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6月24日(日)

1.一斉授業において大切なのは、子どもたち一人ひとりにいかに思考させるか、活動させるかということです。何か一つ発問をしたら、必ず自分の意見を短くノートに書かせる、三点以上ノートに箇条書きさせるなど、ノート作業を課すことが大切です。自分の意見をもつからこそ、子どもたちはその自分の意見が正しいのか、妥当なのかという意識を抱いて、その後の授業の展開に集中していくのです。

2.このノート作業を課したときに必ず行うのが机間巡視・机間指導ということになります。教師が一時間の中で何回机間指導をすることになるかということは、一時間の授業において子どもたちに何回思考させたかを表すと言って過言ではありません。

3.机間巡視コースというものは、個別指導を頻繁に行わなければならない子を最初と最後に見られるコースをつくるのが常道です。最初に「やり方わかる?」などと訊いて、最後に「一つくらいは書けたかい?」などと声をかけられる座席ですね。

4.私の場合、課題を与えて箇条書きをさせたあと、四人グループの話し合いをさせることが多いのですが、ノート上では、自分で考えたものについては鉛筆で、他人の意見を聞いて「なるほどな」と思って箇条書きに書き加える場合には赤ペンで書く、というルールを敷いています。

5. 「この主人公はこの場面で戸惑っています。戸惑っていることがわかる箇所を本文から書き抜いて箇条書きにします。五つ以上は見つけてくださいね。」
などと言ってノート作業をさせた後、四人グループでそれぞれが上げた理由を交流するわけですね。この際、机間巡視で各グループをまわりながら、どの程度、赤ペンによる記述が増えているかを確認するわけです。

6.赤が多ければこの色分け指導が定着していること、他人の意見から子どもたちが多くのことを学んでいることがわかります。赤が少なければ、色分け指導が定着していないか、個人で課題が解決できるほどに課題が簡単であった可能性があることを表しています。

7.子どもたちにアイディアを出すタイプのノート作業を課すことがあります。「~の理由として考えられることは何ですか?五つ以上挙げてみましょう」とか「~をよりよくするにはどんなアイディアがあるでしょうか。一人八つ以上挙げてみましょう。ちょっとくだらないな、こんなんでいいのか、と思うようなものも挙げてしまうのがコツです」とかいう場合です。私はこうした個人作業のあとに、グループで〈ブレイン・ストーミング〉するという授業形態をよくとります。

8.こうしたとき、書けない子というのは、こだわりをもってしまうがために、最初の一つが書けないということが多いのです。この場合、机間巡視をしながら、書けている子の内容からわざと馬鹿げたもの、くだらないもの、発送の突飛なものを取り上げます。「おお、敏夫は○○○って書いてる。おもしろいなあ」「ははは…亜希子は○○○だって。この発想はオレにはない」などとつぶやきながら、書けない子にモデルを示すわけです。こうしたモデルが示されることによって、書けなかった子が書けるようになっていくのです。

9.子どもたちの異なる反応を取り上げたい場合があります。要するに、子どもたちの反応を教材として、授業を進めたいという場合ですね。例えば、国語科で指示語の問題に取り組ませるとしましょう。「『それ』の指し示す内容を二十五字以内で書きなさい」というような問題です。まずは問題に一斉に取り組ませます。三分程度がたったあたりで机間巡視を始めます。

10.たいていの場合、こうした問題の反応は、誤答例も含めて八~十二種類くらいに分かれます。私の場合、それを見て回りながら、異なった反応を示している八人程度の子の肩を軽く叩くことにしています。その後、七~八割り程度の子ができたのを見計らって、「それじゃあ、先生に肩を叩かれた人、黒板に出て答えを書いてください。みんなの勉強になるように、違った答えを書いている人を指名していますから、もしも間違いに気づいたとしても書き換えないで、ノートに書いたとおりに書いてくださいね。みんなで成長するための板書ですから」と告げます。

11.こんなふうに「みんなで学習するのだ」という意識をもたせながら進めるのがコツです。

12.「~はなぜですか?『……だから』という一文でノートに書いてください」  教師が発問をします。すべての発問において、まずはノートに書かせます。ノートに書かせている1分間程度は常に机間巡視です。問題はその間、教師が何を見て何を考えるのかです。

