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2012年2月

東京紀行

25日(土)。前日、朝起きられるかどうかと心配しながら就寝したのだが、なんとか5時に目覚めて、眠い目をこすりながら6時に出発。家の近くのローソンで煙草とホットのブラック珈琲を2本買ってがぶがぶ飲みながら運転。6:50に新千歳空港。チェックインして一服。編集者をはじめ知り合いの女性陣にロイズのチョコを買って喫煙所でPCに向かう。8:00に離陸。

まずは「羊をめぐる冒険」の続きを読み始める。シートベルト着用ランプが消えると同時にPCを立ち上げて講座の準備。音が出せないので苦労する。こういうときのためにヘッドフォンを買った方がいいかも……。シートベルト着用ランプがつくとともに「羊をめぐる冒険」。

羽田に降り立つと後ろから「お疲れ様です」の声。えっ?と思って振り向くとなんとネコ塾の丸ちゃん。東京でワークショップがあるとのことで上京したらしい。京急で東銀座、日比谷線で銀座、丸ノ内線で四谷、交番で上智大学の場所を訊いてなんとか到着。廊下には人見さんが一人でぽつり。室内は桃崎講座の真っ最中。小窓からちょっと覗いてみると超満員。朝から何も食べていなかったので、人見さんといっしょに昼食をとりに行く。看板に「煙草吸えます」という文字を見つけて、その店に入る。850円の日替わりランチ。学生用なのか、すごいボリューム……。

会場前方に出入り口がある構造の部屋。講座中に出入りすることがはばかられるので、廊下で仕事を始める。講座準備の続き。時々会場内から大爆笑の声が聞こえたり拍手が鳴り響いたり。なかなか楽しそう。藤原くんが到着したので、明治図書の及川さんといっしょに打ち合わせ。企画の具体化を進める。その後、藤原くんと部屋が意外と狭かったので、次の日の教室ファシリをどのようにレイアウトするかを打ち合わせ。

14:40から僕の講座。いつものように時間切れの尻切れトンボ。その後、Q&A。まあ、僕らしい講座。一度、東京で一人で時間を気にせず一日中しゃべってみるかな……なんて、考えてもみるが、それではあまりにも自分が疲れてしまうのでちょっと現実的でないかなあ……なんて、あれこれ考える。それにしても参加者の熱心さと、なんというか肌で感じる誠実さに圧倒される。ああ、もっとちゃんと、誠実な講座を用意すればよかったと……。若い人が多くて、楽しさを求めている客層だと勘違いしていて臨んだのが失敗。情報量を多くして、一つ一つ確実に伝えていく講座が求められていたものだなあ、と感じた。

講座では、僕が1991年に新卒で担任し、結局3年間担任し続けることになった碓井敏夫が座っていた。しかも、なんと一番前に座っている。銀行マンのくせに、教師の中にまじって何食わぬ顔で参加している。たいしたヤツである。講座が始まって数分で入り口から小熊亜希子が来場。これまた新卒から3年間、僕が担任した女子生徒である。二人とも目に入れても痛くない教え子である。実はこのブログでたまに紹介するすすきのの居酒屋「いづ屋」のママもこの学級の生徒。要するに、碓井敏夫も小熊亜希子も田口陽子も、みんな僕が新卒で担任した1年2組の生徒たちなのである。たぶん、学級集団としてではなく、生徒たち一人一人を心の底からあんなに愛したことはその後ない。僕が教師としてではなく、堀裕嗣という単なる24歳の若者として生徒たちの前に立っていた1年間の教え子たちである。次の年には、僕は教師としての自分を大きく意識し始めていた。そんなことを想い出す。

研究会終了後、人見さんと佐瀬さん、そして数人の参加者に手伝ってもらいながら、次の日の会場づくり。机をアイランドに並べ替え、模造紙を置き、養生テープで留める。プロッキーのセットと付箋紙を置く。プロジェクタの位置を決め、不要な椅子数十個をすぐに廊下に出せるように入り口近くに移動しておく。これで飲みに行ける……とにんまり。

17:30から近くの韓国料理店で飲み会。本当は参加者に御礼を言ってまわらなければならない立場なのだが、ほとんど教え子といっしょに昔話に花を咲かす。たぶんこの二人と酒を酌み交わすのは10年振りくらいではないか。その後、二次会の沖縄料理の店では仲田さん、今井くん、準くんとともに「学び合い」論議。教え子二人もその議論に耳を傾けていた。更に宿のある新宿に移動して、仲田さんと二人で飲む。自分の話ではないから詳しくは書けないけれど、新しい動きが始まるらしい。とても良いこと。この店では隣にお相撲さんが3人で飲んでいて、ずいぶんと盛り上がっていた。お相撲さんってこんなにおしゃべりなんだな、と思いながら眺めていた。2時過ぎに就寝。

