「研究集団ことのは」
本書は「研究集団ことのは」にとって、2年振り、12冊目の共著となります。国語科授業の本ということになると10年振りです。
サークルも10年の時を隔てますと、いろいろなことが起こります。メンバーも離脱や加入を繰り返してずいぶんと入れ替わりました。それでも2010年代になったのを機に新たな再スタートということで、本書を企画させていただきました。「研究集団ことのは」は現在、かねてから研究対象としてきた①深い教材研究を通してより高度で系統的な一斉授業を目指すこと、②国語科の授業づくりをプラグマティックにとらえた言語技術教育を目指すこと、③語り手の自己表出と物語との関係を読者論的に読み解く文学教育を目指すことという三つを捨てることなく、第四の研究領域として④教室ファシリテーションにおける系統的な学習活動を開発することを選びました。本書はその第一弾ということになります。
思えば、「研究集団ことのは」はファシリテーションのごとき多様性を内部に触発させようとし続けてきたサークルです。
日文協の文学教育・法則化運動・国語学・認知心理学というそれぞれ専門領域の異なる国語教師が4人集まって、異質な者が集って互いが互いから学び合おうというのが結成の同期でした。その後も古典文学を専攻する者、漢文学を専攻する者、教育社会学を専攻する者、授業づくりネットワークの中心的な活動家、北海道の教室ディベートの第一人者などなど、常に異質な者をメンバーに加えてきました。長くいっしょに研究活動をしていると、当初は異質であった者たちもだんだんと発想が近づいてきます。井の中の蛙化していきます。私たちが最も怖れるのは、学び合う異質な者同士が響き合いすぎてしまうと、次第に似た者同士になってしまい、しかもそれを自分たちが自覚できなくなってしまうのだということでした。私たちはだれよりそのことを熟知している集団であると自負しています。
ファシリテーションを私たちなりにごくごく簡単に定義づければ、「異質で多様な者たちが集まって交流することによって、互いに触発し合い、最終的には学びのブレイクスルーが起こる、その過程を促進すること」とでもなりましょうか。私たちはずーっとそれを心から求め、常に学びのブレイクスルーに飢え続けている、そういうサークルだという自己認識をもっています。思えば、私たちはファシリテーションと出逢うべくして出逢ったのではないかとさえ思われるほどです。
こうした活動を長く続けてきたおかげで、いまや「研究集団ことのは」には、いわば「ピン芸人」とでも言うべき、一人で独自の提案をしているメンバーがたくさんいる、そんな集団になりました。指導主事になった者も一人や二人ではありません。若くして管理職になった者も一人や二人ではありません。おそらく我々が常に異質な者を取り込んできたことによつて、広い視野からものを見たり、多様な視点から物事を分析したり、異なる領域や分野の理論・実践を融合したりということを、ごく自然の日常としているせいなのだと思います。
「研究集団ことのは」はこれからもまだまだ成長し続けるでしょう。本書もまだまだ一つの過程に過ぎません。その自覚を腹の底から抱いている……実はそれこそが我々の強みなのだと感じています。
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