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6月30日(土)

1.授業力を高めるには三つの方向性があります。一つ目に自分でコツコツと取り組むこと、二つ目に先達から学ぶこと、三つ目に仲間とともに議論を重ね、生み出すことです。この三つの場を意図的につくる……それが授業力向上への近道です。

2.私たちは研修をするために、実はとても恵まれた環境にいます。

3.自分の授業力を向上させようと思えば、毎日、ちゃんと自分の授業を受けてくれる子どもたちがいます。子ども理解を図ろうと思えば、いっしょに話し合える保護者がいます。

4.同業者の先達がこれほどまでに様々な提案を書籍として出版している業界も珍しいと言えますし、大小様々な研修会がこれほどの頻度で行われている業種も珍しいのではないでしょうか。しかも、そうした研修会への参加が仕事として認められることさえあります。

5.同業者とともに研究会を開催しよう、研究サークルをつくろうと思えば、同業者のほとんどが勤務時間や休日などが一致しています。仲間を集めやすい環境にもあるのです。

6.しかし、こういう恵まれた環境を活かしている教師は少ない、というのが現状です。多くの教師は日常の仕事の中に埋没し、恵まれているどころか、この仕事は学びの場が少ない、一人でおろおろするばかりだとさえ感じています。

7.一歩だけ、外に出てみましょう。研究会に参加したり、学生時代の仲間や同僚とともにサークルをつくってりしてみましょう。その一歩を踏み出せば、校内研修がどれだけ充実した場であるのか、同僚がどれだけいろいろな学びを提供してくれるのかがわかるはずです。

8.「つながること」が大流行しています。時代のキーワードにもなっている感さえあります。それと同時に、学校教育においても、「つなげる」ための教育実践・授業実践が数多く発表されるようになりました。

9.しかし、「つながる」とはどういうことなのでしょうか。そして、「つなげる」とはいったい何をどうすることなのでしょうか。具体的に考えてみるといまひとつイメージがつかめないものです。

10.自分が〈つながった〉経験をもつ者は、実感的に「ああ、つながった」という高揚感を抱きます。その高揚感によって直感的に〈つながった〉ことを意識できます。それに喜びを感じると同時に、その意義も実感します。

11.しかし、どうすれば〈つながる〉のか、どうすれば〈つなげる〉ことができるのか、「ワールド・カフェ」や「ホワイトボード・ミーティング」といったシステムは知っているものの、また、そうした実践も数多く行われているものの、日常実践とは切り離されている……そんな例が数多く見られるのが現実です。

12.私は「教室ファシリテーション・セミナー」と題して、全国の大都市でセミナーを開催しています。「ワールド・カフェ」(以下「WC」)や「オープン・スペース・テクノロジー」(以下「OST」)などをどのように教室に持ち込むのか、具体的に提案してまわっています。

13.そこで多く質問されるのは、「WCもOSTもよくわかりました。でも、これらは学級経営がうまくいっている学級でのみ機能するものですよね」とか、「WCもOSTもわかった。でも、いきなり教室に導入するのは難しいように思う。ここまでにどのようなステップがあるのか」とかいうものです。

14.まだまだファシリテーションというものが、①WCやOSTといった〈システム〉だと捉えられていること、②日常実践とはかけ離れたものだと捉えられていること、の証左です。そして何より、③多くの先生の日常実践が子どもたちを〈つなげる〉という意識が希薄なままに行われているのが現実だという何よりの証拠でもあります。

15.ファシリテーションは、決してWCやOSTといったダイナミックな〈システム〉を指しているのではありません。「ファシリテイト」とは「促進する」という意味です。議論や交流、会話を「促進する」こと、それがファシリテーションなのであって、その顕著な例、顕著なシステムとしてWCやOSTがあるだけなのです。

16.従って、協同的な音読活動を促進する手法があるとすれば、それはもう充分にファシリテーションです。話し合いを促して協同的なアクションプランを構築するための手法、それも紛れもないファシリテーションなのです。