7:15起床。9:15に四谷に着けばいいのだからと8:50にホテルをチェックアウト。ところが東京マラソンのために靖国通りを渡らせてもらえない。つまり、丸ノ内線に乗れない。さあ、どうする?逆方向のJR駅まで歩くか。この大荷物ではちょっと遠いぞ。タクシーか?ところが、これまた東京マラソンのせいでまったく走ってない。焦る。こりゃ迷っていても仕方ない、と取り敢えずJR駅へと歩き始める。途中で空車を止める。「四谷に行きたいんですけど、9:30までに着ける見込みはありますか?」と訊く。「今回の通行止めは例年異常に通行止め箇所が多くて予想がつきません。でも、頑張りますからお乗り下さい」とのこと。東京の運転手は道を知らないからあぶないとはよく言われるが、60を過ぎた誠実そうな大ベテランに見える。「タクシーに乗ってどのくらいですか?」と訊くと、「38年になります」とのこと。よし、乗ろう、と決意。上智大学までうまく通行止めを回避しながら十数分で到着。判断に誤りなし。

会場について、受付名簿をプリントアウトしてくるのを忘れたことに気づく。大チョンボ。おまけに昨日はあった延長コードがない。そうか、あれは中学校・学級経営セミナーの事務局の私物だったのだと気づく。そこから大わらわ。なんとか受付をし、なんとか講座を進め、軌道に乗ったのはワールド・カフェのラウンド1が始まってから。ラウンド1の間にプレゼンのスクリーンを移動し、プロジェクタを移動し、PCとスピーカを電源から届く位置に移動。うん。なんとかこれで今日一日、すべてのツールが機能する……そんな体制ができあがる。

やっと参加者の顔をちゃんと見られる状態になる。柳下さん、矢崎さん、吉見夫婦はわかるとして、渡邉光輝くん、白井さん、石川くん、濱くん、本間さん、本田さん、あきのりさん、そして山本さんなどなど、ふだんTWITTERやFACEBOOKでやりとりしている人たちがいっぱいいるはずなのだが、アイコンの写真しか知らない僕には誰が誰なのやらまったくわからない。そのうちに東海大学札幌の川崎先生がいらっしゃることに気づく。なんでいるんだろう?そんな感じのことをずーっと考えながら講座を進める。これまた、藤原くんも含めて、3つの講座がどれもこれも尻切れトンボ。なんせハーベストが一切できない始末。こりゃファシリテーションのセミナーとしては致命的なこと。次回から時間のことをよく計算して企画を練り直さなくちゃダメだなと反省。

講座修了後、何人かの方々と挨拶を交わし、本間さん以外の方々とは挨拶ができた感じ。でも、徹底してプログラムが詰め込まれた日程で余裕がなく、誰一人としてちゃんと話せた人はいなかった。先月の熊本以来、1ヶ月振りの神山くん、一昨年夏の札幌以来1年半振りの山田将由くんなど、嬉しい再会も多々あった一日だった。人見さんや石田さんと早坂さんは彼らが東京や名古屋、仙台在住とは思えないほどに頻繁に会っているので省略。

その後、学事出版の戸田さんと企画打ち合わせ。千歳空港除雪のため、乗るはずの飛行機が羽田に着かず、3時間遅れ。「羊をめぐる冒険」を読みながらひたすら飛行機の到着を待つ。飛行機に乗って「羊を巡る冒険」を読み始めたはずなのだが、気がつくと本は足下に落ちていて、「あと10分で千歳に着きます」とのアナウンス。結局、自宅に着いたのは23時過ぎ。くたくた。自宅に着いたという報告だけをTWITTERにあげ、バタンキュー。zzz……。

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第18回中学校・学級経営セミナーin札幌

第18回中学校・学級経営セミナーin札幌
生徒指導・10の原理
あなたが生徒たちとしっくりいかない本当の理由

2012年4月8日(日)
札幌市コンベンションセンター/定員30名/参加費:3000円

講師
堀 裕嗣/山下 幸/他・中学校若手教師

「生徒指導・10の原理」とは……。1.スクールカーストの原理/2.サイレント・マジョリティの原理/ 3.ヒドゥン・カリキュラムの原理/4.ブロークン・ウィンドウズの原理/5.イニシアティヴの原理/6.インクルージョンの原理/7.マクドナルド化の原理/8.パッチング・ケアの原理/9.FMCチームワークの原理/10.自己キャラクターの原理 この10原理のことです。

