オープン・スペース・テクノロジー
〈オープン・スペース・テクノロジー〉(略称OST)は、〈ファシリテーション〉の一つの手法であり、〈ワールド・カフェ〉と〈PCS〉の良さをともにもつ画期的な手法といえます。ただし、生徒相手でも大人相手でも様々なレディネスを必要とし、よりよく機能させるのが難しい手法でもあります。機能すると効果は大きいといえますですが、安易に教室に導入するとヤケドをする手法……くらいの慎重な心構えをもつことが必要です。
①学級生徒全員が椅子のみで円形をつくり、向かい合って座ります。
②全員にA4判一枚の用紙を配付し、いま最も交流したい題材について記述してもらいます。例えば、「いま学級で取り組むべきこと」といったテーマで問題意識を書いてもらうというような感じです。
③全員に簡単に「交流したいこと」について、A4判の紙を提示しながら語ってもらいます。一単位時間なら一人30秒、二時間連続なら一人1分程度になります。
④「交流したいこと」のテーマが似通っている者同士で交流する仲間をつくります。四十人学級ですと二人以上八人以内くらいが良いでしょう。もしも十五人とかのグループができた場合には二つのグループに分けます。
※時間がない場合には、③を省略して、紙を胸の前に提示しながら仲間を探すことによってグループ分けするという方法もあります。
⑤グループができたら、各グループごとに話し合い、交流時間をとります。その際、教卓の上に模造紙・8色ペン数セット・養生テープ・A4判用紙百枚程度・付箋紙等を置いておき、 自由に使って良いといいます。時間は一単位時間であれば20分程度、2時間続きなら50分程度を目処とします。③を省略した場合には、それぞれ35分程度、70分程度の時間がとれます。
⑥その後、各グループに発表させたり、立ち歩きながら各グループの記録を見合ったりして交流します。
〈OST〉において交流時間は次のような留意点があります。
第一に、どこで話し合うかについて各グループの判断に委ねること。「私たちは図書室で」とか「私たちはPC室で」と校内どこでも……というのが理想ですが、そこまでは難しいとしても「私たちはテーブルで」とか「私たちは床で」とかいった程度の自由は認めてあげるのが良いでしょう。基本的にはリラックスできる話し合いの場をいかにつくるかということを何よりも重視しましよう。
第二に、話し合いの仕方、使用すべきグッズについても各グループに任せましょう。〈OST〉は様々な話し合い形態を経験した後に行うべき手法ですから、教師が安易に助言することも避けるべきといえます。基本的にすべてを生徒たちに任せる、そういう段階に来て初めて用いて良いアイテムである、そういう心構えを徹底することが必要です。
第三に、話し方については(OSTに限りませんが)、一人が一度に一分以上話し続けないこと、他者の意見を絶対に否定しないこと、二つ以上の意見を組み合わせて新たな意見を創出することを奨励することなど、〈ファシリテーション〉や〈ブレイン・ストーミング〉で奨励される話し方をすることを徹底します。
第四に、当初決めたグループが絶対ではないということを確認すること。具体的にいえば、このグループでの話し合いは自分の想定していた話し合いではないと感じたら、別のグループに言っても良いというルールを確認すること。場合によっては途中からどのグループにも参加せず、様々なグループの話し合いを見て回って自らの視野や知見を広める時間とすることも可とすることさえあり得ます。
第五に、グループが固定してしまい流動性がない場合には、多少時間をとってお互いのグループの交流時間をとるといった工夫もあり得ます。
〈OST〉は学級をよりよくする活動を企画したり、学級に新たな取り組み、新たなルールをつくったり、或いは学校行事の企画を立てたりといった、プロジェクト企画立案型のテーマの話し合いに適したアイテムです。その意味で、私は、〈OST〉にで各グループに企画立案を行わせ、最終的には学級全体にプレゼンすることによって実現していくというプロセスの一段階として機能させるのが良い、と考えています。こうした企画立案から関わった取り組みについては、生徒たちは常によりよく機能させるにはという視点で動き、最後まで責任をもって取り組むものです。
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