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マクドナルド化する社会

では、いったい、どうすればそのような〈縦糸〉が張れるのでしょうか。ここでは、『マクドナルド化する社会』(ジョージ・リッツァ著・早稲田大学出版会・1999年)をヒントに考えてみることにしましょう。

マクドナルドに行ったことのない読者は、おそらくいないでしょう。月に一、二回食べるとという方さえいらっしゃるかもしれません。それほどマクドナルドは今日、私たちの生活に密着したファーストフード店になっていることは間違いありません。

少し遠回りになりますが、ここではまず、マクドナルドに代表されるファーストフード店の構造について考えてみます。

夏休み中のある日、同僚と二人で、昼休みにマクドナルドに行こうと考えたとします。店をちょっと覗いてみると、カウンターには十人ちょっとの行列。うん、これならそれほど時間はかからない。1時には学校に戻れそうだ。よし!昼食はマック(関西はマクドですね・笑)にしよう!こう発想するのではないでしょうか。

しかし、これがロイヤルホストやびっくりドンキーならどうでしょうか。店に入った瞬間に目に飛び込んでくる十人以上の行列……。その時点で、こんなに待つのはいやだな、他をあたろうか……そう考えて、他の店にすることを検討するのではないでしょうか。

さて、話をマクドナルドに戻します。列に並ぶとほどなく自分の順番。このセットでドリンクはホットコーヒー、ポテトはM、というふうにすぐに決まります。数百円を支払い、トレーにすべてが並んだところで席へ。いつもの味、いつもの量で、ちょっとだけおしゃべりに花を咲かすとごちそうさま。カラになったカップやハンバーガーの包み紙をくずかごへ、トレーを所定の場所に片付けて……。さて、お腹もふくらんだし、仕事に戻るか……となります。

しかし、ここで考えてみましょう。もしもこれがロイヤルホストやびっくりドンキーだったら、と。ウェイターさんやウェイトレスさんに「お客様、商品をご自身でお席までお運びください」と言われたら、納得できますか?「コーヒーカップや手ふきのペーパーを自分で所定のくずかごに分別して捨ててからお帰りください」と言われたらどう感じるでしょうか。怒り出さないでしょうか。そうです。ロイヤルホストやびっくりドンキーならば、どれもこれもウェイターさんやウェイトレスさんがしてくれることを、マクドナルドでは私たちは何の疑問も抱かずに自分でやってしまっているのです。

ついでに言うなら、実はマクドナルドでは、椅子を硬い素材でつくり、長く座っていることができないようにして客の回転をよくする、という工夫がなされているそうです。更に言えば、店が込んでくると、客が会話しづらいようにBGMのボリュームを上げるということもマニュアル化されているとも聞きます。

しかし、私たちは一般的に、そんなことにはまったく気づかずに楽しく食事をし、満足してマクドナルドをあとにしているのではないでしょうか。これはいったいどうしたことなのでしょう。

このように、顧客に嫌な思いや疑問を抱かせることなく、本来サービスを提供する側がすべき労働を顧客の側に分担させたり、対立や障壁を避けながら目的を達成したり、徹底した効率化によって全国どこでも均一化したサービスを提供したりする社会を、ジョージ・リッツァは〈マクドナルド化〉と呼びました。

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