【日程】

09:00~09:10 受付/09:10~09:15 開会セレモニー

09:15~10:45 講座1/堀 裕嗣
「生徒指導10の原理・生徒との関係づくりは年度当初で決まる」
「生徒指導・10の原理」をわかりやすく、楽しくレクチャー。裏話もいっぱい飛び出る必聴の講座。

10:45~12:30  講座2/山下 幸
「保護者対応・5つの極意」
保護者を4つに分類。それぞれの対応法の極意をレクチャーします。

13:30~15:30 講座3/堀裕嗣・山下幸+若手中学教師
「Q&Aで学ぶ生徒指導の具体的方策」
若手教師に学級開きに際して不安に感じていることを挙げてもらい、
堀先生と山下先生が応えていきます。参加者の質問にも時間をたっぷりとってお答えします。

16:45~16:50 閉会セレモニー

〈お申し込み先〉
こくちーずhttp://kokucheese.com/event/index/26932/でお申し込みいただくか、
下記までお申し込みください。
山下 幸(やました・みゆき) E-mail : miyuyama1970@yahoo.co.jp
氏名・勤務校・連絡先を必ずお書きください。

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第16回教室実践力研究会in札幌

さあ、授業開き!
子どもを引きつける
5教科授業ネタ25連発
国語!算数!理科!社会!音楽!

2012年4月7日(土)

札幌市白石区民センター3F集会室A

定員40名

参加費:3000円

9:00~9:10 受付
9:10~9:15 開会セレモニー

9:15~10:00 講座1/堀 裕嗣
授業開きで子どもを引きつける原理・原則
10:00~10:45 講座2/斎藤佳太
年度当初!子どもを引きつける音楽ネタ・5連発!
11:00~11:45 講座3/太田充紀
年度当初!子どもを引きつける国語ネタ・5連発!
11:45~12:30 講座4/南山潤司
年度当初!子どもを引きつける算数ネタ・5連発!

12:30~13:30 昼食・休憩

13:30~14:15 講座5/高橋裕章
年度当初!子どもを引きつける社会ネタ・5連発!
14:15~15:15 講座6/大谷和明
年度当初!子どもを引きつける理科ネタ・5連発!
15:30~16:45 講座7/ファシリテーター:山下 幸
ファシリテーション・ネタ開発の極意

16:45~16:50 閉会セレモニー

【お申し込み方法】
以下の5点をお書きの上,Eメールにて下記まで御連絡ください。
1.イベント名・日時/2.氏名/3.勤務校/4.メールアドレス
山下 幸(やました・みゆき) E-mail : miyuyama1970@yahoo.co.jp

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ご挨拶

昨日の名寄学習会をもちまして「教師力BRUSH-UPセミナー」の今年度全日程が終了いたしました。今年度の終了とともに、私堀も「教師力BRUSH-UPセミナー」代表を辞すこととなりました。6年間やって若手がそだちって体制も整いましたし、権力は長くもつと腐敗するというのが歴史の教えるところですので退くことにしました。院政も敷きません。口も出しません。もちろん新体制人事にも一切口出ししません。ついでにいえば、今後はお金も出しませんし、立て替えもしません(笑)。

これまでお世話になった皆様、ありがとうございました。今後とも、新体制の「教師力BRUSH-UPセミナー」をよろしくお願い申し上げます。

今後は「研究集団ことのは」の活動を軸に、かなり小規模な私的な活動に専念したいと考えております。

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第7回中学校学級づくりセミナーin東京

第7回中学校学級づくりセミナーin東京

10月に行われたセミナーが好評のため、再セミナー決定です。

今話題のお二人、『学級経営10の原理・100の原則』『生徒指導10の原理・100の原則』の堀裕嗣氏と、『中学校編 とっておきの道徳授業』シリーズ編著者をお呼びしての講座です。

「学級づくりに役立つ情報がほしい」「気になるあの子にどう対応すれば…」「あの保護者どうも苦手で…」など様々な学級づくりに対するニーズに応えるセミナーです。

講 師:田中利幸/「道徳のチカラ」中学代表/合田淳郎/佐瀬順一/堀裕嗣

会 場:あんさんぶる荻窪(予定)

