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目指せ!国語の達人 魔法の「スピーチネタ」50

Cover13032教室ファシリテーションへのステップ・2
目指せ!国語の達人 魔法の「スピーチネタ」50

堀裕嗣・山下幸編・「研究集団ことのは」著/明治図書

まえがき

拙著『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』(学事出版)をお読みいただいた方の何人もから同じ質問を受けました。

「教室ファシリテーションの理念はよくわかりました。手法もよくわかりました。でも、いきなり導入してうまく行くのでしょうか……。」

なるほど、その不安はよくわかります。

「本当にうまくいくのか不安で、最初の一歩が踏み出せません。」とか、或いは「実際にやってみたけれど、なんとなくしっくり来ないんです。他に何かコツがあるんじゃないでしょうか。」とかいった声もありました。

こうした声に触れて、私は気がつきました。そういや、子どもたちをつなげるこの手の活動は、ダイナミックな教室ファシリテーションの手法に取り組む以前に、日常的に小さな活動をたくさんしている、と……。教室ファシリテーションで提案したダイナミックな手法は、そうした日常的な取り組みを前提としていたのだ、と……。

今回、「教室ファシリテーションへのステップ」と題して、国語科の授業の在り方について、音読・スピーチ・聞き方・作文・話し合いの五つについて、ネタを含めてシリーズで上梓させていただくことになりました。本書はその2冊目「スピーチ編」です。

もとより、音声言語活動には三つの活動形態があります。

一つ目に「独話」。これは1対多の一方的なコミュニケーションです。

私たちはよく、大学の先生の講演を聴いたり、現場の先生の研究発表を聴いたりという機会をもちますが、こうした場合、その場の話し手は一人、その他の大勢は聞き手ということになります。つまり、「1対多」でコミュニケーションが行われているわけです。

また、聞き手は原則として、話し手が話している途中に口をはさむということが許されません。一般に、独話の最中に聞き手が口をはさむことは失礼とされます。これが「一方的コミュニケーション」という意味です。

「独話」の例としては、「講演」「講話」「演説」「スピーチ」「プレゼンテーション」などがありますが、国語教室で展開される具体的な学習活動としては、一般的に「スピーチ」になります。

二つ目に「対話」。これは1対1の相互的コミュニケーションです。

日常生活において、1対1でのかけあいは意外と多いものです。例えば、「挨拶」「質疑応答」「問答」「面接」などは、原則として1対1で行われます。これらをまったく経験せずに生きていくことは難しいでしょう。また、「総合的な学習の時間」の導入以来、その必須の活動とされてきた「インタビュー」なども、一般的には1対1の対話形態で行われるものです。更に、電話のように、コミュニケーションツール自体が「対話」の成立を求めているというようなものさえあるほどです。これらは、言うまでもなく、双方のかけあいによって進むコミュニケーションです。「対話」が「相互的コミュニケーション」とされる所以です。

三つ目に「会話」。これは1対少数の相互的コミュニケーションです。

これは、いわゆる「日常会話」をはじめとして、「話し合い」「座談会」「討議」「討論」「会議」「ディベート」「シンポジウム」「パネルディスカッション」などなど、その種類が実に様々にあります。特に、「話し合い」や「討論」、「ディベート」「シンポジウム」「パネルディスカッション」などは、21世紀になってから随分と流行してきました。おそらく、「総合的な学習の時間」を機能させるための必須のアイテムとされてきたからでしょう。

私は「独話」は音声言語の技術の習得に、「対話」は意欲の喚起に、「会話」は思考の促進に向いていると考えています。1対多の一方的コミュニケーションでは話し手がその場のすべての責任をもつことになりますから、その責任を全うするために技術意識が高まります。また、1対1で和気藹々に相互コミュニケーションを図ることは話すことの抵抗感を和らげます。更に、1対少数で当事者意識をもって交流や議論に参加することは、だれもが傍観者とならずに思考が促されます。

私はこれを原則として、長く「話すこと・聞くこと」領域の授業づくりに取り組んできました。

スピーチは「独話」の代表的な言語活動といえます。その意味では、1対多の一方的なコミュニケーションにあたります。しかし、なんとかこの「独話」の学習においても、「対話」や「会話」の良さを導入できないか、いつの頃からか、そう考えるようになりました。

