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とかくこの世は住みにくい

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく職場は住みにくい。住みにくさが高じると、次の職場に越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、一方に心の病が生まれ、他方に民教が出来る。

住みにくい職場を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りちらほらするただの人である。ただの人が作った職場が住みにくいからとて、越す職場もあるまい。あれば人でなしの職場へ行くばかりだ。人でなしの職場はいまの職場よりなお住みにくかろう。

越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊い、とは漱石の言。

住みにくき世から、住みにくき煩いを引き抜いて、ありがたい世界をまのあたりに写すのが詩である、画である。あるいは音楽である、彫刻である。しかるに職場に詩も画も音楽も彫刻も存するに生徒の長閑ならず、心豊かならぬは何の道理か。理性を信じ自由意志を崇拝す、西洋に学びし英語教師に鬱の多きは何事か。親譲りの臆病で小供の時から損ばかりしている。小学校にいる時分学校で同級生の囃しに合い一週間ほど休んだ事がある。なぜそんな気後れしたかと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。いまなお別段の深い理由もなしに、休職の長いトンネルを抜けると、退職であった、腹の底が黒くなった、とメロスならずとも激怒したくなる世の中にあるのは何故か。とかくこの世は住みにくい。

お粗末様でした。

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