13.この授業の中で無数にある机間巡視において、教師のやるべきことはたった一つです。それは子どもたちの反応を把握して、指名計画を立てることです。だれがどんな反応をしているのか、最初にだれを指名して、だれの意見をかけ合わせたら子どもたちの思考が深まっていくか、だれとだれを対立させたら授業が盛り上がるか、こういうことに頭をフル回転させるのです。

14.指名計画を立てるうえでは、①正答に遠い意見から近い意見へ指名していく、②対立する意見を最初に言わせて対立構図を敷いてしまう、③子どもたちの思考を活性化するような意見を後半の指名にとっておく、④ふだん活躍しない子が正答を書いている場合には必ず最後に指名して、大きく褒める機会とする、という四つくらいを意識しておけば良いでしょう。

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16.これまで机間巡視、机間指導をするうえで教師が心得ておくべき幾つかの機能について述べてきましたが、こうした機能を発揮させるためには、子どもたちの反応がすべて①短く書かれていること、②構造的に書かれていることという二つの前提が必要になります。

17.机間指導をしやすくするノート指導の在り方として、最も大切なのは「短く書かせる」ということです。「○か×かで書いてください」「A・B・Cで書いてください」「+・0・-で書いてください」「名詞一語で書いてください」「一文で書いてください」「A~Cから選んで、その下に理由を『……だから』の形で一文で書いてください」などなど、短く書くこと、形式を整えて書くことを徹底するのです。机間指導ではこうした指示が命だと言っても良いくらいです。

18.こうした指示が曖昧だと、机間指導で反応を取り上げようとしても指名計画を立てようとしても、子どもたちの反応を読むことに時間をとられてしまって機能しなくなります。

19.長いものを書かせる場合、複数の要素を書かせる場合には、必ず箇条書きさせて〈数〉を見れば良い状態に落とし込むことが必要です。多くの子どもたちがたくさん書けるということは、その課題が子どもたちに機能していることを表しています。反面、個数を書けない子が多い場合には、その課題の難易度に問題がある場合が多いのです。

20.また、それぞれの箇条書きに〈質〉の違いがある場合には、頭に「A・B・C」とか「○・△・□」などを書かせて、子どもたちに分類意識をもたせるとともに、教師がひと目見てわかる状態にする工夫が必要になります。

21.更には、自分で考えたものと他人から学んだもの、他人との交流の中で更に思いついたものなどを色分けさせることも重要です。私の場合は、前にも述べたように、自分で思いついたものは鉛筆で、他人から学んだものは赤ペンで書くというルールを採用していますが、これは教師が見やすいということだけでなく、子どもたちにとっても他者との交流活動の効果を実感することになります。〈見える化〉は教師・子ども双方に有益なのです。

22.2000年前後の学級崩壊論議以降、教師の問題意識の在処が授業づくりから学級づくりへと急激にシフトしたのを感じています。悪いことではありませんが、教育理念同様、振り子が振れすぎているのを感じます。80~90年代の授業技術開発の成果が伝承されなくなってきていることに危機感を抱きます。

23.机間指導はいつでもどこでも必要なのかと問われれば、「そんなことはない」と答えなければなりません。机間指導はあくまで何かを新しいことを教える、何かを教師の意図するフレームの中で考えさせる、そうした場合に有効な手法に過ぎません。

24.授業においては、教えるべきことを教えたうえで、答えのない課題を与えて大胆に子どもたち同士の交流に任せてしまうということがあります。また、用意周到にフレームを固めたうえで、そのフレームの中で自由に発想することを求めることもあります。このような場合には、教師が机間をまわることがかえって監視されているような雰囲気を醸してしまい、マイナスに機能する場合があるのです。ここは子どもたちに任せる、あとで発表してもらえば良い、そうしたファシリテーション系の交流活動においては気をつけたいことです。

25.ファシリテーターは交流活動が始まったら存在を消す、これが原則です。詳細は拙著『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』(学事出版)を御参照いただければ幸いです。

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