参加費:3000円

【日程】

9:15~ 9:35 受付

9:40~10:20 第1講座 田中利幸「同じ学年を組みたいと言われる教師の条件」

10:30~12:00 第2講座 とっておきの道徳授業編著者「道徳授業のチカラ・生徒指導のチカラ」

昼食休憩

13:00~13:40 第3講座 合田淳郎「簡単に創ろう!学級通心~スキルで始まる~」

13:50~14:30 第4講座 佐瀬順一「学級経営を成功させる教師の哲学」

14:40~16:10 第5講座 堀 裕嗣「学級開き・5つの視点」

16:10~16:40 講師に質問!Q&Aタイム

申し込みはこちらです。

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第10回学級づくりプログレッシヴセミナーin札幌

学年末評価の技術&年度末に語る担任の言葉』

年度末間近。第10回のセミナーは、具体的な評価についての講座と、
なかなか聞けない担任が教室で話す最後の言葉を再現します。
ズバリこの1年をどう評価したのかが担任の言葉に表れます。

案内チラシはこちらから。
http://tinyurl.com/85dgpx9

お申し込みはこちらから。

2012年2月18日(土)

札幌市白石区民センター

9:00~9:10 受付

9:10~9:15 開会セレモニー

9:15~10:00
「子供たちを見取る~その考えと具体的な手立て」
          北広島市立大曲東小学校山田洋一

10:10~11:00
「ワーク:所見の書き方」
          札幌市立北白石中学校堀裕嗣

11:10~12:30
「必見!実物紹介!!私の所見」20分×4
          札幌市立もみじの丘小学校増澤友志
          とうや町立洞爺小学校水戸ちひろ
          札幌市立厚別通小学校大野睦仁
          札幌市立藻岩北小学校山口淳一

12:30~13:30 昼食休憩

13:30~14:20
「再現!最後の教室で何を語るか?」10分×5
          札幌市立もみじの丘小学校増澤友志(低学年)
          とうや町立洞爺小学校水戸ちひろ(中学年)
          北広島市立大曲東小学校山田洋一(中学年)
          札幌市立厚別通小学校大野睦仁(高学年)
          札幌市立藻岩北小学校山口淳一(高学年)

14:30~15:00
再現のまとめ「子供に語れる教師とは?自分自身とのクラスを評価する」
          札幌市立藻岩小学校高橋裕章

15:10~16:40
「学びのシェアリング」ファシリテーター
          札幌市立幌東中学校山下幸
          指定討論者
札幌市立南小学校南山潤司/高橋裕章/山田洋一/山口潤一/堀裕嗣/大野睦仁

16:40~16:45 閉会セレモニー

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明後日の思想

私には、効果的な、ある発想法があります。それは私が「明後日(あさつて)の思想」と呼んでいるものです。今日でも明日でもない、常に明後日のことの考えてみる……そういう思想です。

私は主宰している研究会で先生方の悩み事相談会のようなことを年に数回行います。先生方からは実に様々な悩み事が出ます。しかし、どのような悩み事に対しても、私の答えは大筋ではたった一つです。

私はいつも次のように答えることにしています。

まず、5年後の自分を考えてみましょう。5年後も自分は教員として働いています。いまの自分よりは、教師として少しだけ成長しているはず……そんな5年後の自分です。

さあ、その5年後の自分は、いまの自分の苦しみをどう感じているでしょうか。きっとやんちゃな生徒をもったあの苦しみは、保護者の執拗なクレームに悩まされたあの月日は、同僚と上手くいかなくて「やってらんねえよなあ」と感じたあの一年は、いまの自分にとって必要な経験だった、そう感じているのではないでしょうか。

これまでだって、いくつも、「人生の危機」と感じられたことはたくさんあったのではありませんか。ママに叱られたとき、あの娘に振られたとき、大学や教採に落ちたとき、祖父母が亡くなったとき、確かに世界は絶望的に見えました。でも、ちゃんと乗り切ってきたではありませんか。いまの出来事も絶望的だなんて思わないで、5年後の自分が振り返るときの良い経験にしようではありませんか。そう考えて、もう少し頑張ってみませんか……。

それでもダメだ、絶望的だというのであれば、逃げればいいのです。こだわりを捨てて流されてみる、恥も外聞も捨てて逃げてみる、そういうことだって、長い目で見れば経験なのです。だれだって究極的には他人よりも自分が大事です。精神を病んでまで、死にたいと思ってまで、他人に迷惑をかけないことを優先する必要はありません。

