人生のトップテン/中間まとめ
一昨年の年末に石川晋の今年のアルバムトップテンを見てから、自分の40年以上の人生を通して、好きなといおうか、影響を受けたといおうか、自分の人生の一部になっているといおうか、そんなアルバムトップテンをつくってみよう……なんていう気になった。
去年の1月から1年以上、CDラックから選んだ50枚程度の候補アルバムを、車の中で聴き続けた。当然のようにかなり迷ったわけだが、結局、高校から大学時代にかけてよく聴いていた元春とかレベッカとかパーソンズとかバービーとか、ああいうものは一時の流行としか思えなくなってきた。
結局、以下のようなものに落ち着いた。まずは邦楽編である。
仲井戸麗市/1985
トップテンを決めるにあたって、このアルバムの1位だけはまったく動かなかった。このアルバムだけは無人島に行くときにも、天国に行くときも、たとえ地獄に堕ちたとしても、絶対に手放すことなく持って行こうと思っている。アルバムはすべて聴いたし、ライヴもずいぶん行ったけれど、すべてのアルバムの中で、このアルバムが群を抜いている。同じ頃によく聴いていたZELDAやSHOW-YA、大江慎也、そしてあの、清志郎のソロ第一弾でさえ、迷った挙げ句にトップテンから落としてしまったけれど、CHABOのこのアルバムだけは落とす候補にさえなることもなく、どのアルバムよりもぼくを高揚させ、どのアルバムよりもぼくも切なくさせ、どのアルバムよりもぼくをなぐさめてくれる、そういうアルバムだという確信のもとに聴いていた。このアルバムを聴いたことがないという四十代以上の男性を、ぼくは気の毒な人生だとさえ感じる。サウンドも歌詞も、もちろんギターテクも、そして語りも、すべてが完璧である。
山木康世/2000
ぼくにとってのこのアルバムの価値をひと言でいうなら、「癒し」である。1位にあげたCHABOのアルバムはぼくにとって過去を確かに踏み固めながらも前進するイメージであるのに対し、このアルバムはちょっとひと息、立ち止まるイメージである。ここだけの話しだが……、(とブログでいうのもおかしな話なのだが)ぼくは出勤途中、車の中でこのアルバムがかかり始めて聴いているうちに、車を停めて聴き入ってしまったことがある。結局その日はそのまま年休をとって道民の森に行って一日過ごした(笑)。論理矛盾を承知でいえば、そのくらい力のある「癒しアルバム」なのである。このアルバムは2000年リリースだから、ふきのとう関連のアルバムとしては割と新しいアルバムであり、ほんとうは「風来坊」とか「DSダルセーニョ」とか、トップテンに入れたい名盤がたくさんあるのだけれど、迷いに迷った挙げ句、やっぱりこれだな……という結論に至った。今年は札幌の山木さんのライヴはすべて行こうと決意している。
3位 コトノハ
元ちとせ/2001年
このアルバムはこのブログでも何度も紹介したことがあると思う。もともとは元ちとせのデビュー以前のミニアルバムである。5曲入りのミニアルバム故に、当初、トップテン入りはするだろうが、下位の方だろうなと思っていた。でも、今年、年が明けてからトップテンアルバムを聴き続けているうちに、やっぱりこのアルバムが上位に食い込んできた……という感じである。「わだつみの木」は確かに元ちとせのためにある曲だったけれど、このアルバムに収録されている5曲はどれも元ちとせでなければならない、元ちとせのために生まれてきた楽曲、そういう5曲で構成されているのである。「コトノハ」というタイトル曲が南の国から札幌を想う物語になっていることも、ぼくを捕らえて放さない理由の一つになっている。3曲目の「竜宮の使い」という曲が奏でるメッセージは、教育と成長の本質を突く名曲である。
4位 彼は眠れない
沢田研二/1989
