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班組織は一人一役を基本とする

私は昨日、班づくりと係組織づくりとは、別々に組織されることもあれば一致させて組織されることもある、と述べました。私は中学校においては両者を一致させるのではなく、別々に組織した方がいいと考えています。

両者を別々に組織することには、次の3つの利点があります。

(1)一人一役を機能させることができる

「一人一役」を徹底させることは、生徒達に将来の社会生活に対する心構えを抱かせるうえで大変重要な教育活動です。大衆消費が社会の末端まで浸透し、生徒達も消費主体として生きている現代社会においては、ともすると生徒達までが労働には経済効率的な観点が必要であると考えている場合が多いという現実あります。つまり、「働く以上は何か利益がもたらせれて当然である」という発想です。社会をスムーズに機能させるためにこの意識を打開し、協調・協働・共創といった「チームによる達成感」を若いうちに味わわせる機会は、現在、学校しかないというのが現実ではないでしょうか。

例えば、平成20年度の私の学級の場合、各班は総務係・生活係・文化係・環境係・学習係2名の計6人で構成しました(後に詳述)。男女比は半々です。学年4学級だったのですが、すべての学級でこの構成をとり、1年間この構成を崩しませんでした。旅行的行事では各係が係の仕事については班員に対して責任をもつことになり、班員に傍観者が出ない構成にすることができます。

(2) 二つの組織に所属し二重に動く場を保障できる

日常の学校生活を送る班は、安心して楽しく過ごすことを第一目的としています。いっしょに授業を受けたり、学校行事や学級のイベントに班単位で動くことによって、協力性や協調性を学ぶということが第一義です。しかし、係活動は日常生活を送る班とはまったく趣を異にしています。係活動は学級全体がより向上するために、生徒会組織との連動がよりスムーズに行われるように、本来、そうした巨視的な視点で運営されるべきものです。班と係を別々に組織することは、すべての生徒にこうした二つの視点をもつ機会を与えます。生活の場と学級向上に資する場とを同時にもち、常に二つの視点で動くことになるわけです。これはちょうど、私たち教師が「所属学年」と「校務分掌各部」との双方に所属しながら仕事をしているのと同じ構造です。どちらも蔑ろにするわけにはいかず、それでいて両者のバランスを常に考えなくてはならない、そうした視座です。

小学校では班組織と係組織とを一致させる実践が多いようです。これまで担当してきた生徒達に訊いてみると、どちらかというと「一致していた」と応える生徒が多いように思います。それなら尚更、中学校ではもう一段高い次元の組織づくりをおこなって、生徒達に「小学校とは違うんだよ」という自覚を促すうえでも、班組織と係組織とは別々に組織することがよいように思えます。

(3)一人一人の責任感の醸成に培う

読者のみなさんはプリントをどのように配付しているでしょうか。自分が一列ずつまわり、一番前の生徒にその列の人数分を渡してまわしてもらう、というのが一般的でしょう。しかし、わたしは生徒に取りに来させることにしています。中学校では、一度に5~8種類のプリントを配付しなければならないことが多く、そのすべてを担任が配付していたのでは時間がかかってしまうからです。この場合、私は班単位で配ることにしています。例えば、学習関係のプリントを配付する場合には教卓に学習係を呼び、保健便りなら環境係を呼んで班員に配付させるというように、日常生活でも一人一役を徹底的に意識させて運営していきます。

生徒達はこの班に自分しかその係がいないとわかつていますから、当然のようにそれを自分の責任だと思うようになります。それが自分の班への貢献であるとも意識するようになります。もちろん小さな小さな貢献に過ぎないのですが、それでもこうした小さな責任感を毎日持ち続けることが、実はいざというときの大きな責任感の醸成へとつながるのです。

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