精神を病みそうならば休めばいい。死にたいなんて考えるようになったら退職したほうがいい。教職は確かに尊い仕事ですが、精神を病んだり、命を賭けてまでしがみつくべき仕事ではありません。

ここでのポイントは「5年後の自分を考えてみること」です。

まずは鷲田清一先生の次の文章を読んでみましょう。

激しい苦痛は、ひとを「いま」に閉じ込める。激痛に見舞われているとき、わたしは激痛が消えたあとのことを思って、気を紛らす余裕がない。過ぎ去った昔の思い出に安らかに浸ることもできない。二、三分後、二、三分前のことすら考えることもできない。文字どおり、ひとは「いま」に貼りつけられる。(『「待つ」ということ』鷲田清一・角川選書・平成18年8月)

躰の痛みが例に挙げられていますが、心の痛みも同じです。ひとたびネガティヴな心象に捕らわれてしまうと、人間は「現在(いま)」に縛り付けられてしまい、「いまという瞬間」が過去とも未来とも繋がっている動的なものであることを忘れてしまいます。

比喩的に言えば、「今日」に縛られるのです。どんなに明晰な人でさえ、せいぜい考えられるのは「明日」のこと止まりです。ネガティヴな心象に捕らわれたとき、「今日」を考えたって「明日」を考えたって、このネガティヴな状況から脱することができるとはなかなか思えないものです。それは仕方のないことであり、いわば当たり前のことです。

そこで「明後日(あさつて)」なのです。明後日の自分を想定してみる。その想定した明後日の自分から今日の自分を顧みてみる。そういう想像力を一所懸命に働かせてみる。それがいま自分の置かれている状況をメタ認知してみることにつながります。一度やってみるとわかることですが、こうした発想は思いの外自分の気持ちを楽にしてくれるものです。

こうした発想法を私は「明後日(あさつて)の思想」と呼んでいるわけです。

ただし、この語は私のオリジナルではありません。ある年の夏、国語教育関係の学会の前日に、山梨大学の須貝千里先生と二人で酒を酌み交わしていた折、須貝先生の口からふと出た言葉です。須貝先生が何を参考にこの語を用いたのかは私には知る由もありませんが、私は瞬間的に膝を打ち、時間が経つにつれて私の中に浸み入り、遂には私の生き方を規定するような思想として形成されたのでした。

須貝先生にはいくら感謝しても感謝し尽くせません。

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教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ

教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ~授業への参加意欲が劇的に高まる110のメソッド

いよいよ発売まで1週間ほどとなりました。今回はまえがきを掲載します。

まえがき

かつて子どもたちは教師が語り出せば静かに聞きました。

私が教職に就いたのは1991年のことです。右も左もわからぬまま中学1年生を担任した私は、まわりの先生の見様見真似と、自分がかつて学んできた担任の先生のイメージとを融合することで、なんとなく学級担任として子どもたちの前に立っていました。スキルもなく、人間的にも未熟で、いま考えると申し訳ないような学級経営であり教科運営でした。

しかし、ひとたび私が語り出せば、どんなにざわついていても教室はスーッと静かになり、子とちは私に顔を向けてくれました。先生が何か言おうとしている。ちゃんと聞かなくちゃ……子どもたちはそういう表情を向けてくれました。それがあたりまえでした。

そんな子どもたちが変わってきたのは、いつの頃だったでしょうか。おそらく90年代末から2000年代初頭にかけてのことだったように思います。

先生の話を聞けない子どもたちが登場します。聞かないのではありません。聞けないのです。 椅子に座っていられない子どもたちが登場します。座らないのではありません。座っていられないのです。悪気はないのです。かつての校内暴力世代のように、意識的に教師に反抗しているのではないのです。反抗してくるのではあれば、教師はその子と人間関係をつくり、「まあ、しゃーねーから堀の言うことは聞いてやるか」という状態に導くことができます。彼らは話を聞けなかったり椅子に座っていられなかったりするわけではありませんから、教師との信頼関係が築けたときには指導に従います。しかし、聞けない子、座っていられない子は、別に教師が嫌いなわけではありません。それどころか人なつっこく、学校や教師が大好きであることさえ珍しくはありません。それでもやはり聞けないし、座っていられないのです。

当時、この現象は「子どもの変容」と言われました。「学級崩壊・学校崩壊」という語がメディアを闊歩しました。行政からは「生きる力」「心の教育」が叫ばれました。「管理教育批判」の世論が雲散霧消していきました。その代わり、「指導力不足教員」「不適格教員」の語がマスコミを賑わすようになりました。「子どもの変容」論は「保護者の変容」論にまで拡散し、「モンスター・ペアレンツ」なる語まで発明される始末……。

