授業づくりネットワーク2009in函館
みなさま、あけましておめでとうございます。
と言っても、正月も既に9日。1/3が過ぎようとしています。冬休みは年末が「授業づくりネットワーク2009in函館」で依頼されていた「いじめ指導」「教師に必要な授業力」という2本の講座の準備、年明けからは今年4回目を迎える「研究集団ことのは」冬合宿のための「オツベルと象」(宮澤賢治)の教材研究に明け暮れました。どちらもまずまずの出来映えで、それなりの満足感を感じている……といったところ。
今日は、「オツベルと象」の教材研究がまとまり、やっと更新の時間がとれました。
さて、私にとって冬休み恒例の行事となっている「授業づくりネットワーク」の冬の北海道大会。今年も2本の講座と1本のシンポジウムに参加するため、函館まで行ってきました。八巻さん、あべたかさん、赤坂さんなどなど、全国に名だたる実践家とともに、5日から7日まで二泊三日の日程。今年はもう十年近い付き合いになる山寺・藤原という函館の若手が事務局を担うということで、ぼくもいつもより気合いを入れて準備をしていきました。
ここで、ちょっと振り返ってみようと思います。
まず年末の準備から。今年から、すべての研究会提案をパワーポイントでつくることにしました。プリントをつくるよりも時間がかかりますが、配付資料を3~5枚程度印刷するだけなので、印刷の手間がずいぶんと軽減されます。また、研究会に参加していただく方々には申し訳ないけれど、使い回しができるという利点もあります。似たようなテーマで講座依頼をいただくことが多いですから。今回は「スクール・カースト」と「HOWからWHYへの転換」という、ここ2年ほど様々な場で語り続けてきたことを、それぞれプレゼンとしてまとめることができました。まずまず参加者にも伝えられたのではないかと自負しています。まあ、読者の皆さんにも、近いうちにお伝えする機会があるだろうと思います。なんせ函館ネットワークには札幌からの一般参加者が二人。客層はほとんど重なりませんから。ちょっとにんまりです。
5日。月曜日。函館への移動日。まず、11時に地下鉄白石駅で森くんを拾い、南郷通を通って道央道へ。高速に乗ると同時に、12月20日(土)の「第2回中学校・学級経営セミナー」のアンケート分析を始める。一講座ずつ、一人ずつ、森くんがアンケート内容を音読。それを回答者の勤続年数や教科なんかを参考にしながら、どういう意味なのか、どの提案をどのように受け止めた結果としてこの感想が出てきたのか、なんてことを議論していく。アンケートが22枚あったので、だいたい1講座につき45分程度かかる。すべてのアンケート分析が終わったのは、ちょうど函館に着いた頃。道中二人ともまったく退屈しなかった。
ホテルにチェックインして一眠り。実は昨夜は徹夜だったので、仮眠が必要だった。18時半に山寺くんに起こされて懇親会へ。刺身やホタテ焼き、寄せ鍋などつつきながら、日本一のいじられキャラ教師赤坂真二をいじり続ける。それとともに、「授業づくりネットワーク」という団体自体を赤坂氏といっしょにいじり続け、「法則化」をいじり「教育界全般」をいじって、最後には教育の本質論へ、という流れ。詳しく書くと何のことかわかってしまって顰蹙を買うので書かないが、なかなかいい時間を過ごせた。21時半にホテルに戻り、森くんにプレゼンを見せながら講座の最終確認。24時には床に就いた。
6日。火曜日。5時起床。風呂。麻雀ゲーム。朝食。大会一日目。最初は「いま必要な教師の力」というシンポジウムに登壇。八巻・赤坂・阿部・森・北嶋・石川、そしてぼく。司会は山寺くん。「いま必要な教師の力」を3つのポイントにしぼって4分間で提案せよ、とのこと。ぼくは「さぼる力」「ながされる力」「いじりいじられる力」と提案。「さぼる力」とは自分の時間を大切にしてこそ仕事の効率化が図られていくという趣旨。「ながされる力」とはソフトランディングのすすめ。どんな職場にも、歴史がある。悪いところも含めて、様々な力学がからみあっていまがある。それを急激に変革しようとすると、至る所にひずみが起こる。常に改革はソフトランディングを旨とするべし。こんな趣旨。「いじりいじられる力」とはチーム力の発揮のすすめ。仕事を機能させていこうとすれば、笑いのある職員室であることが何より尊い、という趣旨。
1時間ほどの空き時間があったので、講座のPCを準備。プロジェクタを用意したり、スピーカーをつなげたり、ついでに学校祭や合唱コンクールのビデオを見たり。午後の講座は「いじめを生まない学年経営・学級経営」。基本的に「いじめを生まない学年経営・学級経営」などありえない、という趣旨。できることは、どれだけ日常の生徒指導の中に抑止力を張り巡らせられるかということである。「いじめ」のメカニズムを説明したあと、「事実重視の生徒指導」「FMCチームワーク指導の徹底」「学校行事による空気の更新」という3点を対策として話した。
