時間指定の原則
例えば、班ごとに班ポスターをつくらせる。
例えば、総合で職業体験の計画を立てさせる。
こんなとき、ある班はリーダーを中心にすぐにできてしまう、ある班は粗雑に仕上げてしまう、ある班は丁寧な女の子がリーダーであるためにずいぶんと時間がかかってしまう、こういうことがよくあります。まだ終わっていない班があるので、担任としてはこれで終わりとは言いにくい。どうしても丁寧に時間をかけて取り組むグループに合わせてしまうものです。
しかし、既に終わってしまった班はもうすることがありませんから、少しずつ遊び始めてしまいます。10分もたつと、教室は騒然とした状態になる、こんな経験はないでしょうか。
私は毎年、学級経営において、生活班と奉仕班とのクロス方式を採用しています。要するに、生活班(日常の座席を構成する班)と奉仕班(係活動の班)とを別々の組織にしているわけです。しかも、各生活班には必ず一人ずつすべての係が所属している、つまり、生活なら生活、文化なら文化という係がすべての生活班に必ず一人ずついて、その生活係がその班の生活点検に責任をもち、その文化係がその班の文化的取り組みの責任をもつという、一人一役を徹底するためのシステムです。職員室の「学年」と「校務分掌」との関係のような組織ですね。
さて、こうなりますと、組織が二重にありますから、班ポスターと係ポスターの両方をつくることになります。6つの班、6つの係があるとすると、12枚の班ポスターをつくることになるわけです。しかも、学級の生徒たち全員が生活班と奉仕班の二つの組織に所属することになりますから、生活班ポスターと奉仕班ポスターを同時につくることができません。
みなさんならこんなとき、どうするでしょうか。
一般的に多く見られるのは、生活班ポスターづくりに2時間、奉仕班ポスターに2時間といった、時間ごとに振り分ける方法です。しかし、これをやりますと、冒頭に述べたように各班に時間差ができてしまい、下手をすると、早い生徒たちは生活班ポスターを1時間で、奉仕班ポスターを1時間でつくってしまい、それぞれ残りの1時間ずつは遊びになってしまう……ということにもなりかねません。
こうした現象は、生徒に与えるポスターづくりの時間を授業1時間単位に設定してしまっていることに起因します。要するに、生徒たちに預けてしまう時間としては1時間という単位が長すぎるのです。
私ならこうします。
まず、生活班をつくる。生活班に20分という時間を与え、ポスターのデザインを20分で考えることを指示する。デザインが完成したら担任のチェックを受ける。しかも、質の高いものでないと合格を出さない。20分で完成しなかった場合には、放課後残って、今日中にデザインを完成させることと指示する。
20分経ったら、今度は奉仕班をつくる。やはり20分間でデザインを完成させることを指示する。同様に点検し、この日のうちにデザインを完成させることを指示する。
こうしますと、生徒たちはデザインづくりに専念する、かなり密度の濃い時間を過ごすことになります。遊ぶ生徒も出ません。また、この後、生活班ポスターづくりに1時間、奉仕班ポスターづくりに1時間を与え、完成しなかった場合には全員放課後に残って完成させること、と指示します。これもその日のうちにという制限をつけます。
小集団で何か作業をさせるというとき、学級担任には、このように「時間差をつけない」という確固とした意識が必要です。時間差が生まれることこそが学級を乱す一番の要因なのです。それを避けるためには、すべての活動に時間制限を設け、できるだけ時間差をつけずに進めていくことが必要なのです。
これを「時間指定の原則」といいます。
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