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チーム力で信頼関係の構築を

「総合教育技術」5月号の原稿です。

一 学級経営は相対的に評価される

学級経営は相対的に評価される─これは私の持論です。

教師は学級経営において担任である自分と担任している生徒たちとの関係ばかりを気にしています。その関係が保護者の信頼を決めると。しかし、生徒や保護者は決して担任教師ばかりを見ているのではありません。生徒も保護者も常に隣の担任と比べて自分の担任はどうか、お兄ちゃんのときの担任と比べて妹の担任はどうか、こういう目で見ているのです。しかも、隣の芝生が青く見えるのは世の常。中学校では、職員室や学年団が同一歩調をとらねばならないとよくいわれますが、その理由の一番はこれです。

例えば、あなたが学級通信を週に一回、金曜日に発行するとします。あなたとしてはけっこう頑張って発行しているつもりです。しかし、隣の学級の担任が毎日発行しているとしたら、あなたの学級通信は少なくとも発行回数に関する限り、生徒にも保護者にもほとんど評価されることはありません。「うちの担任も毎日発行してくれないかしら……」になります。逆にいうと、自らが良かれと思って日刊で学級通信を発行することが、無意識のうちに隣の学級にマイナスに機能している、ということがあり得るということでもあります。

学級通信を例に挙げましたが、事は学級通信に止まりません。給食指導の仕方、清掃指導の仕方、生徒指導の在り方から保護者懇談会の持ち方、通知表所見の書き方に至るまで、すべてが相対的に評価されているのです。

二 チームで動く時代が到来した

学級担任として頑張ることは大切なことですが、それは他の担任とのバランスを考えて行われなければなりません。言い換えるならば、学級経営を学級経営の視点だけで考えずに、常に学年経営や学校経営と連動させて考えなければならない、ということです。学級経営の手法についてさえ、学年や職員室でよく話し合い、学年・学校として一貫した指導を心がけることが何よりも必要になっているのです。

現在、時代の流れで生徒・保護者の価値観は多様化しています。Aの正義はBの正義でなく、Cの利益がDの不利益になる、ということがよくあります。学級担任一人の価値観によって、何らかのアイディアを採用したとしても、それは生徒・保護者の一部には機能したとしても、全体に機能するということはあり得ません。小さな片々のアイディアよりも、「学年団・職員室の一貫した姿勢が見えること」のほうが、実は生徒・保護者に安心感を与えるのです。いま、こうした姿勢を示すことこそが保護者の信頼を獲得する近道になっているのだと私は認識しています。

こうした現状に対して、私は「教師がチームで動かねばならない時代になった」という言い方をしています。

三 信頼は個人ではなくチームで得る

本誌本特集には、保護者の信頼を得るための様々なアイディアが掲載されるはずです。その一つ一つは、間違いなく私たち個人にとっては有益です。

しかし、少なくても中学校では、自分一人でそれを行うのではなく、「こんなことが雑誌に書いてあってやってみようと思うのですが、みなさんもいかがですか」と、職員室で声かけをすべきです。あなたがそうした姿勢を示すことで、ほかの先生方の中にも「こんなのあるんだけど、先生もどう?」とか「こんなの見つけたんだけど、みんなでやってみない?」という雰囲気が少しずつ出来上がっていくはずです。

そして、こうした雰囲気の醸成こそが、実は生徒にも保護者にも信頼される学年団、職員室の構築へと繋げがっていくものなのです。こうした雰囲気がてきあがると、個人の小さな失敗に対して、保護者から直接に非難を浴びるということもなくなっていきます。信頼は個人で得るものではありません。教師団として、チームとして得るものなのです。

一見遠回りのように聞こえるかもしれませんが、これにまさる道はありません。

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