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5月27日(日)

1.授業が幾つかのユニットに分かれている─二一世紀に入って、そうした授業の在り方が数多くの現場教師から提案されるようになりました。子どもたちか45~50分の一単位の授業時間に対して、集中力を持続させるのが難しくなってきているという現状認識のもと、現代的な子どもたちに対応する方法として現場教師が編み出した授業スタイルです。一般に〈ユニット型授業〉と呼ばれています。

2.〈ユニット型授業〉は、相互に直接的には関係していない授業パーツを幾つか組み合わせる〈オムニバス型授業〉と、一つの指導内容を学習活動や思考形態の差を意図的につけることによってユニットを形成していく〈ユニットプログラム型授業〉とに分かれます。

3.例えば国語であれば、前者は①漢字5分→②発声練習3分→③ペア・デイスカッション7分→④教科書の音読10分→⑤グループディスカッション10分→⑥作文技術5分→作文10分のように、一時間の授業パーツがそれぞれ独立しているような授業形態です。毎時間、同様の授業形態をとることによって、モジュール学習のように一定の期間で学力を形成していくことを目指します。

4.これに対して後者は、一単位時間の課題は基本的には一つで従来の授業の在り方に近いのですが、学習活動が細分化されているというタイプの授業です。例えば、①音読5分→課題設定5分→課題解決方法の解説10分→個人解決5分→グループディスカッション10分→シェアリング5分→課題解決作文10分のような授業形態です。学習活動としては一つ一つのユニットに分かれているのですが、一単位時間の指導内容としては一貫性がある、そういう授業形態です。

5.いずれを採用するかはそれぞれの教師の教育観や授業観、児童生徒観によるというのが現実ですが、このような〈ユニット型授業〉の意識をもちないことには、現代の子どもたちには対応しづらいということだけは確かです。

6.私は後者を採用しているのですが、こうした一貫性のある指導内容を学習活動として細分化しながら、一時間全体としては子どもの思考過程を広げたり深めたりしていくことを目指す、こうした授業のつくり方を〈ユニットプラグラムの原理〉と呼んでいます。

7.『一斉授業10の原理・100の原則』の第1章「ゴールイメージの原理」「フレームワークの原理」「メインターゲットの原理」「ユニットプラグラムの原理」の四つが書き上がりました。16頁分、第1章の4割を書き上げたことになります。この紙幅で情報量の多さをどうおさめるかに苦労しています。

8.ここ1ヶ月間、瀬木貴将を聴き続けている。原稿がはかどる。とてもリラックスできるのが良い効果を上げているのだろうと思う。なんとなく、幾つかの執筆を同時進行で進めていく原稿の書き方にもこなれてきた感じ。別々のテーマに同時に取り組んでいると相乗効果も実感できる。思わぬ副産物である。

9.古くから教師の指導言の王道は〈発問〉だと言われてきました。良い〈発問〉をつくることが教材研究の王道であり、良い〈発問〉さえつくれば授業は自ずから機能する、そう主張されてきたわけです。世に〈発問研究〉の本は溢れていますし、有名な実践家の優れた〈発問〉もずいぶんと追試されてきました。しかし、私はこの発想が基本的に間違っていると思います。

10.教師の指導言には〈発問〉と〈指示〉と〈説明〉の三つがあります(『授業づくり上達法』大西忠治・民衆社・一九八七年四月)。皆さんはこの三つのうち、教師の指導言として、どれが最も大切だと感じるでしょうか。

11.〈説明〉〈指示〉〈発問〉は次のように捉えるとわかりやすいと思います。【説明】授業のフレームや、〈指示〉〈発問〉の前提をつくる指導言/ 【指示】子どもたちの行動に働きかける指導言/【発問】子どもたちの思考に働きかける指導言

12.つまり、〈説明〉は、授業自体の〈フレーム〉を規定したり、〈発問〉や〈指示〉の前提となったりする指導言であり、〈説明〉なくしては〈発問〉も〈指示〉どころか、授業の〈フレームワーク〉自体が揺れてしまう、重要な〈ブリーフィング〉なのです。

13.私はこうした〈説明〉〈指示〉〈発問〉といった指導言の機能性を操作することを〈ブリーフィング・マネジメント〉と呼んでいます。〈ブリーフィング〉とは「これから発生する事象について、事前に意識合わせをすること」を指しますが、この〈意識の共有化〉〈前提の共通理解〉をどのようにつくっていくかが一斉授業ではとても大切になります。これを意識しない授業、この意識の甘い授業は、まず間違いなく「授業がにごる」という状態に陥ります。

14.一斉授業の在り方を貫く五つの原理の執筆を完了。「ゴール・イメージの原理」「フレームワークの原理」「メイン・ターゲットの原理」「ユニット・プラグラムの原理」「ブリーフィング・マネジメントの原理」の五つです。これから一単位時間をどう構成していくかという五つの原理の執筆を開始します。「インストラクションの原理」「スモール・ステップの原理」「グループワークの原理」「パーソナライズの原理」「ポートフォリオの原理」の五つです。早く完成させて、イクタケマコトさんに漫画を描いてもらいましょう。

15.いま数えてみると『一斉授業10の原理・100の原則』が僕の単著の10冊目になることがわかりました。順調にいけば来年度の前半には20冊に到達することが決定していて、その意味では通過点に過ぎませんが、それでも10冊目というのは記念すべき本に感じます。妥協しないで書こうと思いました。

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