ボーカリストとしての沢田研二の能力が頂点に達し、ものすごい作家陣の楽曲をすべてJULIEのオリジナル曲にしてしまっている、すごいアルバムである。作家陣はユーミン、清志郎、徳永、奥居香、その他、新旧入り乱れてのそうそうたる顔ぶれだった。でも、すべてが完全にJULIE節に染められてしまっているのである。この時期の沢田研二はほんとうにうまい。ギンギンのロックが数曲続くと、必ず美しくメロディアスなバラードが配される、そういう繰り返しの感のある、非常に完成度の高いアルバム。。「KI・MA・GU・RE」は清志郎提供の楽曲、かつ清志郎とのデュエットでもあるのだが、これがまた素晴らしく調和している。ただし、ボーカルとしては完全に沢田研二が清志郎を喰ってしまっている。また、「堕天使の羽音」「静かなまぼろし」「ルナ」という3曲のバラードは、沢田研二の数百曲の中でも名曲中の名曲である。80年代後半から90年代前半にかけての沢田研二のバラードはほんとうにいい。ちなみにこの時期のバラードは「AFTERMATH」(1996)というバラードベストとしてリリースされている。なお、このアルバムの先行シングルは冒頭の「ポラロイド・ガール」。これもJULIEらしい曲で、ぼくはいまでもときどき、からカラオケで歌う(笑)。
5位 夢みる頃を過ぎても
八神純子/1982
ボーカリストとしての八神純子とソングライターとしての八神純子とが結節点を紡いだのがこのアルバムだと思う。シングルヒットよりもアルバムづくりをという明確な方向転換を見せ、全精力を込めて、渾身の力でつくったアルバムという気がする。1曲だけ、「ナイス・メモリーズ」という原田真二提供の曲が収録されているのも、なんとも八神純子の謙虚さを感じる。タイトル曲「夢みる頃を過ぎても」も美しいのだが、3曲目の「白い花束」という曲が美しい。あの八神純子がおさえながら美しさをつくろうとしているのがよくわかる。さびの部分に自らの声でコーラスを重ねる箇所などは聴いていて泣けてくる。それでいて八神純子のポップな感じを前面に出した曲や、スウィンギーなアレンジを施した曲など、それまでの八神純子らしさも盛り込んでいる。ぼくには「THE 八神純子」というアルバムに思える。
6位 ステレオ太陽族
SOUTHERN ALL STARS/1981
デビューからサザンを聴き続けているファンは、1979年に3枚目のシングル「いとしのエリー」によって驚愕とともに桑田の才能を認識させられ、1981年に4枚目のアルバムにあたる「ステレオ太陽族」によって、どこかサザンをコミックバンド扱いしていたサザンファンならぬ多くの人たちを、桑田を認めざるを得ない状況に追い込んだ。そのエポックアルバムは「タイニイ・バブルス」ではないかという人もいるだろうが、ぼくはこのアルバムだと思う。「HELLO MY LOVE」のようないかにもプロローグ的な楽曲から始めて、「MY FOREPLAY MUSIC」と「素顔で踊らせて」という硬軟彩る、それでいてそれまでの日本にはなかったタイプのメロディをたたみかける。この二曲は歌詞のつくりかたも対照的だった。その後、「夜風のオン・ザ・ビーチ」「恋の女のストーリー」とだれが聴いてもいい曲だなあと思わせる楽曲を続けたかと思うと、A面ラストに「我らパープー仲間」なんていう、ああ、やっぱり桑田だ……ってな、めちゃくちゃな曲をもってくる。B面も同様。強烈なピアノで始まる「ラッパとおじさん」から、日本語を完全に壊した「Let's Take a Chance」、曲という概念を壊した「ステレオ太陽族」、この流れを引っ繰り返して美しいメロディラインの「ムクが泣く」をはさんで、「朝方ムーンライト」「Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)」「栞のテーマ」と美→狂→美を交互にもってくる。中学生のぼくが聴いてもすごいアルバムだと感じたものである。当時、オリコンのアルバムチャートでもずーっと1位だった。この完成度の高いアルバムのあと、「チャコの海岸物語」で再びシングルヒットも飛ばすようになり、国民的に認知されるバンドになっていったのだ。やっぱり「タイニィ・バブルス」じゃなく、「ステレオ太陽族」なのだ。
松山千春/2002
