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書くこと・2

【2日目】

模擬授業16/山口淳一先生

子どもが書いたアブラムシの観察日記から絵を描いてみて、観察日記の文章の不完全さを実感させる。その後、この日記のもととなっているアブラムシの写真を見せて、観察日記の文章を精査させ実際に書かせてみる。しかも5文で書くという指定。

新指導要領の「言語活動の充実」、全教科を通して言語能力を伸張させようという理念に合致した提案である。しかもPISA型読解力に配慮された見事なプランである。更に、今後の発展性も高い。

山口先生と初めて会ったのはおそらく1998年のことである。言葉は悪いが、自信をもてない優男といった印象の若者だった。それが10年の時を隔て、「夏の陣」のストップモーションにしても「秋の陣」のこの授業にしても、安定感のある語りと指導事項のブレない提案性の高さとを両立している。最近の山口先生は百発百中の感がある。

「人は10年続ければ一流になる」とはよく言われることだが、はにかみながら一歩引いて語る、キャラクターを活かしたそんな独特の語りの在り方を確立した趣がある。それでいて、専門の理科を基盤としたネタづくりにもどんどん磨きがかかってきている。たいしたもんだと思う。

今回の授業提案には課題らしい課題もない。あとはこれを発展させて、観察記録の在り方の大単元化が待たれる。もしもそれが成し遂げられたとしたら、「総合的な学習の時間」や生活科・理科・社会の実践にかなり大きな貢献となるだろう。そういう段階に来ている。

模擬授業17/山寺潤先生

これまた見事の提案性をもった授業提案だった。作文指導の取材段階に絞り、「集材」「選材」の授業の在り方を示した授業。おそらく下位の子どもに大きく配慮して、だれもが意見文を書けるようにするにはどうしたらいいか、という発想でつくられた授業である。

提案課題を一点に絞ったこと、その効果的な手法を編み出したこと、よどみない授業展開の形としてパッケージ化したこと、どれをとっても提案性が高く、その手法は研究的である。

しかし、研究的であったからこそ、実は課題も見えやすい。

まず第一に、取材段階において小グループで集材ワークシートをまわし書きする際、書く側にとっての細かな配慮がなされていないという点である。「書けない子」を救うことに念頭を置いてつくっている授業であるため、「書ける子」「できる子」に対する配慮が希薄になっている。「落ちこぼれ」をなくす配慮はなされているが、「吹きこぼれ」をなくす配慮がなされていない。少なくともぼくの感覚ではこれを「全員参加子志向」として不十分である。ワークシートにもうひと工夫がほしいところだ。これが第一の課題である。

第二に、6人でまわし書きをしていくうえで、何巡目がどのように書きやすく何巡目がどのように書きにくいのかという細かな検討が施されていない。もしかしたら、山寺先生は実際にこの活動をしてみてはいないのかもしれない。第一の課題とも関連するが、書き方や時間配分の在り方について、一度体験してみると細かな課題がたくさんあることに気づかされるはずである。

ついでに言うと、前の記事の柳谷先生のところで述べた一斉授業で学ぶべき指導技術というのはこういうところに出る。教師が司会者となって話し合いをさせていると、できない子をどう使ってできる子をどう使うかとか、逆転現象をどう仕掛けるかとか、複数の立場が互いに譲り合わないときにどう捌くかとか、そういう課題の連続になる。6人でまわし書きするときに何が課題になるかということと、一斉授業で巻き起こるこうした細かな課題の連続とはまったく同質の問題として立ち現れてくるのである。

山寺先生は小さな学校で小さな学級を受け持って教師人生を歩んできた傾向がある。たぶんそういう経験に乏しいのだろうと思う。新しいことを提案する場合には、教材開発とともに、その教材をどのように機能させるかを考えなければならないので、この視点はどうしても必要になる。

第三に、今回の提案では「ダイアモンド・ランキング」を用いた「選材」の場面が雑だったということである。提案としては「集材」に絞るべきだったという考え方もあるし、「選材」までやるのであればもう少し「選材」の観点にまで配慮した提案をすべきだった。

山寺先生は非常に能力とセンスのあるいわゆる「できる人」であり、ぼくが今後最も期待している若手である。課題ばかり三つ書いたが、これも期待の表れと解釈して欲しい。また、こうした細かな具体的な課題が見えるということは、実はそれだけ山寺先生の授業がポイントを絞った研究的なものであったことをも意味している。ごちゃごちゃした授業からはこうしたピンポイント的な課題は出てこないものである。

また今後、できれば「発想・着想」「取材」「構成」「叙述」「推敲」「清書」という作文6段階のそれぞれについて、このレベルの提案をお願いしたいものである。山寺先生なら、2年もかければ完成させてしまうだろうと思う。そしてきっと一番苦労するのが第一段階の「発想・着想」、つまり「主題設定」のところになるはずだ。

模擬授業18/人見誠先生

わざわざこの会のために東京からおいていただいた。二つの投書例から主張を形づくる言語技術として具体例の重要性を指摘、それをもとに投書を書いてみようと授業。小学校の先生にはあまり馴染みがないかもしれないが、中学校・高校では投書は作文指導における一つの有効なツールとして認知されている。

特に、論理的思考の訓練として投書を読んでその論理の有効性や破綻を議論したり、それを書き直したり、或いは構成を意識して実際に書いてみたり、更には実際に投稿してみたりといった活動である。

人見先生の授業はこうした先行実践をよく踏まえた典型的な授業だった。ただし、25分という時間的制約のために、言語技術の抽出やテーマに沿った具体例の立案に時間をかけられなくて、指導の全体像を紹介することに終始してしまった感は否めない。

できれば、二つの投書例を提示するのであれば、どちらにもよいところがありどちらにも悪いところがある、そういう二つの投書を提示して小集団でそれをじっくりと指摘し合う。二つのよい点をミックスさせた文章を書くにはどうしたら良いのかについてもじっくりと検討していく、そうした授業像が望ましい。

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