今週の本/6月第2週
宿泊学習も終わり、研究会もない、割と本の読めた1週間だった。
「コンテキスト思考 論理を超える問題解決の技術」杉野幹人・内藤純/東洋経済新報社/2009.07
★★★
タイトルと帯の文言にずいぶんと期待して読んだのだが、期待はずれだった。いや、もちろん言っていることはよくわかるし、ぼくも同じような思考法で毎日を過ごしている。職場の若手にもよくこういうことを語って聞かせ、講演・講座でもよくこういうことを語る。しかし、行動の変容には至らない。要するに、頭でわかっても行動できないタイプの提案が並んでいるのである。ぼくの問題意識は、どうすればこの手の思考法ができるようになるのかというプログラムの方である。著者たちもそのことがよくわかっているようで、丁寧な物言いをしたり、これは難しいことなんだということを但し書きしたり……そういう情意表現が散見される。読む価値はあるとは思う。事例にもおもしろいものが少なくない。
「教育の職業的意義 若者、学校、社会をつなぐ」本田由紀/ちくま新書/2009.12
本田由紀の本はこれまでにも何冊も読んできた。優秀な社会学者であることはよくわかるのだが、驚くような深い洞察というのが見られない。一般的に、潜在的に浸透しているようなバランス感覚に言葉を与えているという程度に見える。彼女の想定している超えるべき論客が、いまだ左翼と極右しか念頭に置かれていないことが要因と思う。1990年代の議論という感じがしてしまう。加えて文体がどうしても好きになれない。よく整理されているはいるから、読む価値はある。
「中島みゆきの精神世界-あなたに問いかけるもの-」三好章人/たま出版/2005.10
これまで知らない著者だったが、民俗学や宗教学なんかをうまくミックスしながら、中島みゆきの歌を聴いて自身が想起した古今東西の物語を軽妙に語る……好感のもてるエッセイだった。ぼくが中島みゆきのほとんどの曲を聴いているということが大きいのだろうが、最初から最後まで一気に読めた。 決して一般にお勧めするような本ではないが、中島みゆきファンにはそれなりに楽しめる本ではある。
「アホの壁」筒井康隆/新潮新書/2010.02
率直に言って、筒井康隆も年をとったな…という印象。全編を通じてとにかく説教くさい。筒井康隆特有のユーモア溢れる文体は健在といえば健在なのだが、そこにも行間に説教くささがにじみ出る。昔のちょっと「トンでるな」という展開が演技に感じられる。物書きにこういうにおいが出てくると、そろそろ終焉を迎えつつあることを意味している。これまでにも多くの作家がたどってきた道である。ちょっと野坂昭如に似てきた感じがある。
「本番に強い人、弱い人」本田有明/PHP新書/2007.05
★★
今週、積ん読から一冊引き抜いて、 トイレで読んだ本。つまらないといえばつまらないし、あたりまえといえばあたりまえなのだが、心当たりのある事例ばかりでけっこう楽しめた。特にちょっと軽めのエピソードが豊富で、それなりに読み進める原動力にはなる。トイレで読んだりちょっとした休憩に読んだりというのに最適か。じっくりと腰を落ち着けて読む本ではない。
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