STEVIE WONDERを聴きながら眠りに就いたら真夜中にこんな夢を見た
ぼくが納豆をかき混ぜていると、ラジオからスティービー・ワンダーの「パートタイム・ラバー」が静かに流れ出した。納豆ひとパックにキムチを箸で二つまみ、それをかき混ぜると素敵な食べ物ができあがるのに、広く知られていないのは国民的損失の一つだと思う。夏にはほんのちよっとだけポン酢をたらすのもいい。
それを肴に日本酒を二合呑むのもいいし、イカやマグロの安いお刺身をスーパーで買ってきてソースにしてもいい。醤油もワサビも不要、これ以上ないという完璧なソースに早変わりする。こんなにおいしいのに妻はソースとは認めてくれない。たぶん美空ひばりならあの眉毛をグイと上げて、あら、いけるじゃない、と言ってくれそうなのに。八千草薫なら目を見開いて柔らかい笑顔を向けてくれるかもしれない。そんな確信さえ抱かせるキムチ納豆である。
キムチ納豆をしつこくかき混ぜると、表面にうすーい膜ができる。男性が五十を超えて、その狡猾さや懐の深さに見合ったものを身につけるために必要そうな膜だ。男性は五十を超えて立場をもつと、まるで社会を代表するかのような表情を見せるようになる。四十男はくだらないことでいつも大笑いしているのに、五十男はまるで笑うことが自分を貶めるとでも思っているかのように笑わなくなる。きっと笑わないことが自分の威厳を高めるのだと勘違いするのだろう。でも総じて部下に好かれる五十男は大笑いする人が多い。こんな単純なことにも気づけなくなってしまうほどに、この病気は根が深い。
男性は五十になると、きっと脳にキムチ納豆のようなうすーい膜が少しずつ現れて、脳の笑いを司る働きをする丸い部分を包んでしまい、働きをにぶらせてしまうのだ。そしてその膜ができて地位を得ると、その膜が少しずつ変色してくる。腐った肝臓みたいに紫色になってきくる。五十になっても笑いを捨てない男性がいるのはそのせいだ。膜ができるのに抗うことはできないけれど、変色には抗うことができる。
きっと紫色に変色した膜は脳卒中の危険性を著しく高めるのだろう。喫煙者は非喫煙者より脳卒中になる危険性が1.7倍高いらしいけれど、きっとこの膜の変色者は非変色者より脳卒中になる危険性が5.3倍ほど高いに違いない。
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