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通知表所見の10箇条

若い教師はもちろん、ベテラン教師にも意外と多いのが通知表所見を苦手にしている人。この時期になると、職員室に憂鬱そうな顔が並ぶ。なぜそんなにも苦手意識をもってしまうのか。いい文章を書こう?来学期に繋がるような文章を書こう? 要するに、考え過ぎなのである。

学期末、多くの担任教師を悩ませるのが通知表所見である。それも文章を書くことを苦手にしている人ほど、気の利いたフレーズや四文字熟語を使って、何かかっこよくまとめようとする傾向がある。そんな気の利いた文章が30も40も用意できるはずもなく、結局、締切寸前になって、「えいやっ!」と書くことになる。そんなことを毎年毎年繰り返している人が多い。

私は通知表所見に苦労したことがない。なぜなら、書き方の原則をもっているからだ。 例えば、次の二つの所見を読み比べてもらいたい。読者の皆さんは、どちらのほうがいい所見だと感じるだろうか。

【所見A】
体育大会のリレー、修学旅行における委員会での仕事ぶりなど、素晴らしい活躍が見られました。来学期は今学期以上の活躍を期待しています。

【所見B】
体育大会のリレーで両手を掲げながらテープを切り、みんなと抱き合う姿が印象的な1学期でした。2学期からは学級をまとめるような働きを期待しています。

ある国語教師の研究会で同じ質問をしたら、圧倒的にBが支持された。

私もそう思う。

Aは「体育大会」「修学旅行」と所見で取り上げた項目こそBよりも多いが、どんな活躍なのか、来学期に担任が何を期待しているのか、その具体が生徒にも保護者にもまったくわからない。

それに比べてBは、確かに所見項目こそ少ないが、体育大会での活躍の具体がわかり、担任の期待の内容もわかる。そして何より、保護者から見れば、我が子の姿が目に浮かぶ。「素晴らしい」とか「活躍した」とか書かなくても、「印象的でしたよ」と書かれているだけで、担任が我が子を肯定的に評価してくれていることが伝わってくる。保護者が求めているのは、哲学的なメッセージでもなければ、小難しい格言でもない。我が子が担任にどう思われているのか、どんなふうに担任が我が子を見ているのか、それだけである。しかも、決して理知的な分析を求めているわけではない。保護者に担任の温かいまなざしの在り方が伝わりさえすれば、それでいいのである。

通知表所見は、むしろ、保護者に「情」を喚起することがキモだとさえいえるのである。

最後に、通知表所見の書き方10箇条を掲げておく。この10箇条の詳細は拙著『中学生の通知表所見欄の記入文例集』(小学館MOOK)をご参照いただきたい。

第1条 記録として残ることを念頭に置くべし

第2条 1年間の見通しを持つべし

第3条 所見でしか書けないことを書くべし

第4条 担任の目を最大の武器にするべし

第5条 すべての生徒に平等に書くべし

第6条 あくまで本当のことを書くべし

第7条 「エピソード+評価言」を基本とすべし

第8条 100%褒め言葉で構成すべし

第9条 「課題」ではなく「期待」を書くべし

第10条 できれば自己評価をとるべし

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