教室に笑顔があふれる中村健一の安心感のある学級づくり
『教室に笑顔があふれる中村健一の安心感のある学級づくり』中村健一/黎明書房/2011.08
健ちゃんと初めて逢ったのは去年の1月のことだったと思う。千歳で行われた授業づくりネットワークの北海道大会である。それまで存在は知っていたものの、彼の本を読んだこともなく、実践もよく知らなかった。もっと正直に言うと、ミニネタで有名な、私の中で「お笑い芸人」とカテゴリー化される忌むべき存在だった(笑)。別にミニネタが嫌いなわけではない。講座を受ければ、その場では楽しめる。しかし、あとに何も残らない。真似しようとも思わない。ミニネタを開発しようとも思わない。まあ、そんな存在の一人だったわけである。
またまた正直に言うと、その初めて逢ったときにも、それほど話をすることもなく別れた。確かに3時くらいまでいっしょに呑んでいた記憶はあるが、教育実践の話をするのではなく、馬鹿話だけをして過ごした、そんな記憶がある。ついでに言うと、私は出逢った教師に興味を抱くと、しつこいくらいに教育実践についての考え方を聴き出そうとする。健ちゃんはそういう対象ではなかったわけだ。
だから、この本が健ちゃんから送られてきたあとも、正直に言うと、開きもせずに放っておいた。私は教育実践者の著作をあまり読まない。教育書をたくさん出している私が言うのも変な話だが、教育実践者の著作の多くには「こうしたらこうなった。だからこうしよう。」という報告がなされているだけで、分析がない。報告の常で、過去だけがあって未来がない。それがおもしろくないのだ。
今年の3月、松江で健ちゃんと1年2ヶ月振りに呑んだ。この呑み会で、健ちゃんの教育界に対する分析に興味を抱くことになる。私にとって彼の話は一気に聴くに値する位置に上昇した。「ああ、この男はただのお笑い芸人ではない」と。先月も札幌でも呑んだ。印象は変わらなかった。最近、多賀さんとネタものの共著を出したことも、私の中で健ちゃんのステイタスを上げた(笑)。多賀さんはいま、私が最も興味を抱いている実践家だからだ。
さて、前置きが長くなった。
本書は中村健一という実践家が「自分はミニネタだけではない!」と主張している本に私には思える。「ミニネタだけではない!」というよりも、「ミニネタはこれだけのことをして機能するようになるのだ」という本と言えば良いだろうか。健ちゃんが初めて実践の全体像を志向して書いた本である。私は小学校担任の構えとして、かなり広く目配せの利いた良書だと思っている。
確かに論述は荒い。もっと書き込むべき箇所もたくさんある。しかし、彼の全体像、目配せを利かせたステージの設定の仕方は確かである。読者の皆さんには、ネタやエビソートの部分ではなく(もちろん、そこも読まなければならないのだが)、各節の最初、或いは最後に数行で語られる彼の理屈の部分を抽出しながら読んで欲しいと思う。キーワードは「厳しさ」と「フォロー」である。あくまでこの土台の上に彼の具体的な実践が行われていることがよくわかってくるはずだ。
健ちゃんのネタの追試しようとする若者たちには、ネタものの本だけでなく、この本をじっくりと読んで欲しい。
もう一つ。健ちゃんについて重要な情報がある。彼は山口の人間である。実は、健ちゃんはあの銘酒「獺祭」の蔵元のすぐ近くに住んでいる。健ちゃん、正月には「獺祭」の二割三分が呑みたいのだが……(笑)。
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