女医の殺人
先日録画しておいた火曜サスペンス劇場の再放送を見た。タイトルは「女医の殺人」。池上季実子主演。舞台は昭和初期。博士論文を書く夫のために開業して金銭をつくり、7年にわたって夫につくした妻が、籍も入れてもらえず、あげくに離縁され、夫の結婚話がもちあがるとともに、まんじゅうにチフス菌をかけて夫の家族に喰わせる。夫の弟が死に、夫・妹・両親、そして夫家族の知人にまで被害が及ぶ。ストーリーだけを追えば単純なのだが、池上季実子の迫真の演技に感嘆した。
ネットで調べてみると、1991年4月の放映だという。1991年といえば、池上季実子32歳である。見事なものである。
更にネットで調べてみると、この物語には原作がない。脚本家の創作であるらしい。もとになった史実があるのかどうか、ぼくは知らない。しかし、夫の優柔不断、妻のいらだちと弱さ、夫の両親の庶民性、どれもこれも見事に描かれていた。脚本家はあの映画『泥の河』の重森孝子である。そういえば、今回の池上季実子は、『泥の河』の加賀まりこの描き方と重なる部分があるし、夫の両親の描き方は田村高廣・藤田弓子と重なる。
火曜サスペンス劇場にこんな作品もあったのだなあ……と改めて感心した。映画にする価値もあったと思う。特に、ラストの二審判決がおりるときの池上季実子の表情には女の性が見事に凝縮されていた。夫の堤大二郎と妹の喜多嶋舞はそれなりでしかなかったが、夫の両親は藤木悠・佐々木すみ江という名脇役が固め、すばらしい演技だった。
2時間ミステリーを馬鹿にするべからず。こんな名作もあるのだ(笑)。
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コメント
私も見ていました。普段はあまりTVはみないのに何気なくがどんどん引き込まれていって。原作本を捜してここにたどり着き原作がないことを知りました。本当はどう思っていたの?という疑問が何点か残ってしまったので...。残念ですが諦めます。突然お邪魔してごめんなさい。
投稿: Haru | 2010年5月15日 (土) 15時08分
まさかこの記事にコメントが寄せられるなんて予想だにしていなかったので、正直言って、嬉しさとともに驚きました(笑)。ありがとうございました。あのドラマはテレビの2時間ドラマとしては、圧倒的に完成度の高いドラマでした。映画で見たかったな、と思いました。
投稿: 堀裕嗣 | 2010年5月16日 (日) 21時13分
はじめまして。私もかなり以前ですが、このドラマを見て引き付けられ,やはり原作を探しました。完成度の高さから有るものと思い込んでましたので…。結局原作はないようだがモデル事件はあったと分かりました。事件後が知りたくて調べたところ、澤地久枝『完本 昭和史のおんな』に詳細が記されてました。今月31日にスカパーで再放送される予定でしたが変更になったようで残念です。予約してたのに…。5月にも放送してたとは…。
投稿: パセリ | 2010年8月24日 (火) 00時47分