しかし、こうした現象は、たった一つの観点を変えるだけで別の見方ができたのです。そのことに学校教育は気づけませんでした。いいえ、いまだに気づけてはいません。それが学校教育にとってあまりにも当然のことであり、あまりにも学校教育の基幹として長く続いてきたために、誰もそれを疑うことができないのです。

それはひと言でいうなら、「学校のあらゆる教育活動が座学だけでできている」ということです。子どもたちは学校に来ると、ごくごく一部の行事や総合の体験学習を除いて、ただただ黙って椅子に座り、先生の話を聞き、ノートをとり、先生の期待に添う発言をすることを求められます。先生は授業において、子どもたちが自分の話を真剣に聴いてくれることを当然の前提とし、家庭において子どもたちが復習しなければ学習の成果は上がらないという理屈で動いています。保護者もその成果を上げるために協力するのが当然という理屈で動いています。それがシステムとして、意識的・無意識的に強制力をもっています。ですから、そこから逸脱する子どもたちや保護者たちは「問題傾向の子」「問題ありの親」というレッテルを貼られるのです。

この、これまで当然と思われていた学校教育システム、授業システムが〈制度疲労〉を起こしているのです。もちろん、授業から座学をすべて排除するなどということはできません。授業の中心は知識の伝達であり技術の継承ですから、それは不可能なことです。しかし、「座学だけでできている多くの授業」を「座学中心だけれど交流場面も必ずある授業」に転換できないでしょうか。この明らかに〈制度疲労〉を起こしているシステムを少しだけ、現代的な子どもたちの実態にあわせてシフトしてみてはいかがでしょうか。

〈教室ファシリテーション〉はこうした発想から生まれた提案なのです。

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今月のお知らせ/2012年2月

手帳の使い方を変えました。毎日が一気に創造的になりました。

手帳の使い方をこれほど大きく変えたのは12年振りです。なぜこれまでこんな簡単な方法を思いつかなかったのか、不思議でなりません。おかげで今年は大きく前進できそうな気配です。良いことのあまりなかった2011年を終えて、今年は少しずつ上向きになっていけばいいなあと思っています。その萌芽でしょうか。しかし、占いによると、私は今年もダメな年です。派手な活動は控えて、基本的には精進する年にしようと考えています。

【書籍・出版関係】

9784761918842教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ~授業への参加意欲が劇的に高まる110のメソッド』堀裕嗣著・学事出版・2012年3月

お買い求めはこちら

今回もイクタケマコトさんの装丁・イラストです。今回は筆者の僕から見ても面白いイラストが多いなあ……とう印象です。いよいよファシリテーションの本を一冊上梓できたので、僕の提案にも広がりが出てくる、そんな一冊になるとだろうと感じています。ファシリテーションをまだ知らない、ファシリテーションを中心に据えるとは思い切れない、なんとか職場と折り合いをつけながらファシリテーションを導入したい、そういう先生方にも役立つようにとかなり気をつけて書きました。そのために、1原則1頁という原則を破って、各アイテムの説明部分では追試できるように書き込みました。そこが通常のファシリテーション本とは一線を画すところだと思います。と同時に、ファシリテーションとしては中途半端にもなっています。そこには筆者も自覚的です。

序章 「教室ファシリテーション」とは?

第1章 教室ファシリテーション10のアイテム/1.ペア・インタビュー/2.ペア・ディスカッション/3.グループディスカッション/4.マイクロ・ディベート/5.ロールプレイ・ディスカッション/6.ブレイン・ストーミング/7.ワールド・カフェ/8.ギャラリー・トーク/9.パネル・チャット/10.オープン・スペース・テクノロジー

第2章 教室ファシリテーション100のステップ/1.ペア・インタビュー/2.ペア・ディスカッション/3.グループディスカッション/4.マイクロ・ディベート/5.ロールプレイ・ディスカッション/6.ブレイン・ストーミング/7.ワールド・カフェ/8.ギャラリー・トーク/9.パネル・チャット/10.オープン・スペース・テクノロジー

120219 『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』(堀裕嗣著・学事出版)が手元に届きました。シリーズ3冊目です。今回は黄色です。3冊並べると信号機のようです。25日(土)の中学校学級づくりセミナーin東京、26日(日)の教室ファシリテーションセミナーin東京他、各種イベントで販売いたしますのでよろしくお願いします。

