ぼくには最初から勝算があった
生徒の演劇を見に行くという妻を送って地下鉄駅へ。帰りに狭い道を通っていたら、ワゴン車とすれ違う。いつもなら二車線ある道が今日は大雪のせいでギリギリ一車線。すれ違えない。
相手のおじさんはぼくに戻れと言う。ぼくはおじさんが戻るべきだと思う。しばらくにらみ合いが続いたあと、業を煮やしたおじさんが車から降りてきた。
「おい、あんたの方が脇道に近いだろ!」
けっこう迫力のある怖いおじさんだったが、ぼくには勝算があった。だから言い返した。
「どう考えても、おっさんが戻るべきなんだよ!」
「なんだと!」
おじさんはつり上がった目で一歩前へ出た。
ぼくは冷静に言った。
「おじさんさあ、怒るのもいいけど、どう考えてもおじさんの負けなんだよ。ここ一方通行なんだから」
少し間がある。その間の中で、おじさんの目が一気に柔和になっていく。
「あら~、マジですか……そりゃすまん」
「いえいえ、ぼくの方が脇道に近いから下がりますよ。そこから曲がってください」
「ああ、ありがとうございます」
もう一度言う。ぼくには最初から勝算があった(笑)。
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