政治への関心
年齢を重ねると、少しずつ政治に関心が向くようになる。それは自らの仕事や生活が政治とつながっているということが、少しずつ実感されてくるからだ。世界観が自分の周りだけで構成されている子供にとって、或いは学生生活と恋愛だけが世界観の中心となっている青年にとって、政治とのつながりが実感されないことは仕方のないことである。
ぼくは若い頃から、なんとなく新聞を読み、時の政治に関心をもっていた。中学生の頃は中学生なりに、高校生の頃は高校生なりに、大学生の頃は大学生になりに、そして学校現場に出てからは常に、時の政府が何をしようとしているのか、そしていま、どのような権力闘争がおこなわれていて、次の政局はどういう選択肢が想定されているのか、そんなことに漠然と興味を抱き続けてきた。
先日、同僚とそんなことを話していて、なぜ、自分がそんなことを考え始めたのだろうかと記憶をたどってみた。なかなか思い浮かばなかったが、ふとそのきっかけを想い出した。1978年に阿部敏郎という歌手がヒットさせた「あせるぜ」という曲だ。コミックソングなのだが、ぼくには衝撃的だった。
いや、最初はただおもしろいと思って聴いていただけなのだが、そこに出てくる「佐藤さんちのお坊ちゃん」「田中さんちのお坊ちゃん」「三木さんちのお坊ちゃん」「福田さんちのお坊ちゃん」「大平さんちのおぼっちゃん」が、歴代の総理の名だとわかったとき、しかも、この馬鹿げたレコードを買って、親父に歌詞を見せたときの親父のひと言が衝撃だったのである。
「ほう…5番の歌詞が大平さんになっているところがミソだな」
親父はただにやにやしていただけだったが、小学校5年生だった当時のぼくにはまったく理解できなかった。
そこで、次の日、そのレコードを学校に持って行って、担任の高橋先生に見せた。当時は20代の先生である。
「なんで5番が大平さんちのお坊ちゃんであるところがミソなんですか」
「ああ、それはね。まだ、大平さんは総理大臣になってないからだよ。でも、次の総理は間違いなく大平さんなんだ。」
ぼくには衝撃だった。
「次の総理大臣が決まってる?」
ぼくが政治に、というよりも政局に、少しだけ関心をもち始めたのは、きっとこの経験が最初だな、と思う。
では、阿部敏郎の「あせるぜ」を知らず、しかもちょっとだけその曲に興味をもったという方は、阿部敏郎の「あせるぜ」をお聴きください。ちなみにこの曲は当時、吉幾三の「俺は絶対プレスリー」、平野雅昭の「演歌チャンチャカチャン」と同時期にヒットして、三大コミックソングなんて言われていた曲です。
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