17.私たち「研究集団ことのは」は、「教室ファシリテーション」という名を用いて、ファシリテーションの発想を教室に持ち込むことを提案していますが、その定義は「協同的な学びを促進することを意識して行われ、子どもたちを〈つなげる〉ことに寄与する教育実践」くらいの非常に緩いものに過ぎません。

18.「つながること」「つなげること」は日常実践でこそ大きく意識すべきである─それが私たちの基本的な発想なのです。

19.堀裕嗣編/研究集団ことのは著『教室ファシリテーションへのステップ・1 /必ず成功する国語学習 魔法の「音読ネタ」50選』(明治図書)。完成間近。今日は原稿をつなないで編集をしています。久し振りのサークル共著にわくわく感があります。結局、自分は協同作業が好きなのだなあと実感します。

20.例えば、国語科の代表的な学習活動に「音読」があります。音読というと教室で一人一人が練習する光景が思い浮かびます。せいぜい隣の人同士で「マル読み」をさせているとか、グループで古文の「暗唱」をし合うとか、その程度のことしか行われていないのが現実です。

21.ダイナミックな協同学習として「群読」の実践がありますが、これも「群読」の価値を理解し、「群読」の楽しさを子どもたちに体験させたいと強く願う教師の実践がまれに見られる程度……。ごくごく一部の教師の取り組みに過ぎません。

22.その結果、音読を得意とする子どもは先生の助言を参考にしながら、自分でどんどん工夫してどんどん上手くなっていきますが、読み間違えたり、つっかえたり、たどたどしい読み方をする子はいつまでたってもたどたどしいまま……そんな現実があります。音読が文章を読む力を身につけていくうえで重要であるとだれもが知っているのに、その授業の多くは旧態依然です。

23.しかし、音読は協同学習的な発想で授業づくりをしようとする場合にも、実はかなり可能性をもっている学習事項です。みんなで声を出し合うとか、みんなで声を揃えて読むとか、みんなでテンポを合わせるとか、みんなで呼吸を合わせるとか、みんなで間を合わせるとか、みんなで読みの工夫を考えるとか、みんなで音読しながら演じてみるとか、思いつくままに挙げてみても、子どもたちがみんなで行うことに価値を見出すことができる、そんな活動がいくらでも浮かんできます。

24.逆に、みんなでテンポをずらしてみるとか、みんなで間をずらしてみるとか、違いを際立たせることによって学習効果を生む、そんな活動も想定できそうです。グループで互いに音読を披露し合って批評し合う、なんていう学習も成立します。

25.音読活動を個人の中に封印しておかないで、みんなで交流しながらみんなで高みに向かっていく……そういう学習にできないものでしょうか。それが基本的なコンセプトです。

26.だれもがアンテナを高く張って、多くの有益な情報を得たいという思いを抱いています。しかし、いくら意欲をもっていたとしても、「知識がないと見えないこと」が多いのです。「アンテナ力」を考えるとき、まず何はともあれ、「自分には見えていないものがあるに違いない」と謙虚な構えをもつことです。

27.もちろん、アンテナ力の基本は意欲です。高く広くアンテナを張っている方が、低く狭く小さなアンテナの人よりも感度は高いに違いありません。しかし、いくら情報がアンテナに引っかかってきても、その情報を有益な情報として捉えられないのでは何の意味もありません。

28.明日、学校に行ったら、自分がいくつの「?」を感じたか、数えてみましょう。そしてその「?」を、他人に向けるだけでなく自分にも向けてみたか、自分を振り返ってみたか、考えてみましょう。

29.明日見つけた自分への「?」は、すべてノートにメモしておきましょう。そして明日の夜、寝る前にちょっとだけ、そのいくつかの「?」について思いを馳せてみましょう。

30.今日はちょっと事情があって、まとまった原稿の書けない一日でした。来週から研究会の嵐になりますから、今日の遅れを取り戻すのは辛そうですが、まあ、なんとかなると信じて寝ることにします。明日は明日の風が吹くでしょう。

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