そして到達したのが、結果としての活動形態が「独話」だったとしても、そのプランニングの段階で「対話」や「会話」を導入するこどてした。プランニングの段階には様々な思考活動があります。一人で取り組むのは難しいと思われるような、多様な視点で検討しなければならないこともたくさんあります。そこに協同的な活動を導入することを常としてはどうだろうか。

私はかつて、『教室プレゼンテーションの20の技術』(明治図書)を上梓しまた。また、最近、『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』(学事出版)も上梓しまた。本書は前者の言語技術的な発想と、後者の協同学習的な発想とを融合したものです。

本書が現場の国語授業の活性化に少しでもお役に立てるなら、それは望外の幸甚です。

あとがき

本書は「研究集団ことのは」にとって、13冊目の共著となります。国語科授業の本としては8冊目です。「教室ファシリテーションへのステップ」というシリーズ5巻本としては、2巻目にあたります。

シリーズ本として幾つかの本をつくろうという場合、私の経験から言って心情的に最も苦しいのが2冊目です。1冊目がある種の狂気的な盛り上がりの中で難産とはいえ形になってしまうのに対し、2冊目は1冊目にあったある種の狂気が覚め、自分たちの力量のなさとか、読者にとって何が有益なのかとか、こんな実践に本当に価値があるのかとか、こうしたことを深く考え始めてしまうものなのです。そうした迷いがなんとなく筆を止めてしまう、次第に原稿執筆の苦しみから逃避させてしまう……そんなことが多いように思います。本書は共著ですから、原稿提出の遅れる者が現れるのも2冊目であることが多いのが現実です。

しかし、本書は割とスムーズに出来上がりました。おそらく、理由はたった一つです。1冊目の「音読本」が「研究集団ことのは」の中心メンバーでつくったのに対し、この2冊目の「スピーチ本」は割と最近になって入会したメンバーが多数書いているのです。中心メンバーが若手メンバーや新しく入会してきたメンバーに、つまり本の原稿を初めて書くというメンバーにああでもないこうでもないと教えているうちに、なんとなく執筆環境が整い、執筆意欲も活性化して……と、良い回転にはまったのです。

いつの時代も、組織を活性化するのは若者であり、新しいメンバーです。

メンバーが完全固定するのではなく、新しい人が少しずつ入ってくるという状態が続いていること、それもまた「研究集団ことのは」の一つの強みなのだと改めて感じた次第です。

思えば、「研究集団ことのは」は1992年に結成され、ちょうどその10年後、2002年に一度目の隆盛期を迎えました。2002~2005年の4年間に10冊の共著を上梓させていただきました。当時は「研究集団ことのは」の結成に参加した者たちが、「この10年の成果を発信しよう」の思いを胸に抱いて迎えた隆盛期であったように感じます。そして再び、ちょうど10年後、2012年になってこうして二度目の隆盛期を迎えていることに、代表として10年前とは違った感慨を抱いています。

実は、現在、「研究集団ことのは」の第1期ともいうべき、立ち上げ当時の、たった7人で活動していた頃のメンバーは3人しか残っていません。それでも、若い人たちが参加したり、僕らに価値を見出してくれた関東や東海の先生方をメンバーに加えたりしながら、いまがあります。現在は東京都名古屋に支部をもつまでになりました。

90年代は若さにまかせて、月例会が15時間の長丁場なんていうことを常としていました。北海道内では「あのサークルは狂ってる」「あのサークルは怖いらしい」「あのサークルはまるで虎の穴のようだ」と揶揄されたりもしました(笑)。それほど異常な集団だったのです。土曜日の13時から始めた例会が議論をしているうちに夜が明けてしまうなどということが幾度もありました。

現在、月例会は17~21時の4時間を基本としています。たまに遅くなることもありますが、23時をまわることは皆無になりました。もう狂ってもいないし、怖くもないですし、虎の穴でもありません。とても人間的なサークルになりました(笑)。そういう中で第二の隆盛期を迎えつつあることが、私にはなぜかとても嬉しいのです。

今回も編集の及川誠さんには、企画から出版に至るまで並々ならぬご助力をいただきました。ありがとうございました。

元ちとせ/コトノハ を聴きながら…
2012年10月31日 自宅書斎にて 堀  裕 嗣

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