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ネガティヴな感情を共有すること

明日は、吹奏楽部の全道大会。今日の放課後、吹奏楽部の生徒たちは緊張した面持ちで楽器をトラックに積み込んでいた。勤務校の吹奏楽部は昨年度、全国大会で銀賞を受賞している。

3年生の女子生徒に声をかけると、既に緊張で目がうつろ。本番は明日だというのに。

「おいおい、ずいぶん緊張してるな。」と私。

「はい。もうダメです。死にそうです。」と生徒。

「まだ前日だってのに…。本番、そんなんじゃどうしようもねえだろう。」

「ええ。でも、演奏が始まったら大丈夫だと思うんですけどねえ…。」

「去年はどうだったのよ。」

「去年は全然緊張しなかったんですよ。先輩がいましたから。」

「うん。なるほど。そういうもんだよな。でも、ということは、おまえたちが緊張した顔してたら、後輩も緊張しちゃうってことだろ?」

「はい。そうですね。」

「同じ論理で、おまえがそれだけ緊張してるってことは、部長はもっと緊張してるってことだ。顧問の○○先生だって、もっともっと緊張してるかもしれないぞ。ミーティングで、今日のうちに『緊張してる…』って言い合った方がいいかもな。自分だけじゃないって思えたら、パワーも生まれるかもしれない。」

「はい。」

「生半可な練習してきたわけじゃないんだから、それくらいのことはみんなで伝え合えるだろ。そういうネガティヴな感情を共有することも大事だぞ。」

そう言って、私は廊下を譲った。

「はい」と返事をしながら楽器を運ぶその生徒の背中は、なんとも心許なかった。

先輩がいると緊張しない。自分が緊張した面持ちでいると、後輩に悪影響を与える。そんなことを学ぶのは、中学3年生にとっては初めての経験である。しかし、そんな経験が、高校に進学した際に、1年生から先輩の背中の意味を解釈できるようにさせるのだ。成長とはそういった一つ一つの積み重ねのなせるわざである。

そんなことを考えながら、彼女の背中を見送った。

はてさて、どうなることやら……。いずれにしても、後悔のない演奏をして欲しいものである。

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