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相棒8「カナリアの娘」

「相棒SEASON8」第一話「カナリアの娘」を見ました。

脚本家は輿水泰弘。この脚本家のつくる話では、大がかりな事件が起こる割には、事件関係者の心象が深く描かれないことが多く、また、どんでん返しっぽいトリックもない、そういう印象を抱いていて、いま一つ期待感をもてずに見始めました。

しかし、今回は布石の打ち方もうまく、伏線があちらこちらに張り巡らされていて、なかなか完成度の高いドラマになっていたなあ、と感心しました。素人が「感心しました」などという言い方をするのは不遜なのかもしれません。「感心しました」が悪ければ「感動しました」と言い換えます。

ラストの落ちは、内山理名の演技力もあって、かなり説得力がありました。最後、右京に背を向けながら唇を噛む内山理名の長いカットはかなりのものでした。嫌われ松子のときも感じましたが、この女優の演技力はすごいです。目はもちろん、鼻にも、唇にも、頬にも、すべての表情に演技が行き届いています。喜怒哀楽の表情をアップで、しかも長いカットにもたえうる、そういう数少ない女優だと思います。顔の造形は十人並みなのに、ものすごい美人女優に思えてきます。こういうのを「女優」というのだなあ、と改めて思います。

留置場に一人、髪の毛から空を見つめる表情のアップへと移行する、古谷一行の数秒のカットにも、説得力がありました。メリーゴーラウンドに乗る母親と子役の存在感もなかなかのもので、このドラマの完成度を高めているのは、もちろん脚本だけでなく、カメラワークや俳優陣の力が大きいなあ……とも実感させられました。

そうそう。長いカット言えば、水谷豊と及川光博が警視庁に戻ってきた折、山西惇との長いやりとり、途中に特命係の部屋でコーヒーをいれている岸部一徳に焦点をあわせ、再び3人のやりとりへ、という非常に長いカットがありました。ちょっとユーモラスに描くシーンですが、こういう味のあるカメラワークにぼくは感動を覚えます。すごいシーンだなあ、と感じました。

映像では、長いカットは要所に織り込むと計り知れない効果が生まれることがあります。もちろん監督は意図的にやっているのでしょうが、かつて「あぶない刑事」で打ち合わせをしているシーンでものすごいロングがあって感動を覚えたことがありました。また、映画「それから」で松田優作と藤谷美和子のとてつもないロングカットにも感動を覚えましたし、最近では、行定勲監督がずいぶんと長いカットを効果的に使っています。特に、「それから」のロングは素晴らしかった。借りてきたVHSを何度も繰り返し見て、感動に浸ったのを覚えています。

脚本家と監督との関係も、俳優陣と監督との関係も、文学で言えば「物語」と「語り手」の関係に近いものがあるわけで、文学も映像ドラマも、読者や視聴者に可能な限り意識させずに物語性を鮮明に意識づけることが求められるわけで、その点で、今回の「カナリアの娘」は何度でも見て、演出やモンタージュの技法について、いろいろな意図を発見してみたいという衝動に駆られました。まあ、そんな時間はないので、思い切ってハードディスクの録画を削除しましたが……。メディアリテラシーの授業に使うには長すぎますし。

それにしても、文学的な形象性を見事に具現化した作品でした。

次回は太田愛さんの脚本のようです。たぶん「相棒シリーズ」ははじめてじゃないでしょうか。人間同士のあまいタイプの「絆」を描く脚本家なので、「相棒」には向いているのかもしれないなあとも思います。

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