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ラブレター

教え子の一人がFBで『エピソード…』を評して「スイスイ読みやすい」と書いている。本書に取り上げた教え子の一人だ。エピソードというものはそのエピソードを共有している人間にとっては「スイスイ」と表現されるような機能を果たすのだという顕著な例である。とすれば、一般的な読者にはやはりそう簡単には伝わらないと考えるべきなのかもしれない。

おそらく読者に難しいと感じられるのは、それぞれのエピソードとそのエピソードを通して主張される抽象とがなかなか結びつかないところにあるのだと思う。結びつかないから、堀が何を言っているのかが理解できないわけだ。しかし、エピソードを共有している者から見ると、両者がいとも簡単に結びついてしまう。おそらくそういうことなのだろう。

実はこの本はそんなに難しく考えて読む必要はないものだと僕は思っている。いろいろ理屈は語っているけれど、第1章は新卒で担任した1年2組への愛惜に過ぎない。愛惜でわかりにくければラブレターに過ぎない。第2章は学生時代へのノスタルジーと、現在の実学的な教員養成カリキュラムへのアンチテーゼである。第3章はこれまた僕の演劇を具現化してくれた主演女優たちへのラブレターである。そして僕がこの本で書きたかったのは、実はここまでだ。あとの第4章から第8章までは体裁を整えるために書いてはいるが、まだ現在進行形で進んでいるものであり、まだまだ未整理なのだ。言い方を変えればまだまだ発展するものなのだ。第1章から第3章までのエピソードだけが既に終わった「過去のこと」を書いている。この三つだけが僕のなかで整理が終わったことが書かれているのだ。

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