高校の先輩である中島みゆきもドリカムも落としてしまったけれど、道民の一人としてこの人だけは入れなくちゃと思う。正直、ファーストの「君のために作った歌」(1977)と「空を飛ぶ鳥のように野を駆ける風のように」(1979)と「ガリレオ」(1999)と「La La La」(2000)とこのアルバムとで、どれを入れようかと迷った。でも、現在につながる松山千春の晩年……といっては何だが、完成に近づいてきている松山千春につながる系譜の最初のアルバムが、ぼくにはこのアルバムだと思えるので、敢えて「egoist」を選ぶことにした。タイトル曲を始めて聴いたとき、「ああ、千春は円熟期に入ったんだ」と強烈な印象を抱いたものである。ぼくの中で千春の曲は7パターンあるように感じているのだが、その7つがすべて揃い、しかも、いまだに「egoist」1曲しかない8つ目のパターンまで収録されているこのアルバム。1枚だけ勧めるとしたら、ぼくはこのアルバムだなと思う。
8位 満ち汐のロマンス
EGO-WRAPPIN'/2001
ぼくの一切の思い入れを排し、純粋にアルバムの完成度だけで比較したら、この10枚の中で最も完成度が高いのはこのアルバムかもしれない。それほどにこのアルバムはすごい。いま見たら、アマゾンでこのアルバムのレビューが20件ついているのだが、すべてが★5つだった。そんなアルバムはそうそうないだろう。演奏は天下一品。ボーカルはこんなにうまい日本人がいるのかと思うくらいうまい。R&Bとジャズとブルースと昭和歌謡の融合と、なんというか歴史性まで感じさせる。すごいバンドである。「サイコアナルシス」のシャウトなんかを聴いていると、あまりの感動に躰に震えが来る。よくもこの国にこんなバンドが生まれたものだと思う。
1982
ぼくは45年近く生きてきたけれど、すべてのジャンルにおいてこれほど調和のとれた、かつ創造的なコラボを他に知らない。初めて聴いたときからそれほどにしびれている。ぼくをこんなにも惹きつけたのは、大瀧でも元春でもなく、杉真理の存在だと思う。この3人コラボが杉でなく、伊藤銀次でも山下達郎でもこれほどの調和、これほどの心地よさは創り出せなかったのではないかと思う。それほどに「Nobody」「ガールフレンド」「夢見る渚」「Love Her」という杉真理の4曲は、大瀧詠一と佐野元春というそれぞれの強烈な個性をつないでいる。詳しくは企業秘密なので書かないけれど、実はぼくは、「研究集団ことのは」関係のイベントの作り方も、研究の進め方も、思考の枠組みにおいてさえ、この3人コラボの在り方をモデルにしているところがある。「A LONG VACATION」や「FOR YOU」をはずしてさえ、このアルバムをトップテンに入れる所以である。
10位 Never Again 許さない
岩崎宏美/1999
10位は決められなくて、11枚の中からどれを選ぶかさんざん迷った挙げ句、結局、ぼくがファンクラブに入っている岩崎宏美を選んだ。要するに、11枚の中で、アルバムは同列、シンガーが好きだから、それもルックスが好きだからという理由で選ばれたのがこのアルバムである。でも、それはこのアルバムの完成度が低いことを意味するわけではない。他の10枚とちゃんと同列に並ぶほどの完成度の高さをもっている。筒美京平提供の楽曲で構成された企画盤なのだが、20世紀を締める目にふさわしい名盤である。かつて「想い出の樹の下で」のB面に収録されていた「わたしの1095日」という名曲があるのだが、それをアラフォーの岩崎宏美が20年以上たってセルフカバーした。これがたまらない仕上がりになっている。岩崎宏美の代名詞的な名曲「月見草」も収録。
10位にするのを迷ったあとの10枚は以下です。
うつろひ/さだまさし/1981
臨月/中島みゆき/1981
LION & PELICAN/井上陽水/1982
WELCOME TO YOKOSUKA/渡辺真知子/1983
夜の底は柔らかな幻/久保田早紀/1984
CHARMING/スターダスト・レビュー/1986
私の中の微風/岡村孝子/1986
ROOKIE TONITE/大江慎也/1987
JAPANESKA/THE BOOM/1990
INSOMNIA/鬼束ちひろ/2001
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