その後は、とりあえずこの日は無罪放免。森くんの講座をのぞいたり、赤坂氏の講座をのぞいたり。どれも楽しそうに進めていた。まずかったのは最後のシンポジウム。A級戦犯は石川晋。A級戦犯といってもB級もC級も存在しない。要するに石川晋の独り相撲である。学級共同体の構築に話が及んだ折、「共同体」概念のディテールにこだわり続け、会場を「いや~な感じ」にしてしまった。まあ、イベントではよくあることではあるが、あそこまでこだわる必要性がだれにもわからなかった。おそらく本人にも明確ではないはずだ。ただ、石川晋の言っていたことは間違っていたわけではない。「共同体意識」というのは、ぼくに言わせれば、けんかをしても仲違いをしても論争をしても、結局は「話せばわかる」という意識を前提として営まれていた、かつての共同幻想である。それを現在の子どもたちに学級経営で身につけさせようというのは無理がある。断絶を前提に話し合いで調整していく、思想としてもスキルとしても、いまそれが求められている。しかし、あの場では、そこまで厳密な意味で「共同体」という言葉が用いられていたのではなかった。こだわることはシンポジストにとっても参加者にとっても生産的でなかった。
19時から懇親会。森くん、佳太くん、岡山さん、太田くん、八巻さん、加藤恭子と談笑。各人のスピーチがたいへんおもしろかった。さすがに長い付き合いなので、ほとんど気を遣う必要がない。しかも、だれに何がウケるのかというツボを心得てのスピーチが続く。こんな飲み会なら毎日でもいい。二次会にいこうかどうか迷ったが、体調がおもわしくないので、ホテルに戻ることにした。そうそう。行き帰りのバスでは、ミナちゃんに手相を見てもらう。しばらく調子が良さそうとのこと。それはそれは、よかったよかった。ホテルで1時間ほどお笑い番組を見て、23時に床に就く。
7日。水曜日。7時起床。シャワー。朝食。チェックアウト。大会二日目。朝イチから「教師に必要な授業力」という講座。100人以上の参加者に語りかける全体講座である。戦後教育のおおまかな歴史(とは言っても、現在の教育状況に直接的に影響を与えているものだけに徹底的にしぼった)を振り返りながら、現在の教育状況、教師の傾向に足りないものについて、「HOWからWHYへの転換」をキーワードに話す。どの程度伝わったのかは心許ないのだが、まあ、ああいう形の講座ではあれが精一杯である。その後、石川晋と30分の対話型セッション。お互いによく知っている仲なので、話ははずむ。参加者もそれなりに楽しんでいるようには見えた。しかし、企画として、同じ時間をQ&Aとして使った場合と比べてその機能度はどうだっただろうか。特に、この対話ではある程度具体的な話が出たので、その方法論をもう少し突っ込んで聴いてみたいという参加者はいたのではないか。そんな気がする。
1時間ほど、森くんと太田くんが講座をやっている部屋の廊下で、石川晋や加藤恭子とおしゃべり。今後のネットワークの展開などについて。森くんの講座が終わったところで、事務局に挨拶をして帰路に就く。帰りの話題は児童・生徒の変容について。学力や特別活動への取り組み、親子関係の変容、暴力や性の問題に至るまで、とてもここには書けないような内容について話し合う。19時帰宅。
さて、今回のネットワークは、いろいろ思うところがあった。一つは、自分の講演・講座にパワーポイントがどの程度有効に機能するかを試す意味。一つは、「スクール・カースト」や「理論と実践の関係」といった理念的なことが、自分の講座でどの程度伝えられるかを試す意味。一つは、40歳も過ぎたので、研究会参加のときにも睡眠をじっくりとってみて、帰宅後どの程度の疲れが残るのかを試す意味。一つは、これまでかかわってきた若手たちがどの程度の運営ができるのかを見極める意味。以上の4点を意識して臨んだ大会だった。どれもまずまず及第点といったところである。
一つだけ言いたいことは、山寺・藤原は自立したので、もう手を貸す必要はなくなったな、と実感したことである。自分のかかわってきた若手の中で、ここまで具体的な動きを組織した者が出たのは初めてである。しかもまずまずの大会運営で、特に文句らしい文句もない。それは「自立」と言っていい。しかし、その「自立」の意味を彼らはわかっているだろうか。彼らも読んでいるだろうから、ここに書くことにするが、それは彼らのイベントに私が力を貸さなくなるということを意味する。山寺・藤原へ。今回が最初で最後だったのだよ。だって、「自立」したんだもの……。これで来年からは冬休みの前半があく。
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