9784761918682「スクールプランニングノート」発売されました。僕や野中信行先生、長瀬拓也先生らが開発委員となって学校の先生の学校先生による学校の先生のための手帳を開発しました。備忘録機能はもちろん、記録的にも創造的にもかなり教員の必要としている機能を盛り込んだと自負しております。来年度はこの手帳で仕事をしてみませんか。きっと学級経営や生徒指導、実践研究活動が充実すると思います。お申し込みはこちらです。

111207cover必ず成功する「学級開き」 魔法の90日間システム』堀裕嗣著・明治図書・2012年2月

入庫から一週間で第二版が決まり、一ヶ月で第三版が決まりました。ちょっと驚いています。お買い求めいただいた皆様、お読みいただいた皆様、ありがとうございます。

決して「必ず成功する」わけでもありませんし、まったく「魔法」でもありませんが、誇大タイトルはお許し下さい(笑)。初めて、なんといいますか、可愛い表紙の本で、特別気に入っているわけでもないのですが、それほどの違和感もない、著者としては楽しい気分です。それほど売れるとも思えませんし……(笑)。何と言っても表紙のイラストと僕の顔写真のギャップが楽しいです。既に明治図書のHPで予約が始まっています。興味のある方はお買い求めいただければ幸いです。内容はかなり具体的で、僕が何を大切に考えてどんな学級開きをしているのか、手に取るようにわかるように書きました。お買い求めこちらからです。

まえがき/第Ⅰ章 成否は最初の1ヶ月で8割が決まる/第Ⅱ章 最初の3日間で何をすべきか~生徒たちとの心理的距離を縮める/第Ⅲ章 最初の7日間に何をすべきか~学級のルールを確立する/第Ⅳ章 最初の30日間に何をすべきか~学級のルールを定着させ、システム化する/第Ⅴ章 学級開き10箇条を意識する/第6章 最初の90日間に何をすべきか~授業ルールを定着させ、システム化する/あとがき

9784761918484s生徒指導10の原理・100の原則~気になる子にも指導が通る110のメソッド』堀裕嗣著・学事出版・2011年10月。

第三版が決まりました。お読みいただいた皆様、ありがとうございます。

今回もイクタケマコトさんの装丁・イラストです。しかも今回はイクタケさんによる10本の漫画つき。『学級経営…』とは内容的に重ならないように配慮しながらも、思想的には一貫しています。今回は第1章に簡単ではありますが、理論が載っています。若い先生方には『学級経営…』よりは少しだけ難しいかもしれません。また、中堅・ベテランの先生には読み応えがあると思います。『学級経営…』ともどもよろしくお願いします。

第1章 生徒指導を機能させる10の原理/1.スクール・カーストの原理/2.サイレント・マジョリティの原理/3.ヒドゥン・カリキュラムの原理/4.ブロークン・ウィンドウズの原理/5.イニシアティヴの原理/6.インクルージョンの原理/7.マクドナルド化の原理/8.パッチング・ケアの原理/9.FMCチームワークの原理/10.自己キャラクターの原理

第2章 生徒指導で身につけたい100の原則/1.基本として身につけたい10の原則/2.生徒を観察する10の原則/3.生徒との距離を調整する10の原則/4.事実を確認する10の原則/5.生徒を説得する10の原則/6.現場に対応する10の原則/7.保護者に対応する10の原則/8.年度当初に徹底する10の原則/9.自分の現状を知る10の原則/10.自分の身を守る10の原則

9784761918088学級経営10の原理・100の原則~困難な毎日を乗り切る110のメソッド』堀裕嗣著・学事出版・2011年3月

第三版が決まりました。お読みいただいた皆様、ありがとうございます。

編集の戸田さんに頑張っていただいて、ぼくの本としてはかなり読みやすいものになっています。イクタケマコトさんのイラストも内容にマッチしていて、表紙カバーの装丁も気に入っています。基本コンセプトは、「学級経営に失敗できない時代になった」という前提のもとに、まずは非凡な実践に憧れる前に平凡なことをしっかりと基盤づくりとして意識しよう、というものです。いま、勤務校でつまずき、ひとたび目に見えた失敗してしまうとなかなか浮上できない現実があります。「成功すること」よりも「失敗しないこと」が大切な時代になってきている……そういう現状認識のもとに書きました。ある程度の構造化を目指していることが売りです。

