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それだけが救いである

中3男子、交際断られ女子生徒殺そうとした疑い

埼玉県警東入間署は17日、同級生の女子生徒を殺害しようとしたとして、同県富士見市に住む市立中学3年の少年(15)を殺人未遂容疑で逮捕した。/少年は数日前、女子生徒に交際を求めて断られたといい、「将来を悲観し、相手を殺して自分も死のうとした。刃物は15日に買った」と供述しているという。女子生徒にけがはなかった。/発表によると、少年は16日午前9時20分頃、通学する中学校舎内で、同じクラスの女子生徒(15)に果物ナイフ(刃渡り約9・7センチ)を向けて殺害しようとした疑い。/女子生徒は逃げ、少年は担任の男性教諭が取り押さえた。〈読売新聞2011.02.17〉

うーん。存在否定のように受け取ってしまったのだろうねえ。

こういう事件を起こす大人も男女を問わずけっこう報道されているから、中学生がこの無理心中の発想をもつこと自体にはそれほど驚きはしない。中学3年にもなればそのくらい考える生徒はいてあたりまえである。

また心理学者が豊かな少子化社会で育った子は「万能感」を去勢されていないとかなんとか言い出すのだろうが、また秋葉原の加藤智大とか持ち出して恋愛格差とか言い出す者もいるのだろうが、たった一人の男子生徒で全体を語る議論はもうやめて欲しい。一度ふられたくらいで将来を悲観するなよぉ……と笑い飛ばす人の方がまだ健全である。

それよりこの女子生徒は可愛そうだねえ。ナイフを向けられるなんてのは一生経験しない人のほうが多いわけで、相当なショックを受けているだろう。こういう一度ふられたくらいで将来を悲観するような子が殺すほど本気で好きになっちゃう女の子ってのは、たぶん恋愛慣れしているいわゆる「ピンク傾向」の子でもないだろうし。もしかしたら、まだ数日前にこの男子生徒をふったこと自体に罪意識を感じていた可能性さえある。今後まともな精神状態で恋愛問題に対応できるまで回復するかどうか。つまりこれから同じようなことがあったときに、ちゃんと断ることができる精神状態に戻れるかどうか。彼女の精神的な回復を心から祈っている。

おそらくまだ入試が終わっていない生徒が大半だろうから、そちらへの影響も大きいだろう。臨時の保護者説明会も開かねばなるまい。そもそもこの被害女子生徒の入試は終わっているのだろうか。終わっていないとしたら、まともに受験できるのだろうか。しばらく学校はてんやわんやになるはずだ。

さすがにこういう人情沙汰で学校の責任を問う声は上がらないだろうが、被害者も生徒なら加害者も生徒であるからには、双方の板挟みに担任は苦しむことになる。学校は被害者側につけるけれど、担任の心情はそう簡単ではない。

それにしてもこの男子生徒を取り押さえる力のある担任で良かったし、担任に取り押さえられる程度の男子生徒でほんとうに良かった。ナイフをもった中3男子を取り押さえるというのは命がけである。これが「女子生徒は逃げてけがはなかったが、取り押さえようとした担任が刺されて死亡」なんていうことになっていても、まったく不思議のない事件なのである。

まあ、この男子生徒がわざわざ学校でこの事件を起こしたことが救いではある。放課後の帰り道なら、女子生徒は確実に刺されている。そこまで頭がまわらなかったのか、無意識に止めて欲しいと思っていたのか、いずれにせよそれだけが救いである。

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