教育界に流布する概念について多様な人たちの論理を比較読みすることだと考えている。本書は後者の発想を色濃くもつものである。読者の力量形成に少しでも寄与するなら望外の幸甚である。
あとがき
「教師力」という語が世間に流布して10年を迎える。学級崩壊、保護者クレーム、指導力不足教員、不適格教員などをはじめとして、教師の力量が社会問題化するなか、朝日新聞がこの語をつくって以来、この語が用いられるようになった一定の効果もあったように思う。ただし、マスコミでは、様々な事件、様々な問題が起こるなか、この語が都合よく使われてきたという感がある。
いま、16人の論客の「教師像」を読み終えて、その共通点と相違点とに思いを馳せている。教育界で活躍する16人の「教師力」の概念には、この学校に逆風吹きすさぶ時代においてなお、教育を肯定的に見ようとの志にあふれている。子どもたちを肯定的に捉えようとの眼差しにあふれてもいる。細かいところで齟齬はあるにせよ、この志をもつ人たちが活躍する世界なら、まだまだ捨てたものじゃないじゃないかと思われる、それどころかもしかしたら未来は明るいのかもしれないとさえ感じられる、そんな感慨を抱いた。今回、「教師力」の内実を様々な実践家・研究者に語っていただこうと、この企画を考えた甲斐があったとある種の喜びを感じている。
突然の執筆依頼を快くお引き受けいただいた執筆者の皆さん、そしてこの「THE 教師力」という奇妙な企画を形にしてくれた及川誠さんに感謝申し上げる。
J-WALK/何も言えなくて…夏 を聴きながら
2013年5月27日 自宅書斎にて 堀 裕嗣
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