ダイアログ/ユーモア
子どもたちがスピーチやプレゼンの冒頭で「みなさんは○○ですか?」と問いかける場面があります。多くは問いかけただけで、すぐに自分の予定していた話を展開し始めます。要するに、問いかけが流れてしまうわけです。
しかし、「○○ですか?」と問いかけたら、少し間を置いて聞き手に考えさせる時間をもった方が効果的です。「うーん、どうだろうなあ……」と考えることは、「この人はどう考えているのだろう」と話し手の話の内容に興味をもってもらえるからです。実は、「○○ですか?」「○○って何だと思いますか?」と問いかけたら、二、三人を指名して応えてもらうとより効果的です。指名されて応えるのは二、三人だったとしても、多くの聞き手が「自分だったらどう応えるだろうか……」と考えてくれるからです。聞き手がそのように考えてくれるということは、とりもなおさず「話を聞く構えをつくってくれている」ということなのです。聞き手の応えに対して「なるほど」とか「そうですよねぇ」とか簡単なリアクションをしているうちに、聞き手は話し手に親近感を抱いていくものなのです。
スピーチやプレゼンの中にこうした話し手と聞き手とのやりとりを入れることを、私は〈ダイアログ〉と呼んでいます。日本語に訳すと「対話」という意味です。
子どもたちのスピーチの中にちょっとした聞き手とのやりとりを入れさせる、総合のプレゼンの中にクイズを入れて四、五人に指名して答えさせる。こうした〈ダイアログ〉を意識させることで、子どもたちのスピーチ・プレゼンは驚くほどに豊かになります。ぜひ取り入れたい技術です。
子どもたちに〈ユーモア〉が必要と言うと、流行りの芸人ネタや級友のいじりに走りがちです。そうしたネタものは確かに笑いを誘いはするのですが、意味なくネタが発せられたり他人を傷つけかねない言動があったりと、決して感心するものではありません。
実は〈ユーモア〉には、「攻撃的なユーモア」と「受容的なユーモア」とがあります。流行りの芸人ネタや他人に対するいじり、毒舌系のブラック・ユーモア等が「攻撃的なユーモア」、失敗談を語って自らを落としたり、わざとボケて聞き手にツッコミを入れさせたり、〈ダイアログ〉を用いて聞き手の答えにやわらかくツッコミを入れてクスリと笑わせたりというのが「受容的なユーモア」です。「攻撃的なユーモア」は当たれば爆笑を誘いますがはずれたら大火傷、「受容的なユーモア」は爆笑に至らないまでも確実なスマッシュ・ヒット、こういう違いがあります。「攻撃的なユーモア」は固定的ですが、「受容的なユーモア」は柔軟で動的という特徴もあります。聞き手の反応に切り返したり、瞬時に対応したりということを旨とするわけですから、総じて「受容的なユーモア」の方が高度であるともいえるでしょう。
「話すこと・聞くこと」において子どもたちに取り組ませたいのは、この「受容的なユーモア」の方です。〈ダイアログ〉を頻繁に用いて、聞き手の反応にやわらかなツッコミを入れることで場の空気を和ませる、そんな〈ユーモア〉です。そのためには、教師が授業の中で日常的にモデルを示すような〈対話術〉が必要になります。
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