第1章 学級をマネジメントする10の原理/1.一時一事の原理/2.全体指導の原理/ 3.具体作業の原理/4. 定着確認の原理/5.具体描写の原理/6.時間指定の原理/7.即時対応の原理/8.素行評価の原理/9.一貫指導の原理/10.同一歩調の原理

第2章 学級をマネジメントする100の原則/1.学級組織づくり10の原則/2.席替え10の原則/3.給食指導10の原則/4.清掃指導10の原則/5.ショート・ホームルーム10の原則/6.リーダー育成10の原則/7.学力の向上10の原則/8.家庭訪問10の原則/9.通知表所見10の原則/10.職員室の人間関係10の原則

【研究会関係】

私に関係する2~3月の研究会をご案内させていただきます。お時間が許せばお越しください。

2012年2月3日(土)/「研究集団ことのは」光村図書中学校国語新教科書教材研究例会/堀自宅/興味のある方はご連絡下さい。/終了しました。

2012年2月11日(土)/第30回累積科学国語教育研究会in札幌/作文指導で両立できてますか?意欲と技能~「書くことがない」「書き方がわからない」そんなセリフ、もう言わせない!/札幌市白石区民センター1F多目的室/参加費:3000円/講師:鹿内信善・多賀一郎・山寺潤(他交渉中)/定員30名/終了しました。

2012年2月18日(土)/第9回学級づくりプログレッシブセミナーin札幌/札幌白石区民センター1F多目的室/参加費:3000円/講師:大野睦仁・高橋裕章・堀裕嗣・南山潤司・山口淳一・山下幸・山田洋一/定員30名/終了しました。

2012年2月19日(日)/「研究集団ことのは」光村図書中学校国語新教科書教材研究例会/堀自宅/興味のある方はご連絡下さい。/終了しました。

2012年2月25日(土)/第7回中学校学級づくりセミナーin東京/合田敦郎・佐瀬順一・田中利幸・堀裕嗣・桃崎剛寿/上智大学2号館5階509号室(予定)/参加費:3000円/定員60名/終了しました。

2012年2月26日(日)/第1回教室ファシリテーションセミナーin東京/堀裕嗣・藤原友和/上智大学2号館5階509号室/参加費:3000円/定員65名/終了しました。

2012年3月3日(土)/「研究集団ことのは」光村図書中学校国語新教科書教材研究例会/堀自宅/興味のある方はご連絡下さい。

2012年3月10日(土)/学級経営in島根

2012年3月18日(日)/「研究集団ことのは」光村図書中学校国語新教科書教材研究例会/堀自宅/興味のある方はご連絡下さい。

2012年3月24日(土)~25日(日)/第2回教室ファシリテーションセミナーin札幌/講師:堀裕嗣・山下幸・藤原友和/札幌市白石区民センター3F集会室A/参加費:両日参加4000円・1日参加3000円/定員20名

2012年3月31日(土)/第17回中学校学級経営セミナーin札幌学級経営・10の原理・学級開きで何を語るか…いかなるシステムを敷くか…/堀裕嗣・對馬義幸・山下幸・小木恵子・桑原賢・髙橋和寛・友利真一・小林智・坂本奈央美・米田真琴(他交渉中)/札幌市コンベンションセンター/参加費:3000円/定員30名

2012年3月31日(土)/第46回教師力BRUSH-UPセミナーin札幌/堀裕嗣・大野睦仁・南山潤司・高橋裕章・山口淳一・山下幸(他交渉中)/札幌市コンベンションセンター/参加費3000円/定員60名

2012年4月1日(日)/第18回中学校・国語科授業づくりセミナーin札幌中学校国語科光村図書1学期教材&教育出版1学期新教材、教材研究&授業のポイント!/堀裕嗣・對馬義幸・山下幸・小木恵子・浅野克実・小林智・米田真琴・人見誠・坂本名央美・熊野まなみ/札幌市コンベンションセンター/参加費:3000円/定員30名

2012年4月7日(土)/第16回教室実践力セミナーin札幌/さあ、授業開き!子どもを引きつける5教科授業ネタ25連発!~国語・算数・理科・社会・音楽/太田充紀・大谷和明・斎藤佳太・高橋裕章・堀裕嗣・南山潤司・山下幸

2012年4月8日(日)/第18回中学校学級経営セミナーin札幌/生徒指導・10の原理・あなたと生徒の関係がしっくりいかない本当の理由~4月の動きで1年が決まる/堀裕嗣・山下幸(他交渉中)

その後の予定はこちら

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